ロボットには「柔術」は効かない、という話。

 ボストンダイナミクス社は最新のヒト型ロボットの膝関節を前後のどちらにも自在に屈曲するように仕上げてきた。
 この発想は合理的なものなので、おそらくあと1年もすれば、手指の全関節も、どちらの方向にも自在に屈曲するような、ヒト型ロボットができると思う。

 たとえば、すっかり人間と見分けがつかないくらいに外装を調えた未来のヒト型ロボットが、地面に置かれていた純金の茶碗を掴み上げたとする。近くでチャンスを窺っていた不法移民の常習犯罪者が、その手首を上から掴んで、お宝をひったくろうとする。だが、それは、誘いの罠であった。ロボットの五指が瞬時に反り返り、いままで「掌」だと思っていた面はたちまち手の「甲」と変わる。ロボット警察官だったのだ。犯罪者の手首は、今やガッチリとグリップされてしまった。ロボットの手がそのまま、手錠なのだ。

 従来のSF作家はどういうわけか発想が貧困で、ヒト型ロボットの関節は、生身の人間と同じように不自由な制約があるものと、勝手に決め付けていた。そんな制約が、未来にあるわけがないのである。

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 Jen Judson 記者による2024-4-18記事「True Velocity sues Sig Sauer, alleging stolen trade secrets」。
   「トゥルー・ヴェロシティ」社と、その姉妹会社「ローン・スター・フューチャー・ウェポンズ」社は、「Sig Sauer」社が企業秘密を盗んだとして民事訴訟を起こした。

 原告企業と被告企業は、米陸軍の「NGSW(ネクスト・ジェネレーション・スクォッド・ウェポン)」……ようするに次期採用の分隊軽機をめぐってライバル関係にある。米陸軍はこの契約に45億ドルも出すはずだ。

 コンペティションは2022-4に、「Sig Sauer」社(米国内に拠点を置いている)が勝利して決着している。この最初の製品が先月、第101空挺師団の駐屯地があるフォート・キャンベルに届けられたところだ。

 4月9日に訴えが起されたヴァーモント州の州最高裁判所の記録によれば、ザウエルは原告の企業秘密を不正に利用したのだという。

 ローンスター社は、NGSWの開発者ではない。ものすごい時間をかけて開発したのは、ジェネラル・ダイナミクス・オードナンス&テクニカル・システムズ社だが、その知財のいっさいを2021年に買い取ったのだ。

 これにはLWMMGの話からしなくてはならない。アフガンでタリバンのPKMと射ち合いになったとき、特にこっちが低い土地を歩いていて敵が丘の上にいたときは、距離800mで米軍のM240小隊軽機の7.62ミリ弾は当たらなくなってしまう。
 そこで2010年頃に、.338ノルマ・マグナム弾をベルト連射できる「LMMG」がGD内で開発されたのだった。すごい発明品だった。全重がM240と同じなのに、M240の水平有効射程1100mより600mも有効射程が伸びる。

 2021年4月に、LMMGとNGSWのテクニカル・データ・パッケージは、GD社からローンスター社へ売られた。そのローンスター社を2021-11に企業買収したのが、トゥルー・ヴェロシティ社なのである。

 LMMGの方は先行して米軍によってもう使われ始めている。

 訴えによれば、このLMMGのキモは、革命的な反動緩和機構にあるという。名づけて「ショート・リコイル・インパルス・アベレージング(SRIA)」。
 業界の100年以上の常識。もし、機関銃の反動を緩和しようとすれば、その機関銃は、重くなる。または、レシーバーの寸法が長くなってしまう。ところがGD社の開発陣は、寸法も重量も増やすことなく、反動を抑えることに成功した。だから革命というわけ。

 とうぜん、この技術はGD-OTS社にとっては守る価値ある秘密であるから、部外に漏れないように、厳重に関係データを秘匿保管していた。

 訴状によれば、「Sig Sauer」社は、GDの開発チームの中から3人の中核技師をヘッドハンティングすることによって、この設計データを手に入れたのだという。それは2013年のことであったと。

 なかでも重要だった移籍者は David Steimke氏で、この技師がGD社内で19年間、ベルト給弾式機関銃の軽量化研究をしていたという。彼は今、Sig社のチーフ・エンジニア。

 Sigは、たった18ヵ月にして、まったく独自に、軽量低反動の機関銃を開発したのだと、Steimke氏は弁駁している。しかしそれはGD-OTSが10年以上の粒粒辛苦の末に道を啓いた技術である。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-18記事「Rafael’s NLOS missile successfully tested in the South China Sea」。
    このほどフィリピン海軍は、その小型艇から、イスラエル製のNLOSスパイクミサイルを発射するテストに成功した。

 フィリピン海軍は、8隻の「Shelagh MK5」高速警備艇を、イスラエルに発注している。総額1億2800万ドルほどと見られる。その警備艇に、スパイク・ミサイルもつけようというのだ。

 このたびのデモンストレーションは、バターン半島沖で行われた。

 ミサイルのメーカーであるラファエル社は、「タイフーンMLS」という、視程外射程の艦対艦ミサイルも、比軍に納入する予定。これらミサイルの追加コストは8000万ドルではないかという。

 レンジが25kmもある「NLOSスパイク」は、1発の重さが70kg。タンデム弾頭の対戦車ミサイルなので、たいていの敵軍艦の外鈑は貫徹する。それを、70トンの警備艇に載せようというわけ。

 警備艇のエンジンはキャタピラー社製のC32というディーゼル。1600馬力×2基。これでハミルトンジェット社製のウォータージェットを駆動させ、45ノットまで出せる。

 ※フィリピンに対してはインドも、国産の軍用ヘリを売り込もうと運動中だ。武器弾薬の買い手としてのフィリピンの存在感が上昇している。「人口ボーナス」を考えたなら、これはなんら不思議な現象ではない。いつまでも中国にやられっ放しの弱国ではいないだろう。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-17記事「Iranian delegation examined the S-400 production in Yekaterinburg」。
   『ワシントンポスト』紙の報道によると、ロシアは3月に17人のイラン代表団を招待し、「S-400」の工場を視察させた。
 場所はエカテリンブルグ。

 ※モスクワから東へ1300kmくらいも行ったところの、ウラル山地にある。しかし「シャヘド136」は弾頭を軽くすると2500kmも飛ぶというから、ウクライナから無人機で空襲できない距離ではない。

 ※イスラエルの発電所はすべて火力で、天然ガスが4割弱、石炭が4割弱。それを、軽油発電で20%弱、補っている。この軽油発電は、分散的な非常時のバックアップなのかと思ったら、レッキとした専用発電設備になっており、ボイラーではなくタービンを回す発電だ。軍艦のガスタービンの転用? また、3%弱だが、火発で重油も燃やしている。これも想像するに、石炭ボイラーや天然ガスのボイラーで、臨時に混焼させられるようにしているのか? そして注目するべきこと。ハマスもイランも、これら発電所を破壊することは、できていない。発電所は大きな施設だけでも12箇所もあるのに。その秘訣は何?