どこに日本政府のイニシアチブがあるのか?

 旧海軍は、片舷で合戦中には、その反対舷の見張りを特にぬかるな、と若い士官を教育していました。北鮮に世界の注目があつまっているとき、ぜんぜん別な場所で起こされる連動的な法秩序破壊行為を、わたしたちは警戒し続ける必要があります。
 アフガニスタンとイランでは、反米勢力がますます元気付くでしょう。ビン・ラディンはまだ逃亡中です。
 安倍政権は深刻な無能を露呈しつつありますが、前小泉政権から「国内宣伝のノウハウ」だけはうけついでいますので、違った困った問題がこれから日本国内で生ずるでしょう。
 すなわち「政権の無能隠し」に全精力が注入されてしまい、裏では周辺事態がどんどん悪くなり、日本の真の安全保障レベルが下がり続けるという不幸な情勢です。
 対北鮮の新たな経済制裁が発表されました。しかし考えてみてください。これは“核実験”のあとでは、首相が安倍氏でなくったって、公明党の誰彼であろうと、こうする他はなかったものでしょう。しかも北鮮は、このレベルの制裁は当然予期していたのです。
 つまり日本政府が“実験”から2日経って「演出」していることは、大昔から相変わらずの「受け身」の政策でしかないのです。
 昔、くるまメーカーが、オールドモデルのドンガラだけをデザイン変更して新開発製品のように見せて、宣伝力に任せて売っていた、あれと同じだ。
 それをチームセコウが、いかにも重大な決定をしたような報道演出にしあげていますが、そもそも北鮮制裁は、最初の日本人拉致が知られた時点でなされて当然のものでしょう。いまさら何の手柄でもありません。
 新内閣は、アメリカから要求されてきた、対北鮮の資金流出を金融機構のしめあげによって遮断する決意があるのかないのか。それすらもないのなら、この危機の時節においては、安倍内閣はほとんど無能者の集まりです。
 北鮮のフィズル実験は、「こうすれば失敗する」という知見を実験チームに与えました。それはイコール「こうしなければ成功に近づく」です。この知見だけは、北鮮がこの世から消滅しても、消滅しません。
 また、核実験の予告や通告や宣言に対し、シナ、アメリカ、ロシアはそれぞれどのように水面下で反応してくるのか、事前妨害をのりきるための国内諸体制はどのように引き締め、あるいは発破をかければ成功するのか、その得難い政治戦場の体験も集積しました。
 これらの知識は、日本人がこんごも欠如させ続けるものです。かたや、それらは、金王朝が亡んでも、北東アジアのどこかには残って行く。長期的には韓国人がうけつぐかもしれません。短期的には、イランやパキスタンがその一部を受け取ることができます。北鮮とパキスタンはシナを媒介として陸続きであり、パキスタンはイランやアフガニスタンと陸続きです。米国の海上臨検はこれまでもこのシナ・ルートでスルーされてきました。今後も同様でしょう。
 このように全局的にみますと、今回の北鮮の“実験”は、シナの対米「オプション最大化戦略」の一歩前進だと言えます。シナは、「北鮮の実験知識をイランに伝えてもいいのかよ?」とアメリカ政府を脅迫することができるようになりました。また、もし米支戦争となった暁に、旧北鮮人のテロリストをアメリカ国内で駆使して、核テロを実行させるとほのめかすことも可能になりました。
 日本にできることは何でしょうか。まず北京五輪はボイコットしなくてはなりません。北鮮に実験まで許したのは、すべてシナの責任です。その責任をとらせなくてはいけません。それに抗議する姿勢を率先して世界に示さなければなりません。
 しかし安倍政権にはそんなイニシアチブは発揮できないでしょう。「わが国のNPT脱退」を争点とした解散&総選挙が、待たれるところなのです。真の野党よ、いまこそ出よ!
 このタイミングで日本がすべきことはまだまだたくさんあります。「集団安全保障」をめぐる内閣法制局の愚劣きわまる政府見解は一擲しなければなりません。
 またさらに「米国の核をいつでも持ち込ませる用意がある」とも声明しなければならないはずですが、安倍氏は早々とその可能性を打ち消してしまった。この人は、日本人の生命財産を守る方法を知らないのです。知っていれば、首相就任と同時に靖国神社に参拝し、シナ訪問など蹴飛ばしたはずです。いままでずっと、こうなったときのことを考えてこなかったのです。それなのに、危機の時節に首相になってしまったのです。意志があっても方法が分からないならば、小学生と変わりがない。それでは未来の日本人が迷惑します。