小籌か、浅略か、はたまた……

 AFPの09-9-23報道。英ブラウン首相はトライデントSSBNをどうやら4隻体制から3隻体制に減らすつもりらしい。英外相は、これは予算面の考慮が理由ではないと強調。ちなみに英国保有の核弾頭数は、世界で五番目。
 兵頭いわく、おそらくSLBM用の保有弾頭数は削減しないでストックしておくのだろう。
 またブラウン氏いわく、北鮮とイランに核武装をやめさせるため、原発支援すべきだ。
 NPT精神は、核保有国の核削減も要求しているが、英国は independent nuclear deterrent【独立的核抑止力】も維持する必要があるのだ、とブラウン政権は信じている。
 兵頭の蛇足。これは、近づいた米露交渉(ReSTART)への下地づくり。
 さらに蛇足。米国はイランがシャハブの斉射でイスラエルを叩く意志を察知して地中海にイージスを出すことにした(そしておそらくサード用移動Xバンドをイラクともう一箇所、どこかに前方展開させて警報リンクをとる。トルコはイスラエル防衛のためなどには米軍に協力をしないだろうから、残る候補地はアルメニア???)。シャハブは明らかに弾頭分離型のSSMだ。というのは、発射後100秒で爆発する事故を時に起こしている。これはちょうどノドン級のSSMの弾頭を分離する直前にスピンを与えるタイミングなのだ。これに加えて「斉射」だから、ABMは何発あっても足りない。そこで〈面倒くせえ。だったら先に核攻撃だ〉とイスラエルが決心してしまうと、それを口実に世界中に核武装国とミニ核爆弾が拡散することとなり、まわりまわって米国の大都市が核テロの的にされる確率が増える。だからポーランドどころじゃなくなっているのだろう。
 次。AFPの09-9-23報道。「Israel To Supply Radar Systems to South Korea」。
 これは二件あって、ひとつは韓国が開発中のジェット戦闘攻撃機用のレーダー。米国製にはしないのだというところに、属国に甘んじているどこかの国とは違った正常な計算を感じますね。まあしかし、輸入品である限りは、あの宇宙ロケットと、おんなじことになるでしょう。
 もうひとつは、北鮮の弾道弾を早期警戒するための、「Green Pine Block-B」レーダー・システム。
 韓国内での運用開始は2012年で探知距離500kmとか言っているが、これは「北京上空までは捜索しません」というジェスチャーだけ。
 しかしこれで韓国が大きなBEAMS/PAVEPAWS を設置する予定がないことがハッキリしたんですから、日本は宮古島に最大級のXバンド・レーダーサイトを造って対米外交上のアドバンテージをとりましょうよ。
 次。kris osborn 氏による09-9-22記事。
 ジェネラルダイナミックスが5年がかりで開発していた GPS-guided 120mm 迫撃砲弾改造キットがついに完成した。
 これは在来品の迫撃砲弾の信管を外し、誘導キットをねじ込むだけでOK。もちろんキットにはフィンがついており、それで落下コースを修正する。座標データのインプットは、発射前に行なう。
 兵頭いわく。この技術が、アフガンでの不発弾回収からロシアとシナへ漏洩するのは時間の問題だぜ。そしたらどうなるか? 110~130ミリ級のロケット弾がGPS誘導弾に化けるだろう。120ミリ迫撃砲は重すぎるのでとても個人ゲリラには運搬できない(牽引トラックが必要)。ところが140ミリ未満のSSRは、簡易使い捨て単発ランチャーともども、数人で担いで機動展開することができるのだ。つまり典型的な「戦場非秩序化兵器」だ。(戦場秩序化兵器と戦場非秩序化兵器の違いについての考察は、兵頭の『日本の防衛力再考』かその少しあとの旧著を再読して欲しい。武器援助や武器輸出を文民政府が判断するときの倫理として重要な概念です。)
 支那事変中、日本軍を最も苦しめたのが、ドイツ製82ミリ迫撃砲だった。これは射程が1km以上あり、日本軍がこいつで奇襲的に乱打されたあと、発射点を特定してそこへ歩兵中隊をさしむけようとしても、シナ兵は悠々と迫撃砲を分解して数人で背中に負ってスタコラ逃げ去る余裕をかならず得られるのだった。正規軍の歩兵の「一挙躍進距離」のほんのすこし遠間から撃ち込めるというところが、ゲリラの重火器としては常に重宝するポイントなのだ。
 今、アフガンやイラクでゲリラが81~82ミリ迫を使わないのは、上空からの監視&反撃がキツいのと、正規軍がすっかり車両化されて、一挙躍進距離が数kmに伸びたからだ。しかし簡易ロケット弾との組み合せなら、話は違ってくる。かつてのシナ軍の乱撃とは違い、GPSで1発必中なんだから、深刻な事態となることだろう。
 ゲリラがこれを持ったら、米国のGPSサービスも停止するかどうにかしなくちゃいけなくなるよね。
 早く日本は、日本独自の準天頂衛星群による〈国内専用ガラパゴスGPS天国〉を構築しようじゃないですか。
 次。「韓国軍:M1・カービン小銃を米国に逆輸出」という『朝鮮日報』の記事。M1カービンだけで64万丁もストックしているらしい。
 まだ国産アサルトライフルで更新していなかったのだね。
 この記事を読んでふと思ったのですが、たしかM1カービン用の銃剣は「両刃」ですよ。ダガーナイフ類似形の。ということは、日本国内で売ってる(売っていた?)M1カービンのモデルガンやレプリカエアーガンについている(ついていた?)擬製銃剣も、とうぜん「両刃」でしょう。あれを持っている人は、みんな、処分したのかな?
 アメリカはレーガン時代、なんであんなに景気がよかったんでしょうか? 
 それは「小さな政府」のおかげではちっともない。「SDI」を推進したDODという巨大機構のおかげです。大成功した「レーガノミクス」の正体は「SDI」+「日本大蔵省の朝貢」に他なりませんでした。もちろん、それは「一回性」で、二度と再現できない。だから後継政権(父ブッシュ)がワリを食ったのです。
 そのSDIは、「アポロ計画」(JFK政権による)の経済効果面での再現を狙ったものです。
 そのアポロ計画は、「マンハッタン計画」(FDR政権による)の経済効果面での再現を狙ったものです。米軍はWWIIでたったの40万人しか戦死せず、1000万人もが復員してきたのに失業はゼロでした。しかしこれまた「一回性」の政策なので、ケネディ政権は別な手を考える必要があったわけです。(そういや夕方の横田AFNでトルーマンの再選が意外だったという話を紹介する歴史教育テープが流れてて感心しました。三沢AFNは、夜明け後から日没まで継続して聞けるようになりました。)
 この辺をわかりやすく解説しましたのが、拙著最新刊『「自衛隊」無人化計画』(PHP研究所 ¥1300-)です。
 もう鳩山内閣もできたのだし、アメリカの属国は辞め、日本人の幸せを追求しましょう。それには、ロボットの開発と「原発10倍計画」が、最も近道です。『「自衛隊」無人化計画』を、お読みください。