潜水艦輸出とイラン危機のおかげでドイツは「P6」入りを成し遂げる

 09-9-28に『NYT』に FLYNT & HILLARY LEVERETT氏が「How to Press the Advantage With Iran」という寄稿。
 そこにこんなことが書いてありました。
 ――1969にニクソンは、チベットに関する工作を停止しろとCIAに命じ、米海軍には台湾海峡から離れろと命じた。ベトナム戦争中だったにもかかわらず。
 兵頭いわく。『属国の防衛革命』(光人社)にも書きましたが、米支核密約は1969に始まったと思います。片岡鉄哉先生すら、気付けなかったことです。新政権の外相は早くこれを暴きましょう。
 ――シナはイランから原油を輸入しているだけでなく、おびただしい油田開発をイランで実施中。さらにパイプラインをイランからシナまで敷き、原油タンカーを米海軍に妨害されないようにせんとの野心あり。
 兵頭いわく。23日の『FT』は、シナがイランへガソリンを逆輸出中だと報じていましたね。
 またウォルフォウィッツの9-27のFT論文によれば、イランはロシアに次ぐ天然ガス埋蔵量を誇り、それは米国の埋蔵量の4倍で、2/3は未開発だと。(だからといって原発の必要などないとか、原発用の濃縮ウランは安く輸入すればよいだろうとか、ナショナルセキュリティについて他国人が妄言できないでしょう。それがよい証拠には、かつて日本資本によるイランの油井開発を妨害して中断に追い込んだのは米国政府じゃないか。)
 09-9-28には Hu Zhengyue 氏が「Seek peaceful solution to Kashmir: China to India, Pak」という記事を寄稿しています。〔これはインドの新聞でしたか……?〕
 カシミア領土問題を早く解決しようという呼びかけですが、これは、イランからの原油をパキスタン領経由でカシミール峠を越えてシナまで通したいからですよね。
 AFPは09-9-29に、「Israel Takes Delivery of 2 German-Built U212 Subs」と報じ、『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』によれば、このDolphin-class は核弾頭付巡航ミサイルを発射できると紹介しています。〔わたしはこれはブラフのレベルだと思っています。理由は、イスラエルはその実戦的な発射演習をほとんどしていないようだから。核攻撃は、不確実性の高いBMでもCMでもなく、腕に覚えの航空機投下爆弾によってするつもりでしょう。〕
 湾岸戦争後、ドイツは3隻の潜水艦をイスラエルに売り、それにこの2隻が加わりました。引渡しは2010だと思われていたのが、早められた。
 イスラエルがイランの脅威にかなり真剣になっているのは間違いないでしょう。
 ドイツは核武装国ではないが、イスラエルに核兵器投射手段を売ってやることで、「P5+1」のメンバーに招じ入れられた。イランをペルシャ湾側から脅威できる――ようにいつかはなるかもしれない――この潜水艦の売却は、完全に米国の承諾下で行なわれているでしょう。実質、米国によるイスラエルへの戦略兵器システムの迂回援助のようなものでしょう。
 EU経済を一国で支えているドイツは、アフガンにも有力な空陸部隊を供出していますが、それだけじゃ「P6」扱いはしては貰えなかった。
 日本はインドに大型潜水艦などを提供すれば、このドイツに近い地位が得られるのかもしれません。日本がやらなければ、フランスが原潜技術をインドに売ろうとするだけです。早く日印武器貿易協定(第三国への技術流出防止)を結ぶべきでしょうね。
 さて10月下旬にはまた小生の単行本が出るでしょう。しかしその前に皆さんは『「自衛隊」無人化計画』を熟読して欲しい。これは惨憺たる経済状態に陥った日本社会の暗い趨勢を根本から逆転して明るくすることのできる福祉のマニフェストなのですから。