NPT解散&総選挙の争点

 1994年に北鮮が原爆原料の取得を本気で進めていると偵知したクリントン政権は、ペンタゴンの強い勧めに同意し、北鮮内の原爆原料工場を空襲して破壊するオペレーションを検討しました。
 この攻撃機(とうぜんステルス機FA-117)が発進する基地が、新田原、またはそれ以外のどこになるにせよ、こうしたエアレイドは、電子妨害機や囮り陽動攻撃機や偵察機や対空ミサイル制圧機や巡航ミサイル(潜水艦から奇襲的に発射)などとのオーケストレイテド・アタックになります。
 つまり、三沢から嘉手納までのすべての在日米軍基地から、なんらかのミッションを与えられた作戦機が飛び立ったり着陸したりの、大童。
 それだけではありません。故障機が日本の民間空港に緊急着陸することもあるでしょうし、万一墜落したパイロットのコンバット・レスキューに、日本の自衛隊や海上保安庁や警察が総力をあげて協力してくれなくてはなりません。
 そこで、事前の打ち合わせと調査をしておくべしと、東京に米国から係官が派遣されたわけです。到着するや、たちまち彼の下アゴはだら~んと永田町の道路にへばりついてしまった。霞が関では両目がピロロ~ンと飛び出してしまいました。
 なんと、日本の政官界には「橋本派(旧田中派)」や「諸野党」や「外務省チャイナスクール」という、中共や北鮮の代弁者としか思えないトンデモ勢力が、対大陸外交政策を壟断していたからです。
 そこで係官はホワイトハウスに報告しました。「日本は半島有事の場合にアメリカに協力する実務的な準備も、意思も、皆無のようです。しかしアメリカが単独で爆撃を強行するなら、非友好的な傍観をきめこむでしょう。飛行場や港湾がどの程度自由に使えるかは、未知数です」と。
 「ふざけるな!」と米国の指導者層は怒りました。日本列島の安全のためにアメリカ軍人が命を張ろうというのに、それに協力する気がないとは……!
 「なんでそんなアカの手先どもを今まで艾除しておかなかったんだ!」と思いましたが、あとの祭りです。
 とりあえず、ステルス機による半島攻撃は「やめぃ!」ということになりました。日本人の安全はきっと低下するが、それは腰抜けの日本人の自業自得だから放っておけばいい、いや、そんな奴等からはカネだけ厭というほどむしりとってやれや、という悪意ある非友好的態度にホワイトハウスが傾斜したのは無理もありません。日本政府当路の態度は、世界の安全に対してあまりにも無責任だったからです。
 米国指導者層は他方では、長期的な日本の政界改造も企図しました。GNP世界第二の日本国が専制シナの手先となってしまうようでは、将来、米支戦争が起きたときにいささか迷惑だからです。そこでまず旧田中派を除去することに決めました。えらく時間がかかりましたが、これをとうとう10年ちかくもかけて結果的に完遂したのが、小泉純一郎です。
 小泉氏が搗いた餅を座して賞玩させてもらっているのが、有事のリーダーとしてはからきし無能な安倍氏です。安倍氏は、小泉氏がやりのこしている国内有害政治勢力の討伐を自分が挙興しなければならないという歴史的な自覚が無かったと思います。
 言うまでもなくそれは公明党の切り捨てです。早くも予算委員会で、彼らが「パシフィスト」として、また「親支・親半島」の一方の旗頭として、日本人民の未来のリアルな安全保障にあまり理性を働かせることができない異分子であることが再確認された。自民党の脳の半分に寄生生物がからみついて、日本という国家がいざというときの身動きがとれなくなっています。
 エリーティズムの共産党が昭和20年代のような大衆の支持を再獲得することは、たぶん二度と日本では無いでしょう。しかし公明党はエリーティズムを標榜せずに、最下層の零細企業主たちの間に布教を成功させた。維新以前からの伝統の「町人」の軍事的退嬰を代弁するのに、公明党ほど絶妙なポジション取りをやってきた政党はないかもしれません。
 しかし平時にはこれほどあなどり難きパシフィスト信仰集団も、北鮮の核武装から始まる有事には動揺します。そこでリーダーには危機到来と同時に瞬間的な決断が求められる次第で、たとえばNPTからの離脱を考えねばならないと議会外で公言してしまえば、自動的に総選挙の流れになって公明党は切り離され、日本はいよいよ反自由主義契約のマック憲法を棄てて普通の国になれる。しかし、安倍総理はとてもその器ではなかったどころが、ご自身が有事ビジョンの無い「良い子」政治家だったのです。男が四十を過ぎて勉強し直せるものじゃない。すぐ交替が必要です。
 第二次大戦のイギリスの将軍、モンゴメリ元帥が、回想録でこんなことを書いています。
 クロムウェルの軍人統治時代、英国はずいぶん陰気になった。それで英国民は、常備軍などもう置くまいと思った。むしろ、有事の際には緒戦で負ける方を選んだのである、と。
 日本は民本主義国家ですから、シナや朝鮮のような奇襲攻撃は仕掛けられません。必ず奇襲を仕掛けられる側の立場です。最初は敵に得点を許してしまう。
 しかし、平時から、最悪事態が起きたときに自分が首相ならどうするのかを考えていれば、心手期せずして、最良の反撃策を遅滞なく自信をもって下令することができるのです。
 それができないのは、平時に何も考えていなかった証拠でしょう。そのような人に二度目、三度目のチャンスを与えている暇は、ざんねんながら核時代の先進国民には、ないのです。
 モンゴメリはこうも書いています。共通の目的に人々を団結させる能力をリーダーシップといい、それはまた、周囲の人々に、自信を持たせることでもある。指導者は、非能率と、自分の時間を浪費する人々には、仮借があってはならない。また、臆病者は、判り次第、捨ててよい──。
 安倍氏は、臆病者のように見え、こうしている間にも、わたしたちはとりかえしのつかないタイミングの浪費をしていることになるでしょう。