麻薬が水を奪う! “失敗国家”寸前のイエメンの姿

 イランのニュースがいろいろ盛り上がっていますけど、あっと驚く話は無いですね。『フィナンシャルタイムズ』へのウォルフォビッツの意見寄稿とか、古いレコードの歌のようなものだ。
 今回も、中距離BMのシャハブ3改と、二段式固体燃料の「セジル」の、実際の飛距離の公表はありませんでした。
 シナ製の短BMを「二連装」で発射できるランチャー(車載機動だが地面におろして据えるようだ)の公表だけが興味深かった。固体燃料式だからできるんでしょう。
 シナ製の短BMは三種類あり、その最大のものでも300kmしか飛ばず、それではイラン領からイスラエルまでは届かないが(最低1000kmは射程が必要)、イランはなにしろレバノンのヒズボラへSSM/SSR売りまくりの前科がある。これらも密輸出されるんでしょう。米軍が地中海にイージス配備するのは、それに備えたいのか。
 ジョイントスターズやその類似機能のUAVで空からBM展開を探知されても、対地攻撃機が飛来する前にさっさとBMを発射しちまえばいい、というのがイランの高等判断なんでしょう。シナ製固体BMがその需要に応えた。輸出経路は空輸でしょう。
 そうするとセジルもシナ技術じゃないかと疑われる。ノドンと同射程なら、もう北鮮はイラン市場をシナに奪われたのですよ。
 で、果たしてイスラエルが「行動」を起こすとしたらどうなるか? 手際よくまとめてくれているのが、ANTHONY H. CORDESMAN氏の09-9-26の「The Iran Attack Plan」という記事。どこかの日本の媒体でこれをマルパク和訳しただけの解説記事が出そうな予感のするくらい要領が良い。
 まあそれよりも最近考えさせられたのは次のイエメンの記事です。
 Andrew Lee Butters 氏が 2009-10-5〔この日付は紙媒体用?〕に載せた「Is Yemen the Next Afghanistan?」という記事。
 イエメン政府はスンニ派。反政府ゲリラはシーア派で、北部国境に蟠居している。内乱は難民を生み、アルカイダ天国の土壌ができている。
 それでも2009-6までは、外国人が被害に遭うことはなかったのだが、とうとう6月に9人の外国人が誘拐され、そのうち2名のドイツ人女性、1名の韓国人女性は、バラバラ死体で発見されている。
 その後、イエメン政府は外国ジャーナリスト等の国内旅行を制限している。
 世界公認の失敗国家(failed state)であるソマリアが海賊を輩出しているのは有名だが、次はそろそろイエメンがあぶなくなっているぞ。
 イエメン領内の山岳地は無法地帯で、アルカイダも好んでいる。というか、もともとイエメンはアルカイダへの有数の人材供給国。イエメン政府とアルカイダの関係は symbiotic【共生的】である。
 ※なるほど、2002にプレデターの最初のヘルファイアの手柄首がイエメンで挙げられていたのもこういう背景があったわけね。
 ソ連がアフガニスタンに侵攻したときにもイエメン人が多数志願ゲリラになり、多数がソ連軍に処刑された。フセイン時代のイラクにもイエメンから反政府ゲリラ要員が潜入した。
 アルカイダは 2008-9にイエメンのアメリカ大使館を襲撃せんとした。
 イエメンは銃だらけ。しかも国民の教育はほぼゼロ。
 Khatという低木がある。この葉を口の中で噛んでいると、天然の覚醒剤成分が五臓六腑にしみわたる。イエメン男の90%、イエメン女の25%は、この植物麻薬の中毒患者である。
 イエメンで耕作可能な土地のほとんどが、この Khat の栽培のために利用されている。ただでさえ乏しい水は、ほとんどその畑のために費やされている。
 Khatをやめれば禁断症状が出る。だが、それを治療する方法を、イエメン政府も、米国も、持ってはいない。
 大衆は〈現状でいいじゃないか〉という態度。Khat を常習していると、なんかどうでもよくなってしまうのだ。
 そして、唯一、この現状を改革可能なのは、アルカイダの怒れるピューリタンかもしれん。やつらはこの麻薬には手を出さないから――。
 ……というのだが、本当か? 「アルカイダ=イエメン庶民」という構図があるのなら、ラリったメンバーだって多いだろうに。
 この記事には書いてないけど、ソマリアでブラックホークが墜落したとき、襲い掛かってきた住民も、この木の葉を噛んでラリっていたんでしょうね、たぶん。地域ぜんたいトリップ状態かよ!
 さて拙著『「自衛隊」無人化計画』が書店発売になってから10日を過ぎましたが、ここには日本の現状を変える方法がすべて書いてあります。
 昼間っからマリファナ吸ってふらふらしているような若者は一人も居ないといわれるニッポンのみなさま、どうぞインフルエンザにお気をつけてお過ごしください。