東アジア共同体とは何の冗談だ?

 雑誌『中央公論』05年1月号に片山主計官の防衛庁+自衛隊への反論が載っているのを皆さんはお読みになったでしょうか。
 サイト上の記録を兼ねてご紹介すれば、こんな感じです(表現には兵頭の私見が混じっておりますから以下文責は兵頭にあります)。
 03-12にBMD導入をきめたときに、三自衛隊は他の装備を削減すると防衛庁が約束した。が、制服は納得していない。特に陸自。
 04-11に財務省は試算を発表。こんご10年で国債費以外の全経費を毎年2.9%づづ少なくして2/3にまで落とすか、さもなくば消費税を21%にしないと、プライマリーバランスは黒字にならないと。現実にはこの組み合わせ折衷を探る。
 防衛大綱は、哲学および、10年後の武器人員ストック水準を定める。これに対して中期防は5ヵ年のフロー。この二段構えが必要なのは、装備は「後年度負担」で発注〜調達していくから。
 ドイツでは陸海空の縦割りをなくして目的別に部隊を再編しているぞ。
 RMAで情報強化すれば兵力は減らせる筈だ。首都圏に中央即応集団(自衛隊の機動隊)を置くのもその方向性だ。
 陸自は、司令部・方面・後方支援だけで5万人もいる。ほとんど行政要員であり戦闘力になっていない。他の公務員なみに合理化せよ。(※兵頭が言い直すと、5コ方面隊を廃止して1コ総隊にしちまえということ。その結果、4つの方面司令部の高級幹部がポストを失うから、陸自としては全く取り合わぬわけ。)
 陸自は、全国124箇所の重要施設に北鮮から2500人のゲリラが上陸してくる、それに対処するには16万2000人要る、とまことに二流官庁らしく説得力に乏しい反論で削減に抵抗した。もっと頭の良い反論はできんのか。
 現場レベルでの統合がまるで進んでいない。代表が輸送ヘリ。なぜ英軍のように陸海空で同じものを使えないのか。
 財務省は駐屯地名を挙げて削減を促したことはない。それは陸自側が関係自治体首長に財務省へ陳情攻勢をかけさせるための反撃宣伝リーク。
 軍事力だけが抑止力ではない。何より外交力が大きい。日米安保とともに「東アジア共同体の確率[ママ]をも進めていくという両にらみのアプローチしか選択肢はないであろう」(このかぎカッコ内は片山氏の文章)。
 以下、兵頭のコメント。「1コ総隊」化には諸手を挙げて賛成です。しかし予備・後備まで含めた日本国の総兵力は大国として絶対的に不足しているのです。要は「新大綱」が自由貿易大国としてのビジョンを示し切れていません。
 片岡鉄哉さんは今度の新大綱は事実上の改憲を予期したものであるとして評価されているようです。
 たしかに次の中期防ではC-130に味方ヘリに対する空中給油の能力を付加するらしい。これはとりあえず極東有事の際のコンバット・レスキューを北鮮領内にまで及ぼす措置ですね。日本海側の空自基地の救難用UH-60はすでにロウ・ヴィジブル塗装に変えたようであります。頼もしい。
 しかし日本版のストライク・パッケージはあと10年くらいたたないと完成しないのです。今からレーダー・ジャマーの開発をするという呑気な話ですからね。ということはまだ10年間は米軍様が頼りだ。情けない話ですがね。
 問題は10年後です。米軍が中東にもっと注力するためには、極東は日本に軍事的に仕切らせなければならない。これは1922年のワシントン海軍条約の精神の再現でしょう。しかし当時と今の大きな違いは、シナが水爆を持っているのに日本は非核。これでは地域のバランサーにも抑止力にもなれるわけがないということです。
 つまり今度の新大綱を10年以内のある時点で改廃して、新たに日本の核武装が盛り込めるかどうかが分かれ目になります。それには「東アジア共同体」などという寝言を止めぬ高級官僚たちを今から5年以内にパージしてしまわなければ間に合いますまい。