老け顔の甲子園

 『半七捕物帖』の半七は、たしか20歳くらいです。それで「親分」。
 いまの20歳では、考えられないが、幕末~明治は、それがあり得たのです。
 しかしこれをいくら言葉で説明しても現代人は納得してくれない。
 それなら、この前の夏の甲子園の決勝戦を思い出してみましょう。高校生なのに、オヤッサンみたいな面構えが映ってたでしょ?
 あれが、幕末~明治の普通の若い者の顔だったのです。
 15歳くらいまでは、さすがに子供っぽかった。しかし16歳から20歳にかけて、急速に老成した。社会の第一線を引き受けてやろうという一人前の男の顔になったわけです。
 あの顔を見れば、今の日本のスポーツのうち、野球だけが「産業」なのだなと見当がつきます。
 十分に産業として裾野が拡がっているから、その第一線で一人前になるまでの過程で、重い責任感も摺り込まれるので、顔の老成を伴うのでしょう。
 サッカーその他は、まだぜんぜん「産業」となってないのでしょう。「趣味」でしょう。「興行」段階であるボクシングも、なかなかああいう顔は生みますまい。
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 本日配信、今月の「読書余論」のラインナップです。
◎山本七平・加瀬英明『イスラムの読み方』平17(原・昭54)
◎G・ケナン『アメリカ外交50年』1986、原1951
◎櫻洋一郎『笹川良一の見た 巣鴨の表情』S24
◎森永清『大日本戸山流居合道』昭57
◎ジョミニ『七年戦役論』M23、上中下巻
◎フヲン・デルゴルツ『軍国新論、一名国民是兵』M20
──他。