「アフガン後」の米軍はおそろしく進化してしまうだろう

 Sandra I. Erwin 氏の2009-11付記事「Army’s Equipment Choices Shaped by Afghanistan War 」。
 アフガン用の新迷彩を考えている。特殊部隊用と一般部隊用。
 イラクでは、IEDの破片防禦のボディアーマーが必要だった。しかしアフガンでは破片対策は無用。〔なぜなら車両の下で爆発するし、材料は152ミリ砲弾ではなく硝安農薬だから。〕よってボディアーマーは軽くする。
 陸軍は、特殊部隊の調達に便乗して、 射程800mの MK48 assault 7.62mm machine gunsを買うことに決めた。
 〔つまり、M4カービンとミニミLMGの5.56mmコンビではダメだという結論が、アフガンで出つつある。なんてこった! どうするゴルゴ?〕
 新しい7.62ミリLMGは、重さがたったの 18.5 pounds しかない。
 これに対して陸軍現用の分隊軽機たる M240Bは、重さが 27.5 poundsだ。
 ふつうの歩兵旅団には159梃のミニミがある。
 これを 150 梃の MK48 に交換してしまう。高地・山岳の射撃では、こっちの方が有利なのだ。とりあえず現地の3個旅団で実施する。
 ミニミを軽量化する試みもある。名付けて M240L という。
 これは中央部分を鉄ではなくチタン合金にすることで、重さを 22.5 ポンドに減らす。さらに短小バレルとすれば 20.5 pounds にまで減らせる。それでも1800mまで正確に射撃可能だ。早くも今月末にはアフガンに最初の50梃が持ち込まれる予定。
 200人のタリバン兵にあやうく全滅させられそうになった、2008-6の Wanat 砦の大苦戦で、米陸軍はM4カービンに見切りをつけた。あそこで敵を撃退できたのは砲兵と航空支援のおかげであり、5.56mmは効かなかった。
 兵頭いわく。じつはちょっと前に英国大衆紙の『SUN』で、在アフガンの英兵の5.56mm小銃ではマリファナでラリってるアフガン兵をワンヒットキルできないという苦情が多いから英軍の小銃は増口径化すべきだ――という意見記事があったのですが、そんなのはガセだと思い、わたしはここで紹介しませんでした。しかし、あれは正しかったのか!
 米陸軍は、M4を、ヘビーバレルでフルオートありにするかどうかも検討中。
 兵頭いわく。いっそ、7.62mmのAR-10に先祖返りさせたら如何? さもなきゃM-14のストック復活とか? いや、まてよ……M14改というべき、わが「六四式小銃」こそ、アフガンの米兵たちにとっての救世主となるんじゃね??? すぐにドラム・マガジンを新設計して供給してやれ!
 ちなみに米陸軍は本国および世界中に全部で110万人おり、M4小銃は40万梃支給されている、という。
 兵頭いわく。支那事変で日本は大陸に100万人を送り込んだが、「点と線」しか確保できなかったことは覚えておこう。
 あと、チヌークとブラックホークのパイロット用には、新型の、重さたった 5 poundsの酸素吸入器を支給する。これは高度に応じて酸素供給量が自動調節されるスグレモノで3時間もつ。今までの酸素吸入器だと、高度1万フィート以上の飛行はできなかった。
 兵頭いわく。
 ロボットに勝手にMGを撃たせるSF映画(エイリアン2)の「セントリー」型のスタンドアロン無人兵器は、ROEを満たせないので、倫理上、配備できなかったわけです。
 しかし、銃側の歩兵が双眼鏡に組み込まれたレーザースポッターで敵兵をなんとなく照射してやり、ロボットがその反射源の赤外線イメージをロックして、あとは自動で交戦するという仕組みにすれば、砦の防戦には使えるではないか。もちろんアジマスは三脚の螺子で規制できるし……。その火器を.45ピストル弾のガトリング方式にすれば、跳弾被害やコラテラルの危険もたかがしれていようし、ストッピングパワーもあるだろう。
 あと、開発されると便利なのは、味方のすぐ近くに落としても、味方の方には絶対に破片が飛んでこない、超近接支援可能な迫撃砲弾。要するにクレイモアを砲弾形にするものだと思えばいい。制動フィン付きの砲弾の側面にレーザー反射を拾うセンサーをしつらえ、その反対面にはコード状の起爆薬。砲弾がどこに落ちようとも、最前線の兵隊がレーザーでスポッティングしている方向にだけ、扇状に破片が飛ぶ。もちろん空中爆発モードで、真下も安全。弾殻はもちろんスチールではなく、新素材。
 こんな迫撃砲弾なら、ビルの中層階にたてこもるゲリラに対しても使えるだろう。(いままでの迫撃砲は鉄筋ビル内の敵にはほぼ無効。しかもコラテラルありまくりだ。)また、あやしい貨物船の甲板員やブリッジを真横から爆風で制圧して、船体は沈めずに捕獲することも可能になるだろう。
 次。
 二つの記事が、米国のベンチャー界がいよいよDARPAと一緒になって「無人自動車用ソフトウェア」でまきかえし、日本の自動車産業を大逆転して敗滅させるかもしれぬ未来を告げているぞ。
 Kris Osborn氏の2009-11-8付「New robots do jobs with little human direction」と、Grace V. Jean氏の2009-11付「Robotic Humvees Resupply Troops Downrange」を見るべし。
 とうとう米陸軍は、今から18ヵ月以内に、有人トラックに自動でついてくる無人輸送トラックや、コンヴォイの先頭を無人で走るハンヴィーをアフガンに投入すると宣言した。
 米軍は、全自動で前線へ糧食、水、電池などを補給し、かつ、負傷者を後送してくれるロボット自動車をもとめていた。それに応ずるベンチャー企業がすでに複数ある。というのはそうした補給車がIEDの狙い目だからだ。
 某ベンチャーは、ハンビーにコンピュータと「視覚」を持たせて山道を自走させるというデモを海兵隊演習で実施した。
 これには単独で先頭を走るリーディング・タイプと、その先頭車両に自動的に追随するフォロウィング・タイプとが用意されている。
 コンヴォイの後尾車両に人間のオペレーターが乗り、無人車を先行させるというシステムも研究中。
 ハンビーに800ポンドの荷物を載せ、基地から8.5マイルの山道を自動で走り、また戻ってくるという実験もする。
 寝ている人間と木の枝を識別するセンサーも研究されている。
 クルマの屋根の上にセンサー・ボックス。その屋根裏にPCボックス。これでシステムをミニマム化したい。
 いまやロボット兵器にもコスト感覚が要求され出した。1台15万ドルの humvee を無人化するのに無制限にカネは払わない。
 これからは自動兵器もコストを問うていくからな――という。
 兵頭いわく。いよいよ日本の中小ベンチャーの出番じゃないですか?
 DARPAは、市街地でもトラックが自動で走れる、歩行者や信号を無視しないシステムに挑んでいる。たとえば、道路を渡ろうとしている歩行者を自動で予測するアルゴリズムを開発するというのだ。
 他には、飛行機の上から単眼鏡で特定の場所を覘きつつスイッチをいれると、そのGPS座標を当面の到達地として、無人車両が動き出す、というシステム。最適経路はその無人車両が勝手に考える。直視できる範囲の6マイル先まで、指定できるという。
 次。
 米軍はアフガンで業を煮やして化学兵器の採用に踏み切るだろうか?
 「Pentagon Wants Non-Lethal Weapons to Incapacitate Friendly Civilians」という記事を見ると、米軍は、化学兵器は非殺傷性であっても不可だとしている。しかし悪臭剤はアリなので、ひろく世界から募集するという。
 年末に硫化水素でも吸おうかと思っている全日本の中小企業のみなさん。日本政府を頼っていたらダメだ。アイディアや技術があるなら、米軍と直接商売しなさい。それには、シナではなく、米国に移転して活路をひらきなさい。