パラライズ考

 英軍のSA80小銃は、小口径ピストル【a peashooter】同然でしかなく、芥子でラリったアフガン・ゲリラは倒せぬ――という記事は「British bullets too small to fell ‘high’ Taliban」というタイトルでASIAN DEFENCEが紹介していました。
 たしかに5.56mm口径はインチ換算で0.223ですから、直径だけみたら .22口径の安ピストル同然とも言えなくはないでしょうが、拳銃弾が大概亜音速であるのに比し、現代のライフル弾は超音速です。
 超音速の小さなタマが生体を貫通すると衝撃波が筋肉中を伝播しますので、広範囲に瞬時に非統制的な「生体電流」が発生して、健康な成人男子も、能の意識はハッキリとしているのにもかかわらず、四肢の筋肉を制御できなくなり、崩れるようにその場に倒れてしまう――。これが、ジョージ・オーウェルのスペインでの被弾体験談を読んだ小生が勝手に推定していますところの高速ライフル弾の対人作用メカニズムなんでしょう。
 そしておそらく「テーザー銃」(スタンガン)は、この非統制的な神経電流を直接筋肉中に流し込んでやることで、大男を麻痺させてしまうメカニズムなんでしょう。
 阿片系の麻薬は、筋肉が衝撃波を喰らっても、非統制的な生体電流を発生させないという効果があるのかもしれません。(では、覚醒剤でラリっている犯人が、警察官の警棒で手首を痛打されても刃物を落とさないのはなぜか? おそらく交感神経が優勢になるので、傷みを覚えないのでしょう。ライフルやテーザー銃で撃った場合はどうなのか、過去のデータを見たいですね。)
 『SUN』の記者は、イラクとアフガンで50人以上の英兵にこっそりインタビューをして、5.56ミリはダメだという結論を得たそうです。
 もちろん5.56mmのライフル弾が体幹の深いところの動脈を切断すれば、そのゲリラはいずれ死ぬでしょう。肺以外の主要臓器を貫通した場合もほぼ同様です。だが『SUN』紙は、最初に当てた1発で即座にパラライズしてくれないことを、英兵の生命にとっての大問題としているのです。
 『SUN』紙によると、英兵が Helmand でアフガンゲリラと撃ち合ったケースのおよそ半分は、射距離が300m~900mであったそうです。
 これは、べらぼうに長いですね。もし自衛隊が派遣されるとしたら、訓練をやり直す必要があります。当然、64式小銃を敢えて携行させるべきでしょう。
 また、タリバンの狙撃手は旧式AK47の7.62mmを使っている、と。
 これに対してSA80が非力だということは、すでに2003のイラクで判明していた、と『SUN』紙はいいます。
 兵頭いわく。こうなったら、〈当たると電気を発生する弾丸〉を製造すべきかもしれませんね。それはハーグ条約違反とはなりますまい。