Unmanned Firepower!?

 はじめに訂正とお詫び。先回の抄訳で出血熱の症状の一つを「目の乾き」だと書いたのは「目の激痛」の誤りです! それから、出血熱の症状で外見的にわかるものは、出血であるということも書き漏らしていました。スイマセン。
 テキサスの陸軍基地フォート・フッドで起きた、2丁拳銃による多数殺傷事件については、あらゆる在米リポーターが喰いついているので、最良の記事はどれか、なんて読み比べてみる根気も起きない。とりあえず、APの記者Allen G. Breed と Jeff Carlton 両氏が2009-11-7付で載せている「Soldiers say carnage【大虐殺】 could have been worse」という記事から、教訓を汲んでみる。
 この記事の段階では死者13人。怪我人30人。※あの韓国人を抜いたわけだ。
 犯人は米国生まれのイスラム教徒で39歳の精神科の軍医少佐【Army psychiatrist Maj.】 Nidal Malik Hasan で、まさにアフガンへの派遣を前にしていたが、それまでにアフガン帰還兵からの恐ろしい話を治療室でさんざん聞かされていた。※ジェンキンズ逃亡兵と同じか。
 IEDというやつは、精神疾患も引き起こすらしい。たとえば、基地の事件現場近くに居た、ジャマイカ生まれの31歳の軍曹も、イラクで路傍爆弾の爆風を浴びていらい、持続性トラウマ脳障害と、トラウマ後ストレス精神疾患に悩まされ、いまだに通院中なのだと。
 ※それじゃベトナム戦争中にB-52の1000ポンド爆弾の絨毯爆撃の爆風を浴びた農村住民たちはどうなるのよ? 地下壕の中にいても衝撃波が伝わってきて着衣が瞬時にボロボロになって全部飛び散って丸裸になったという、〈リアル・ケンシロウ〉エフェクトが観察されたぐらいだったというのに……。
 ※ちなみに米国の軍隊関係記事では、インタビュイーの出身の州がどこかということが意味深い。アラバマ出身の軍曹と聞けば読者は無学だが不真面目ではない貧乏白人の南部訛りの語りを思い浮かべるし、ジャメイカ出身と聞けばレゲニーチャンの発音が脳内再生されてくるでしょう。だから記者は(容疑者ではない)証言者の出身地の紹介も、省略しません。Yes! アメリカではこのような形で出身地や所属階層に関しての「信用度」の偏見は追認されているのです。
 犯人の武器は、1丁がセミオートマチック(装弾数20発)、1丁がリボルバー。※この記事では銃の商品名は不明。
 300名の丸腰の兵隊が、一部屋にギュウ詰めされていたところを襲った。※故に、あの韓国人のときよりも、殺傷の仕事率が高くなったようだ。
 犯人を仕留めた〔射殺ではない〕のは、身長わずか5フィート強の女警官 Police Sgt. Kimberly Munley だ。※ヒラ巡査ではなく警部補。
 警官マンリーは高等射撃教官であり、この基地でテロなどの非常事態が起きたときの「 special reaction team 」の「civilian member」に登録されていた。だから3分で現場にかけつけた。
 2007-4のヴァージニア工科大での乱射事件のあと、彼女は「active shooter」特訓を受けていた。それで彼女は、応援を待つことなく、即座に犯人に向かって行った。
 女警官は犯人と撃ちあいになり、3発撃たれた。左脚に2発(どちらも盲貫)、右手首に1発。しかしハサンには4発を命中させて倒した。
 すべては10秒以内のできごとだった。
 ※これは女ダイハードの映画化決定かもしれませんね。新しいヒロイン像の誕生です。
 ※日本の警察エリートはアメリカ留学組ですから、この教訓はすぐに日本にも反映されるでしょう。持兇器現行犯に遭遇した警察官諸君は、その方針を先取りしてもよさそうですね。
 ※戦前の日本軍将校も、「機動中に敵と不期遭遇してしまったらば、躊躇せず、とにかく突撃しろ」と教えられていました。それがアンブッシュかどうかなど考えていないで、敵に精神的な重圧をかければ、活路がひらけるかもしれない、というわけです。ためらっていれば、敵が精神的アドバンテージをとってしまって、こっちが壊滅する。野生の熊にインプットされているプログラムも同じです。熊(成獣)は、至近距離で急に驚かされたときには、脊椎反射で必ず攻撃します。それが猟師なのか老人ハイカーなのかは選ぶところではない。即時反撃によってイニシアチブをとりかえしてサーバイヴできる確率が、熊の場合は、高いからでしょう。もし300人の丸腰の兵隊たちが、逃げないで逆に一斉に殺到したなら、13人死ぬ前に犯人を制圧できたのではないでしょうか。
 兵頭いわく。最良のファイアパワーは、敵の精神に働きかける。