今朝の雑報集

 APのKimberly Hefling記者による2009-11-4付記事「Shinseki promises help for homeless veterans」。
 退役軍人庁のシンセキ大将が、5年以内に退役軍人のホームレスをゼロにすると演説。
 現在、全米で13万人の退役軍人がホームレスである。ただし6年前の19万5000人よりは減った。しかし米経済が悪化しているので、これから5年で15%増える懸念がある。
 ホームレス男のうち1/3、ホームレス成人男女のうち1/5は軍歴がある。
 全ホームレスのうち3%がイラクとアフガンからの帰還兵である。
 次。米海軍のエロ医師が告発された。
 Erik Slavin記者による星条旗新聞2009-11-6付「Navy doctor accused of assaulting patients in Japan, Kuwait」。
 厚木やクウェートで診察中にすくなくとも15件のおさわり行為をやらかしたとして海軍軍医少佐 Lt. Cmdr. Anthony Velasquez が訴追される。
 軍法会議にかけるかどうかは横須賀の Rear Adm. Richard Wren が、これから決める。
 被害者は二等水兵から中佐にわたる。軍人の妻や、民間契約者も。厚木では2件。
 膝痛、首痛などで受診したところ、へんなところを検査されたり、性的に興奮するようなマッサージをされたとかいう申立て。
 いちおう弁護側の主張。それでも何人かの告発者は、ヴェラスケス軍医から不快な目に遭ったあともなお、ヴェラスケスに会っているではないか。
 これにはむろん反論あり。
 ちなみに米軍の医療機関では、異性の医療者が検査を実施する際には、受診者は第三者の立会いを求める権利がある。それによって医師も濫訴から守られる。しかしこの立会人がほとんど無気力・無関心で役立たずなので、頼まない患者もいるのだ。
 次。アフガンへ行くと背骨を折るぜという記事。
 Gregg Zoroya記者が『USA Today』に2009-11-4に載せた「Spinal injuries up among troops――Sturdy vehicles vulnerable to Afghan roadside bombs」。
 アフガンでは火薬たっぷりのIEDで最新の14トンの耐爆車両MRAPでも数フィートも宙に飛ばされる。このため背骨を傷める米兵が過去5ヶ月で100人以上。ひどいのは背骨を折っている。すくなくも14人は麻痺や感覚喪失の後遺症が残った。
 イラクではこのような症例はゼロであった。
 MRAPは3500両アフガンにあり。
 10月に、軽量タイプの all-terrain MRAP がアフガンに到着し始めた。これは背骨防護のためにシートやハーネスを工夫している。
 兵頭いわく。以前に舞鶴で見学した海自の高速ミサイル艇が特殊なダンパー付きのシートとハーネスを装備していたが、アレみたいなもんか? 元海自の魚雷艇乗りOBに余市でインタビューしたこともあるけど、みんな背骨をやられるみたいだね。ケネディもそれで背骨を悪くしていたのではないか。
 関連して、MILTECH の記事。こっちでは細部が異なる。
 Christophe Schmidt記者の2009-11-4付「Pentagon Touts New, Lighter Vehicle For Afghanistan」。
 新型の耐地雷車は11-4時点で41両到着している。計画ではこれを2010までに5000両調達する。
 軍がウィスコンシン州の Oshkosh Corporation に発注したのが6月。
 そして最初の車両がアフガンに届いたのは9月だ。
 旧来の M-RAP は自重が18143 kgほどあった。新 M-ATV は 25,000 pounds で、しかも独立懸架方式。〔旧MRAPはリジッドサスで旋回半径もでかくてダメだった。〕
 新車両は単価が 1.4 million dollars である。ガナー含めて5人乗り。ハンドルの軽さはもうSUV感覚。
 新 M-ATVの燃費は、 リッターあたり1.7kmだ。燃料槽の容量は 40 gallons 以上。
 アフガンでは、IEDによって、米軍と西側同盟軍将兵が、1~9月だけでも236人殺されている。
 次。
 Michael Abrashoff 退役大佐が2002に書いた『即戦力の人心術』に、こんな記述がある。「〔USS Benfold=DDG-65が中東海域に出動していた湾岸戦争の〕当時、米軍は自分たちの人件費を、じつにさまざまな方法で使用していた。空軍は生活の質に重点を置き、人々は美しい住宅、巨大な基地、すぐれた医療を手に入れていた。陸軍と海軍は、それとはほとんど正反対の態度を取っていた」(吉越浩一郎氏訳、p.176)。
 この事情は、今でもあまり変わらないのだろう。それで嘉手納の米空軍グループとしては、海軍や海兵隊の連中が、じぶんたちの空軍予算とマンパワーで整備されている極上の福利厚生娯楽施設を共同利用することになる「基地統合案」には、とても我慢ができないのだろう。だがそれは日本とアジアの平和と安全には何の関係もない話だ。もちろん「軍事上の理由」でできないなどという米側の反論は日本人を舐めた嘘にすぎない。米支間に「日支韓間の最低レベル均衡構想」および「東京の核の傘は剥ぎ取るかわりにシナは核ミサイルを実質増強しない」という密約もある以上、海兵隊がシナ軍と将来戦闘する可能性などゼロであろう。海兵隊は、ただ日本の納税者から流れ込む多額のカネが惜しいだけなのだ。卑しいカネの亡者たちなのだ。米空軍も、手前たちの福利厚生環境の維持しか念頭に無い。日本のダラ公務員とおんなじじゃないか。
 「日支韓間の最低レベル均衡構想」の帰結として、空自のF-15は、「より劣った性能の飛行機で代置させる」という約束が、米支間ではできているだろう。だったら防衛省も無理をする必要はない。F-35を焦って求める必要など無い。旧式のF-16を米国からリースして使うだけでも充分だろう。ソ連と領空を接するノルウェー空軍は、F-16でずっとやってきた。
 そこで以下の記事も見よ。
 Gerard O’Dwyer記者による2009-11-3付「Proposed Base Relocation May Boost Norway’s JSF Costs」。
 ノルウェー空軍は、北部の主力基地を町から少し遠ざけたい。というのもF-35の離陸時の騒音はF-16と比較してものすごくデカいからだ。
 あらたに、3394mの滑走路を、一部埋め立てして海寄りに新設し、町からは遠ざける。
 一説に、F-35がアフターバーナーを使って緊急発進すると、F-16の4倍もうるさい。
 反論もある。オランダの研究機関が3月に調べたところでは、F-35 と F-16の離陸時騒音には、5デシベルの差しかない、と。
 F-35がアフターバーナーを使わずにミリタリーパワーだけで離陸するときのノイズは 110dB である。これに比してオランダ空軍のF-16は、ミリタリーパワーなら104~107デシベル。アフターバーナーを吹かすと 111~114デシベルだという。
 兵頭いわく。空自がどうしてもF-35を導入したいのなら、赤字の地方空港を活かすことも考えないといけなくなるだろうね。UAV研究用にも、ひとつかふたつ、確保しましょうよ。