ガーデン用ソーラーライト実験報告

 太陽電池パネルと充電池とLED電球と暗闇センサーと自動ON/OFF回路などを主要素として組み込んだものがソーラーライトです。主に日中に陽が当たる庭用です。
 LEDも1灯レベルではとても「照明」とは呼べない。蛍の光や窓の雪よりは高輝度でしょうけども。それでも十分に「目印」やイルミネーション代わりにはなるのです。
 ところがあるソーラーライトのメーカーのWEBページを見ますと、北陸から東北の日本海側の県と北海道では、積雪や、冬期の曇天のため、ソーラーライトの設置には向かない、とされています。
 わたしはこれは納得できません。と申しますのは、ガーデン用のソーラーライトは、イギリスやドイツのような高緯度地方でも生産され、利用されているのですよ。函館市の緯度はローマやNYと同じなんですから。さすがにスカンジナビアでは聞かないが。
 そこでわたくしはこの冬から、「道南地方に向いた庭用ソーラーライトはどんなものか」を探る実験をはじめることに致しました。
 じつは拙宅(借家)は、護岸工事を施してない原始的な河川に面しておりまして、対岸がまた荒蕪地であり、人家までも遠いものですから、夜間、住民道路からすかして眺めますと、背景が真っ暗闇に近い。
 冬期の日没後など、たえまない水音と、川岸の落葉した雑木のシルエットが、一層、凄壮な雰囲気をかもしだすわけです。
 また、住民道路のどんづまりですので、街灯のサービスも、川の土手際までは至っておりません。
 そこで、この漆黒の庭の一隅に、常夜、ソーラーライトを点灯することによって、寒々しい冬景色を少しでも暖かくし、なおかつ犯罪者が跳梁しにくくなる地域環境にも協力しようと思い立ちました。
 ブロックの一画だけ夜間、暗くなっていますと、そこを犯罪者が利用しますからね。近隣への責任というものです。
 さっそく、近郷近在でいちばんでかいホームセンターに赴きまして、まずIRISオーヤマという仙台市のメーカーの、やたらに明るそうな灯篭型(ポール付)のソーラーライトを1個、求めて参ったわけです。発色は、なごみ系の黄橙色(白熱灯色)を探したのですが、白しかありませんでしたから、やむなく白を買った。価格は二千数百円です。
 これは確かに明るい! 近づくと本が読めるくらいです。LEDを2球、光らせているらしい。……だが困ったことに、夜の8時前にはもう電力が尽きてしまうことがわかりました。
 設置場所は、冬期は午後2時台には家の日陰になってしまう「北東角」です。東側には落葉した雑木以外の障害物はないので、朝は9時台から直射日光が当たります。
 単純に計算しますと、たとい、冬の日中、つまり午後の3時台まで、めいっぱい直射日光を受けたとしても、このソーラーライトは、夜の8時台にはバッテリーがあがっちゃうんじゃないか。
 ここでわたしは憤然としたわけです。
 こんなのはあきらかに北海道の冬に売ってよさげな商品じゃあるまい、と。夏用じゃねーかよと。ホーマックも、冬の地元向けのソーラーライトだけ選んで棚にならべとけよと。
 しかもよくみればこの製品、太陽電池パネルの透明カバーに、傾斜がほとんどつけられていません。つまり容易に雪が積もって太陽電池を影にしてしまう。積雪期に使うことをほとんど予期していないわけだ。そりゃ仙台市は太平洋気候で雪は降らないし、冬は連日、よく晴れていてくれるでしょうけどね。
 ちなみにスペックは、ニッケルカドミウム電池、2.4ボルト、600ミリアンペアと書いてある。
 一つ学習をしたわたしは、そこで、また違う製品を買ってみることにしました。こんどはLEDが1灯のやつを選べば、消費電力は半分でしょうから、2倍の点灯時間が得られるのではないかと考えた。
 一千数百円という値段の安さと、電池パネルの面積が最初の製品と同じであることから、また同じIRISの、ケピ帽形の製品を購入しました。(色はやっぱり白しか置いてないのはどういうわけでしょうか? 黄橙色は当地では人気がないのか? 北国ではそれはおかしいと思うのだが……)
 ソーラー電池パネルのカバーは、フラットです。が、こんどはわたしには考えがあり、特殊な金具を別途、買い求め、柵の上の杭の上に、斜めに角度をつけて、冬至の南中高度に発電パネルが正対するよう、柵の杭の上にネジで固定しました。これで充電効率は向上し、しかも発電パネル面に知らないうちに雪が積もることもおのずから防がれるはずです。
 ところが期待は裏切られました。何晩か観察した結果、ここまでしても、最初のLED×2灯型の製品よりも、じゃっかん長く点灯してくれるだけであることが判明しました。冬の日照では、やはり夜の8時前に放電し切ってしまうのです。
 点灯時間がこんなにも短い理由は、電気部品の知識の乏しいわたしには分かりません。が、せめて夜の12時くらいまでは点いていてくれぬと、地域貢献にならんという気がするわけです。
 いっそ、ローボルトの有線給電LEDにしてしまうというのも一解法でしょう。が、あいにく借家には外部コンセントがない。フラットケーブルで窓から線を出すのは電気工事法違反のような気がしてためらわれてしまいます。
 ヨーロッパでは、ニッケル水素電池を使っているという話です。蓄電池の差なのかもしれないと思い、ヨーロッパで設計されたものだという謳い文句の製品を2種、ネットで注文してみましたが、どれも「品切れ」という返事でした。日本ではあまり売れぬのかもしれません。比較実験できなくて残念です。(それにしても品切れ商品を漫然とWEBに掲載し続けている中小企業が多いということを、今回はからずも知った。在庫数について明記していないサイトは要警戒ですよ。)
 次に、近畿圏のメーカーの、半透明ドーム型のソーラーライト(ポール付)を、また同じホームセンターで一千円台で購入しました。やはり黄色がないので、白色で我慢しました。発電パネルを覆うカバーがドーム型ですから、積雪が充電を妨げないことが期待できるでしょう。
 しかし実験の結果、これは点灯状態においてかなり暗く見える上に、現時点までで購入&比較してみた製品の中で、最も早々と消灯(放電)してしまうことがわかり、失望させられました。暗い理由は、ドームの直径が20センチ近くもあり、光源のLEDから遠すぎるためではないかと疑われます。また、太陽電池の面積も小さいのかもしれません。
 ちなみにスペックを読みますと、電池はNi-Cdの単三型1本で、1.2ボルト、600ミリアンペア。白色LEDランプは0.024ワットで、毎時1.2ボルトを消費する、とあります。このスペック表で気付いたのですが、黄色LEDランプなら、0.019ワットなのですよ。ということは、黄色LEDの方が点灯時間は長くなるはずだ。
 ますますわたしには不思議に思えるわけです。なぜ冬の北海道のホームセンターで、冬の北海道向きの製品を置いてくれぬのか――が。
 この製品の性能が不満足な原因は、太陽電池パネルの面積が小さいからではないか、とも思ったのですが、どうもそうではない。
 そう判断できるわけは、発電パネルの面積の等しい、また、そのパネル中央から白色LED球が顔をのぞかせているという構造までも同じな、別な社の製品の方が、点灯時間が長いのです。(尤も、やはり冬の夜の8時前には消えてしまうんですが。)
 こちらは、製造元が不詳で、半透明・白色・球型のソーラーライトです。価格は三千円台(デコラティブな台座の輸送&保管コストが大きいと思われる)でした。
 カバー球の直径が小さいためか、同じ光源なのに暗闇の中にくっきりと浮かび上がって見える。また小型のボール状の外形は、夜間の積雪が内部の発電パネルに冬の朝日が照射することを妨げないという点では、最も望ましいものです。
 ただし付属の説明書に、LEDおよび電池のスペックなどが皆目記載されていませんので、それらの部品の違いでパフォーマンスが違っているのかどうかは、断定ができません。
 さて、以上のすべての製品を凌ぐ、スグレ物を、わたしはとうとう手に入れました。これは地元ホームセンターには売っておらず、ネットで注文したものです。送料抜きだと900円未満であったと思います。
 届いた箱に「(株)オーム電機」と書いてあって、一瞬ギョッとするのですが、埼玉県の会社で、もちろん「OHM」をカタカナにしたものでしょう。
 この「ソーラーボール」、全体がちいさな球形であり、発電パネルの下にイエローのLED×2の光源があるようです。発電パネルの上面を覆う球面だけは外殻プラスチックが無色になっていて、太陽光の入射を弱めません。
 台座も支柱も付属品としては無いので、梱包緩衝材として入っているブリスターに、透明荷造りテープをロール状に貼り付け、それを両面テープのようにしてボールを接着し(冬至南中高度に傾斜させるようにする)、そのブリスターの裾部をネジで柵上に固定して、台座として代用することとしました。
 斜めに固定できることは北海道では殊に重要でしょう。冬の高緯度地域での太陽電池の充電効率を改善し、かつ、積雪が充電を妨げにくくするからです。
 夕方、観察していると、点灯のタイミングが、ずいぶん遅い(他の製品は夏の庭の観賞用を主眼としているせいかトワイライト時に早々と点灯開始する)ために、これは不具合品かと思ったぐらいですが、周囲が暗闇となり、いったん点灯すると、なんと朝方までつきっ放しです。初期充電をせずに、午前中の直射日光の充電だけなのですが……。
 スペックを見ましょう。電球の消費電量は記載されていません。蓄電池に違いがあるようです。「Ni-MH」で、1.2ボルト、900ミリアンペア、と書いてある。――MHというのがよくわからんがカドミウムじゃないことは確かだ。やはり電池が決め手なんでしょうか。
 コストを下げようとして、電池を安いニッカドなどにしてしまうと、北海道の冬には向かぬ製品しかできないのでしょう。そのように、見当がつけられるように、思えます。
 この「ソーラーボール」は完全防水構造で、分解ができない。したがってユーザーは電池交換もできません。2年以内に、充電回数の限界がくるようです。しかしこの性能に毎年900円を投ずるのに、わたしはやぶさかではない。
 最近は街灯も白色ばかりなため、黄色の常夜灯は暗闇の中で目立ち、昔の裸電球の門灯も髣髴とされ、いたく満足しております。
 あと、イギリスやドイツと比較するのは酷かもしれないが、日本の北国の電機メーカーは、積雪地で冬の好天日も少ない裏日本や高緯度地方の地元の需要に応ずる技倆がないのではないか、と、今回のテストで感触できました。これは、地場のホームセンター/DIYショップも同様です。