のっぺらぼうの十円玉

 「ネット・ゲリラ」さま。
 たびたび拙著をウェブサイト上でお取りあげ下さいまして、どうも有り難う存じます。御サイトは毎朝、愛読しております。いつも、目覚まし時計無しで朝の4時台に起きまして、回線をつなぎまして最初にPC画面に出てくるのが、ニュース更新の早い「東京新聞」のサイト。次にその日のローカル天気情報を確認したあと、「池田信夫」さんのブログを読んでスカッと眠気を覚まし、次に「泥酔」さんの日経の解説を読んで新聞を読んだつもりになり、次に御サイトに目を通すというパターンで、40分前後のあいだに、だんだんに血圧が仕事モードに突入していくわけであります。たいへんおもしろく拝読いたしております。
 以下、本日の余談(怪談)。69歳で死んだ親父(元・消防士)が、現役中、世にも珍しいコインを見せてくれたことがあった。10円玉と同じ材質・サイズなのだが、裏表ともに、のっぺらぼう。なにも刻印されてなくて、ツルツルだった。縁のギザギザ等もなかったと思う。エッジの角は、丸みを帯びるまでにとれていた。表面の錆びっぷりは、真に使い古された10円玉と同じ色合いであった。
 親父いわく、これは職務中、火事場の連絡で公衆電話を使わなければならないときのために、消防士が持たされている代用硬貨なのであるという。それならば、1人で何枚も所持しているのかといえば、なぜか、たった1枚だけであり、それも、財布に入れているようではなく、どこかの引き出しの中に忘れ去られたように放置されていたのだった。
 当時の10円玉は、使いでがあった。運輸会社の社員向けに設置されている自動販売機などをよく探しせば、350ミリリットル入りのファンタ・グレープを、50円かそこらで買うことができたような気がする。
 しかし、いったい、このような「一部の公務員に対して公的に支給された擬似10円玉」なるものは、本当に正式な制度として、かつて存在したのだろうか? あれから何十年もたった今頃、気になる。なにしろ、それ以後、わたしは他所では、一度として、そんな硬貨を見かけたこともなければ、話として聞いたこともないのだ。わたしの私的なミステリーである。