本土からの核撤収+不真面目MDという“現行”米支密約をこそ暴け!

 『NYT』の「Op-Ed」欄にゴルバチョフが「Two First Steps on Nuclear Weapons」という意見を09-9-24に寄稿。
 大意を摘録すれば……。
 ―― Dmitri Medvedev は昨年11月に言ったではないか。もしポーランドへのABM配備をアメリカがやめるなら、ロシアもそれに対抗した新たなSSMを配備することはやめることができると。オバマは今回これに応えただけである。
 ロシアは前から言ってきた。イランが長距離SSMをつくっている証拠が一つも無い。アメリカもとうとうそれに同意したのだ。イランは今後10年ICBMはつくれない。
 米露2国が核軍縮しないために、もし5~10ヶ国の核武装が許容されるというなら、どうしてそれが20~30ヶ国に増えちゃいけないんだ? と世界は思っているぞ。
 ゲイツは、 SM-3 missiles が将来は長距離SSMを迎撃できるようになると言った。また、米露はMD協力できるといった。然らず!
 米露のゴールは、 mutual deterrence の現状を、 minimum nuclear sufficiency for self-defense に低めることであるべきなのだ。
 兵頭いわく。ロシア人の本音を翻訳すれば、〈もともと反露で凝り固まっていて、しかも立場が強くなれば何をしでかすか分からないポーランド人なんかに危険な武器を与えるなよ。つまりポーランド人は朝鮮人と同じさ。「RD-170」エンジンを20年がかりで完成したオレ達は、イランに核ICBMをつくる能力などないことを確信しているよ〉となるのだろう。
 オマケ。きのうの「ロシアの声」は、イランがIAEAに第二の濃縮ウラン工場を申告したとか言っていましたな。
 次。同日、同じ「Op-Ed」(社説対向ページのこと)に、KENNETH ADELMAN 氏が「A Long-Term Fix for Medium-Range Arms」という寄稿。
 これがトンデモ論文だ。阿呆は日本の鳩山だけじゃないと分かって皆安心だね。世界中にいるわけだ。そういう阿呆たちは、ただ実務派からスルーされるだけなんだなぁ……と確認ができるように思います。
 以下、アデルマン氏いわく。
 ――先週オバマ氏は東欧のABMの楯計画を撤回し、より小型の迎撃手段を on ships and planes 〔艦船と航空機だと!?〕に搭載する変更案を決めた。
 しかし、提案したい。
 中距離ミサイルなんてものは全面禁止してしまえば良いのであ~る!
 1987にレーガンとゴルバチョフは intermediate-range nuclear forces treaty で中距離核を禁止した。これを世界中に適用すれば良いだけだ。
 あのとき米ソは、陸上から発射する射距離500km以上5500km以下のSSMおよびCMを相互に禁じた。
 オバマとMedvedev はこれを全世界190カ国に要求すれば良い。
 もちろんイランや北鮮は聴く耳を持たないだろう――。
 ※ここで兵頭のツッコミ。その2国だけのわけがないやろ。
 ――しかし100カ国以上がこの条約に署名し、テストと開発と配備をやめれば、幸先は良かろう――。
 以下、兵頭いわく。
 これからフランス設計の原潜を造らんとするブラジル含め、ヤル気と能力のある数十カ国はすべて除外した100カ国な。笑わせるんじゃねーぜ。
 寄稿者アデルマン氏はレーガン政権時代の軍縮担当だった人らしいが、これほどの「井の中の蛙」とは驚きだ。米露以外の何も見えんのか。
 INFは米ソ2国間だからこそ成り立ったという地政学が分かってない。
 22年前のINFではシナは局外者であった。極東ではロシアはSS-20をなくし、シナはSSMを増強した。ロシアが対支の中距離核バランスでは不利に陥っているのだが、もともとロシアにはウラル以東の都市を核ミサイルから守ろうという発想はなかったのだ。
 たとえば露支間では射程4000kmもあれば完全に戦略核なのだ。ということは、もしかりに多国間版INFができたら、シナは射程5500kmオーバーのミサイルを増やすだけだ。その結果どうなる? ヨーロッパや中東、オセアニアが、シナ本土から、大量の核弾頭で脅かされることになる。シナは戦略核の上での世界覇権国になる堂々たる口実を得られる。もちろんそれに英仏も対抗をせざるを得ない。5500km以上飛ぶミサイルが数カ国で増強されよう。実質、世界的核軍拡に終わるだけだ。
 ある後進国が、宇宙観測ロケットや長射程SAMを開発するとする。やがてそれが射程500kmを越える。どうやって区別するのだ。SM-3だってこのまま大型化すれば潜在的SSMだとイチャモンをつける国が出てくるだろう。現にロシアはGBIがポーランド軍の核SSMに化けると疑った。
 次。Schmitigal 氏と Le Pera 氏による「Army Testing Fire Resistant Fuels for Combat Vehicles」という記事。
 路上爆弾にやられて炎上する車両が増えてきたので、ぜったいに火災事故や燃料タンク爆発を起こさないディーゼル燃料やJP-8〔飛行機用じゃなくて陸上車両用〕を米陸軍がまた本腰で研究することになった、と。
 今のディーゼル・エンジンは、一部の燃料がインジェクターからまた燃料タンクに戻ってくる。それで油槽内の油温が非常に高くなり、そのために弾丸を一発くらっただけでも炎上しやすいのだ。〔いやー、知りませんでした。〕
 そこで研究されているのが、燃料の中に純度の高い水(量としては燃料に対して10~20%だという)と乳化剤を加えて混濁せしめる方法。
 この研究はずっと前からあったが、立ち消えになっていた。
 1990s末から複数のメーカーが水混濁ディーゼル油に挑戦してきた。酸化窒素などの排出微粒子を減らす効果があるのだ。
 2002に陸軍は、燃料タンク内に防爆機能のあるメッシュを入れる試験を開始。成果はかばかしからず。
 2002-10からは米環境省も、水混濁燃料油研究をプッシュ。
 欧州も2003-1からそれを製造しようと努力中。
 そして米陸軍は2006-5、イラクとアフガンの炎上に懲りて、この計画を再スタートさせたのだ。
 こんどはディーゼル(軽油)だけでなくJP-8でもやる。
 ディーゼル油より揮発しやすく着火点の低いJP-8ジェット燃料が米陸軍の戦場燃料として使われていることも問題視されている。Adding to this IED threat was the fact that JP-8 aviation kerosene, a slightly more volatile fuel having a lower flash point minimum requirement than diesel, was being used as the Army’s battlefield fuel.
 被弾貫通をうけたときに油槽内の燃料が霧状に飛び散らないようにするには、長い連鎖のポリマーが燃料中に存在すればよい。これで飛沫による初期爆発は抑制できる。
 しかしポリマーの連鎖はディーゼルエンジンのインジェクションの際に剪断されてしまう。〔兵頭いわく。だったらインジェクションのあと油槽に戻さないようにすればいいだけじゃね? ミニ・ガスタービンで燃やしたらどうだ。〕
 そこでベンチャー企業複数が、インジェクションで剪断されてもポリマー連鎖が再度くっつくような成分を研究中。これでディーゼルエンジン搭載車両の油槽の鎮火性を保てる。
 オマケ。「FBI Says Corrupt Border Officials Accepting Bribes Expose U.S. to Terrorist Risk」という、 PIERRE THOMAS 氏による09-9-24の新聞記事。
 メキシコ国境のテキサスなどの州のシェリフが腐敗しているというので、FBIが囮捜査してみたら、150ドルの賄賂で不法移民を導き入れまくりだった。テロリストだって簡単に入って来られる状態となっている。ヤバイ。
 また2008に合衆国は、シナからの不法移民2285人をとっつかまえた、と――。
 FBIという中央権力がなかったら、アメリカ合衆国とて、安全を保つことはできぬようです。
 もう移民など一人も入れなくとも、ロボットが、日本の介護保険問題と不景気をすべて解決します。移民はストを打ち、賃上げを要求し、諸手当を要求し、生活保護と老齢年金を要求し、日本社会に、さらなる負荷をかけるだけです。ロボットは、何も要求しません。
 詳細は、拙著『「自衛隊」無人化計画――あんしん・救国のミリタリー財政出動』(PHP刊)をどうぞ。すでに地方の書店でも手にとって見ることができます。