またしても宣伝広報戦争の対支敗戦

 F-22取得失敗の責任を、政権転換のゴタゴタのおかげで誰も取らずに済みそうなことは、空幕と内局と財務省と総理大臣にとっての朗報でしょうね。FX選定は交代政権のネクスト防衛相に丸投げしてしまえばいいわけです。
 どうもネクスト防衛大臣は、飛行機などよりも「トマホーク教」の熱烈信者のようですが、それを売ってくれという対米要求は、シナからの議会工作で簡単に潰されるだろう、と、ここで予言しておきましょう。
 わが空自がF-22を取得できなかったのも、「シナはこんなに悪い国。日本はこんなにシナの敵」という対米宣伝を、空幕と内局と総理大臣がしてこなかったせいなのです。
 与党の中に北京シンパや平壌シンパがうじゃうじゃいるんだから、そりゃできませんわな。
 もともとオバマ氏とゲイツ氏は、F-22のライフサイクルコスト、ランニングコストの箆棒さに怒っているようですね。
 某英文サイトにUPIの Arnaud De Borchgrave 氏が、分かりやすい背景事情を説明してくれていました。
 イラクにもアフガニスタンにもパキスタンにも、F-22は1機も出動していない。つまり、対テロ戦の役に立っていない。アメリカ兵の命を救うために、現実に何の役にも立っておらず、他の必要な予算を食い潰しているわけです。
 そして、そんなアメリカ同胞の現地兵が求めているのは、もっとたくさんのMQ-9 リーパー(プレデター改の無人機)である、と。現在、アフガンとパキスタン上空には、リーパーが30機以上、飛んでいるようです。
 プレデター・シリーズも値上がりしていますが、F-22とは比較にならない。だからF-22をやめて無人機関連にもっと回そうという流れですよ。
 2009-7初旬にペンタゴンは認めました。187機あるF-22のうち、2008-10から2009-5のあいだに、そのタッタ55%しか、要求任務の遂行可能な状態ではなかった、と。
 しかもF-22は、飛行1時間あたりのメンテナンスコストがF-15の1.7倍近いという。
 いったい空幕はそんなもんを導入して、わが国の防衛予算の配分比率を、どうしたい気だったんでしょうね? MDを味方にした海自にとられ続けた「失地」を回復しようとしたのでしょうか。そうだとしても、彼らの夢は潰えました。
 おそらく、日本のMD投資はアメリカ本土をシナのICBMから守るために役立つが、日本のF-22調達は、今以上にシナを抑止することにはつながらない、とも、米国の指導層は判断したのでしょう。彼らには既にB-2もあれば、ミニットマンもトライデントもあります。シナがハードウェア面での敵だとは、本心では思っていない。空幕は、それでも巧みな宣伝によって米国指導者層を説得できるチャンスはあったと思いますが、その才能のある幕僚はいなかったようです。
 マック偽憲法を捨てられず、与党内にすらシナの工作員がいる、そんな日本人は、アメリカ軍の対等の同盟者になるどころか、いつF-22から得た秘密技術を国産武器に転用してその日本製武器をシナやら韓国やらどこやらに輸出し始めるかわかったもんじゃない――と見限られてるのでは、宣伝もやりにくいですよね。同情します。イージス艦内にシナ人を案内しようとしてアメリカ大使館から怒られた、という海自の前科もありますしね。
 日本が核武装すれば、こんどはその核技術情報を見境い無く、シナや韓国に与えかねない、と米国指導層は疑っているはずです。堂々と大アジア主義を標榜する者が、民主党だけではなくて、与党の中にもいるんですからね。
 失敗国家(=テロ国家)への核爆弾の拡散防止を至高命題としている現下の米国指導層が、政治思想的に信用できない日本への高度武器技術移転を禁止するのは、当然ですね。
 ゲイツ氏は米国内の技術振興政策としても、F-35を推しているようですね。それはF-22より10年先進的な技術の塊だと Borchgrave 氏は指摘しています。F-16の後継であることは、その際に、関係ないのです。
 また米空軍はUAVの運転者の大量育成を始めているそうです。F-22をやめて、もっと無人機を増やす。それも、ソフトウェアの進歩で、まもなく一人で複数のUAVをオペレートできるようにもなります。空中戦ができるようになるまでに、あと10年だという。もう、日本はトラック100周遅れちゃっているんじゃないですか?
 米国のミサイル防衛庁も、リーパーを大量採用しそうです。DSPやSBISでは雲の下のSSMの発射赤外線探知はできない。それができるのは数千mの中高度を長時間飛んでいられるプレデター級の無人機だというのが彼らの結論です。
 わが防衛省と自民党防衛族は、アジア・モンスーン地帯は、中東のような沙漠地帯とは異なり、曇っている日が多いのだ、という現実を、忘れていますね。(以前、この早期監視警報任務のためにグローバルホーク級が役立てられるのではないか、と書きましたが、間違っていました。グロホは雲上飛行機だから、DSPと同じデメリットがあるわけです。)
 インドは来年あたりから、国産(旧ソ連原潜の模倣)の核ミサイル発射型原潜を5隻揃えて、シナを核抑止するようですね。一番艦はすでに公試運転をしています。
 失敗国家のパキスタンがタリバンに核爆弾を渡さぬよう、米軍が派兵されるというときにも、インド軍の協力を求めることになるでしょう。アメリカから見て、これから頼りになる国は、はっきりしてきました。
 なお、22日午前から23日夕方まで、急ぎのご連絡のある方は、JSEEO事務局へお願いします。この間、函館を留守にしております。