差別的大量破壊兵器は可能である

 昨年12月27日に死去したハンチントン博士は、アメリカ人にとってなじみのないユーゴ紛争も、宗教を切り口にすればじつによく分かるようになるという大発見をしまして、それを世界のあらゆる国に適用しようとしました。
 ところがシナや日本は、欧米やイスラムと並べたら、ほとんど無神論の社会。この前のオバマ演説で、無神論の国と言っているのは、たぶんシナや日本が念頭されておりましょう。仏教を敢えて挙げませんでしたのは、仏教勢力にわずかでも言及すれば、比較的どうでもいい南アジアの複雑な紛争にアメリカ新政府として大きな興味があるかのような印象を与えてしまうと懸念したからでしょう。ここにもハンチントンの遺訓が生きています。ハンチントン氏がベトナム戦争について猛省した結論が、しょせん儒教国同士の紛争に関わったのが、キリスト教国として大間違いだったのだ、ということでした。
 しかし、米国人には、無神論文明の雄であるシナ文明はしょせんは理解はできますまい。蒋介石のクリスチャン演技に騙されず、シナ人とはどういう連中かをアメリカ人として把握できたのは、スティルウェル大将だけだったでしょう。しかしカリフォルニア州のカーメル(あのRobert A. Heinleinも住んでいた海岸の町)に隠退したスティルウェルはトルーマン政府により、死ぬまでシナ批判の発言を禁じられて、終わります。
 スティルウェルのような関わり方をした者でなくば、シナ文明の〈触れたものを腐らせていく〉おそろしさ、目下の日本が直面している深刻な脅威は、理解できません。ハンチントンにもナイにも、ほとんど理解などできていないのです。
 ハンチントンは、ユーゴ紛争のようなドンパチが文明衝突だと思っていました。ナイはアメリカの映画がシナ人を変えられると考えているお目出度い人物です。
 アメリカ指導層が何も理解できていないのですから、日本はいよいよ単独でシナの核兵器に対抗するしか道はありません。ところが切り札だった核武装は、あのどうしようもない田母神論文が公表されたおかげで、まったく不可能になってしまいました。
 こうなったら日本は、核抑止力としての化学兵器システムを用意するしかないだろうとわたしは思います。
 それはどのようにして可能か?
 3月7日(土)の横浜講演会では、こういうお話をしようと思っています。
*講演会のご案内。
http://www15.ocn.ne.jp/~gungaku/hyoudou-poster.pdf
*お申し込みフォームは、こちら。
http://www.formpro.jp/form.php?fid=38906
 すばらしいヒントが、ポーランドの小説家、スタニスワフ・レムによって既にわれわれには与えられているのです。
 1964年に彼は、『砂漠の惑星』(1973年に独訳から重訳された英語版のタイトルは“The Invinceble”)を書きました。これを日本では1968に邦訳してしまっているのは、誇るべきことでしょう。
 いま、DARPAがシャカリキになって民間企業から案をあつめている「スウォーム」(小型ロボットの大集団運用)の最初の描写も、この作中にあるのです。
 偶然といいますか、おそらくレムが機械羽虫のスウォームを思いついたのは、朝鮮戦争におけるシナ軍隊からでしょう。インヴィンシブル(Invincible=無敵)であるためには、高度な科学文明など必要ないのです。メカニカル・インセクトの黒雲に突っ込んでやられてしまう重戦車は、パーシングだったのでしょう。記憶をなくしてしまう宇宙船乗員は、洗脳された米兵捕虜でしょう。
 しかしスウォームはこれからはアンチ・シナの役に立ってくれるでしょう。
 機械の虫と化学兵器を組み合わせることにより、化学兵器は無差別兵器ではなくなるでしょう。大量破壊の報復兵器でありながら、それは無駄に広域を汚染することなく、敵の年令や階級を選んで段階的な報復を可能にするでしょう。
 こんなお話を3月7日にいたしましょう。
 ところで雑誌の『BAN』に対馬の古い要塞の写真が出ていて驚きました。まさに、函館にある旧陸軍の要塞と造りがそっくり。同じ明治30年代前半の技術で設計・施工されているものと見えます。