いつになったら「燃えないペンキ」をつくるんだ?

 この週末は品川周辺に屯ろしていますので、御用の方は、都内ででもお目にかかりましょう。
 さて、以前に愛読していた、どなたかの、内航船のブログ(これは写真が素晴らしかった)で、〈韓国貨物船は絶対に針路を譲らない〉、とか書いてあったのを記憶します。そんなんで事故は起きぬのかと思っていたら、やっぱり起きましたかい。
 しかし、旧海軍の三保関事件の艦首切断のときだって、「炎上」はしていないはずだ(ただいま書籍を取り寄せて確認する前段階)。今回、ぜんたいなにゆえに火災が……?
 それに、旧海軍は、ミッドウェーの直後だか、かなり後だかの、負けがこんできた段階で、艦内の塗料をぜんぶ、掻き落としたんじゃなかったっけ? 燃えるものは塗料といえどもダメなのだという、大反省をしたのじゃなかったか? それともあれは米海軍だった?
 この反省の足りない海軍は、いまだに、艦内に木製備品をたくさんしつらえてある――とかの話もどこかで読んだ覚えがあります。
 また、フォークランド紛争のあと、燃えない水性塗料が研究されたとかいう報道も読んだような気がします。
 それが普及しない理由は、「高価だから」と聞いた。そんなの理由になるかよ? 戦争するんだぜ、軍艦は。
 安い不燃ペイントや、それを見苦しく見せずに仕上げる吹き付けロボットを工夫する時間は、いままでに十分にあった。それができていないのは、関係者が怠けていたのだ。
 次。アジアンディフェンスの2009-10-29付、ERIC SCHMITT氏の記事「U.S. Speeds Aid to Pakistan to Fight Taliban」。
  10機の Mi-17 兵員輸送ヘリ、攻撃ヘリのコブラ、暗視ゴーグル、ボディアーマー、ゲリラの携帯電話を探知盗聴する装置などが、米国からパキスタンにどしどし送られている。
 〔なぜ米国製の中古輸送ヘリじゃいけないのかよくわからないんだが、〕わざわざロシア製のミルを米軍がリースしてやる。6月にすでに4機が渡されているという。
 さらにUAVの画像情報をパキ軍に提供してやる。パキ軍のスペックダウン型のF-16のための少々マトモな爆撃照準装置も供給するらしい。
 8月いらい、パキの軍・警察の訓練のため150人の米人がパキ入りしている。ただしその米人は戦闘には加入しない。※オイオイ、ジョンソン政権時代のベトナム向け「軍事アドバイザー」の復活かよ!
 ただし米国は、無人のプレデターと、有人のアパッチヘリの、対パキ軍供与は、求められながら、拒んでいる。
 米のパキ支援は巨額だ。2001-9-11いらい、およそ $12 billion にもなっている。
 ペンタゴンは毎年 $1 billion も、パキ政府の兵力展開経費を補填してやっている。そのカネで10万のパキスタン政府軍兵士が、アフガン国境に展開されているのだ。
 2009だけでも、ペンタゴンは $500 million 以上を、パキに対する武器や対テロ訓練支援のために使った。
 そのうち $13 million 近くは、携帯電話の電波盗聴装置である。
 7月、ペンタゴンはパキスタンに、 200 個の暗視ゴーグル、100個の昼夜兼用スコープ、 600 個以上の無線機、 9,475 着のボディアーマーを補給した。
 パキ将校を米国に招いて対テロの学習をさせるプログラムも強化中、ですと。
 これに関連して面白い記事が、NYT電子版 の Op-Ed にロシア人の VICTOR SEBESTYEN氏が2009-10-28付で載せている記事「Transcripts of Defeat」です。ヒマがないため抄訳しませんけど、いま米軍はアフガンのソ連軍と同じことを反復しているんだぞ、という警告です。
 なるほど、ソ連軍は9年目でやっとこさ面目を保ちつつ撤収したが、それはソ連圏崩壊に直結してしまった。あと1年で米軍は旧ソ連軍に並んでしまうかもしれないのですなぁ。アメリカ帝国の崩壊がそれに続くのかどうかという瀬戸際なのかもしれませんぜ。
 ……で、それについての兵頭のまったく異なった提案は、月刊『正論』12月号(11/1が日曜ですので、たぶん10/31には出る)のクロスラインに載る予定ですから、本屋で立ち読みしてみてください。
 いまの米論壇は、アフガン問題を語るのに、60年代のベトナムの事例を持ち出すか、80年代のソ連のアフガン経験をもちだすかの、2種類のパターンしかありません。軍事と政治の両方に強い、錚々たる執筆陣が、おしなべてそのパターンです。
 〈おまえらアタマがカタくなってるんじゃないのか、そうじゃないだろう〉と、史論の見本を見せようというのが、兵頭の『正論』記事です。日本語でしか書けないのが残念です。