米国内の議論が『「自衛隊」無人化計画』に追いついてきたようです。

 『ナショナル・ディフェンス』2009-11月号にStew Magnuson 氏が寄稿している「Debate Over Legality of Robots on the Battlefield 」という記事。
 ロボット兵器の意思決定ループの中に人間を介在させないことになるとどうなるか? ――を考えて本にした人がいるらしい。それは Peter W. Singer氏で、『Wired for War: The Robotics Revolution and Conflict in the 21st Century』というらしい。
 ※この本を買って読んだよ、という御奇特な方、いらっしゃいましたら、どうか兵頭にその読み古し本をめぐんでやってください。送り先はJSEEO事務局でお願いします(キリッ!)。
 国防長官の官房が、無人兵器ロードマップとかいう文書をつくったそうだ。「Fiscal Year 2009-2034 Unmanned Systems Integrated Roadmap」というそうだ。
 そしてこの文書の中では、無人機が勝手に攻撃判断をしてミサイルを発射するようなことはさせない、としてあるという。
 また、DODのロボット化努力は次の四分野だという。
一、 偵察・観測
二、 目標識別と標定
三、 対地雷およびIEDの処分
四、 化学兵器、生物兵器、放射能兵器、核兵器の探知。
 注目すべきは、「武装ロボット」をリストに入れていないこと。いちおう、次の三つの武装無人機計画には言及されているんだけどね。すなわち、「 Predator」「 Reaper」「 Extended Range/Multi-purpose unmanned aerial system」。
 3年前、米陸軍は、武装陸上ロボット×3台をイラクに投入せんとしたことがあったんじゃ。「special weapons observation remote reconnaissance direct action systems」(SWORDS)という名でな。※先にアブリビエーション考えてからテキトーにコジつけたのがコテコテすぎるネーミングやね。
 しかし陸軍の上層はこんなロボットを信任しなかった。土嚢 sandbags の後ろにずっと置いたまま。それが一回でも発砲したことがあったかどうか、不明である。※写真が分からないが、たぶん『エイリアン2』に出てきたセントリーみたいなもん?
 1949のジュネーヴ協約が、ロボット兵器を使う者にも適用されるだろう。
 戦闘ロボットを配備することに、人間の司令官は、責任を取らねばならない。たとえば民間人や味方を誤射したとき。
 軍人ではない、民間の契約者にUAVの空襲など操作させてはならぬはずだ。彼らは国際公法で保護されないだろう。UAVの運用には明白な chain of command が確立されていなければならない。
 たとえばいま、パキスタン領に対する越境無人機空爆は、CIAによって遂行されている。タリバンとアルカイダのリーダーを抹殺するために。
 つまりプレデターとリーパーのパキ内での殺害は、ほとんどのケースで、非軍人が行なっているのだ。これって、許されるのか? 米議会は一度も論じていないが……。
 ※数日前のどこかの記事で、アフガンの米陸軍では一等兵とメーカーの社員がサイドバイサイドに座ってUAVを操作しているとかいう報道があったっけな。あれもかなりヤバいでしょ。
 Ron Arkinは『Governing Lethal Behavior in Autonomous Robots』という本を書いた。
 「道徳リミッター」(ethical governor)を軍用ロボットには装置すべきだ、とロン・アーキンは主張する。
 ※その「解除ボタン」を押すと、違反やり放題になったりしてね。あるいは、「神戦士」>「聖人戦士」>「順良戦士」>「忠勇戦士」>「卑劣戦士」>「ケダモノ」>「外道」>「腐れド外道」とか、数段階に設定できるとか。まあ、「腐れド外道」モードだと、味方も危なくなるだろうけどね。
 シンガーは言う。人間の指揮官から射てと命じられても、ROEに反するときはロボットは交戦を拒否する、そんな回路を組みこむべきだと。
 これへの予測される反論。敵ゲリラは、米兵が撃つことを禁じられているROEをみきわめて、そのROEに乗じようとする。ロボットに変な倫理ガヴァナー回路を組み込めば、同じ弱点が生じ、つけこまれることになる、と。
 ダンラップの皮肉。もしすべての戦時国際法を軍用ロボットのコンピュータに入力したら、アルゴリズムはフリーズに陥るしかないだろう、と。なぜなら、戦時国際法には、あいまい部分がたくさん残されているからだ。つまり戦争は永遠にArtの段階にとどまるしかない、ということなんだ。
 兵頭いわく。ありがとうマグヌソン記者! この記事のおかげで、オレが今書いている本は、米軍事界の最先端の話題のさらに一歩先に達しているということに確信が持てたよ!
 オマケとして、今日の脱力ニュース。
 APの David Dishneau記者による「Marine to plead guilty in fake heroism case」という記事。
 ルイジアナ出身の34歳の海兵隊軍曹が軍法会議にかけられ、悪くすれば31年間のムショ暮らしが待っているという。
 米国には美しい慣行がある。複数の市民団体が、国家のために負傷した傷病兵を、コンサートや劇などに無料で招待してやるのだ。軍曹は、その特権を欲した。
 2008年中、軍曹は、33のイベントを無料で楽しんだ。その中には、6回のロックコンサート、2回のナ・リーグ野球試合、ワシントンレッドスキンズのアメフト試合、WWEのプロレス、「Monday Night Raw」ショーも含まれていた。
 また、ある純真な少年たちの集りの場では、「アフガンさ。手製の爆弾が転がってきたんだ。オレは分隊の仲間たちを庇わなくちゃと思った。気づいたら、身を挺して楯となっていたよ。その爆発で負傷したのさ」などともフカしまくっていた。その他、営外において創作した作り話、手柄話は数知れず。
 それが、ついに部隊にバレちまった。
 この軍曹は2000~2006までは沖縄で通信兵だったし、それ以後はクァンティコに居ただけであった。
 いいキャラしてますわ。絶対にそうは見えない顔つきだったら、笑えるんですけどね。
▼「兵頭二十八 大阪講演会」 ※こんどは地球温暖化と国防の関係を話すよ。面白いので全員集合!
■日 時:平成21年11月23日(月・祝)
午後2時半 開会(午後2時 受付開始)
■場 所:エル・おおさか 大会議室(6F)
大阪市中央区北浜東3-14 TEL06-6942-0001
■参加費:2,000円
■申込み:先着200名で、事前お申し込みとなります。
 JSEEOの「ホームページ」より、直接お申し込みください。
 また、住所、氏名、TEL、FAX、参加人数と「11/23講演会参加」をご明記の上、FAX、Eメールまたはハガキでもお申し込みいただけます。
■申込先:日本安全保障倫理啓発機構(JSEEO) 設立準備室
     〒176-0006 東京都練馬区栄町36-10-202
     FAX03-3557-1651
     Eメール inquiry@jseeo.com
     URL  http://www.jseeo.com