「読書余論」 2009年12月25日配信号 の 内容予告

▼鹿島守之助『日本外交史第13巻』S46
 ワシントン軍縮会議の太平洋域要塞規制をめぐる日本側の交渉理論武装の劣弱さに注目してみますた。
▼西澤英和『地震とマンション』2000-12 ちくま新書
 20キロトン級の原爆ならばRC建築で確実に防禦できるのだ。その実例を仔細に広島と長崎の直後の写真付きで例示している好企画。必読です。
▼監軍部『一馬曳二輪車試験行軍実施報告』M26
 名古屋と静岡の間を往復してみたら……。
▼『一馬曳二輪車試験行軍実施報告 写』偕行社記事第64号附録、M24
 蹄鉄も舗装道路もない時代の実験。
▼菊池実ed.『ソ・満国境 関東軍国境要塞遺跡群の研究』2001
 わたしは本書によって、旧陸軍がソ連の「T-35」をたいへんな脅威と視ていたことを悟りました。岩畔豪雄もきっとコレを意識してたんだね。でも多砲塔にすると、表面積がやたらに増えちまうので、自重の割には肝腎の全周装甲厚がガックリ減って、弱点だらけの大型鈍重戦車にしかならなかったはずです。ホッキョクグマみたいに凸凹のない体表にしないと、表面積を節約できない。
▼菅直人『大臣』1998-5 岩波新書
 明治いらい、閣議は金曜日と火曜日であることの意味について。官僚はそのシキタリを巧妙に利用し、マスコミはその意味を報じない。いやホント、新聞の「政治部」記者にだけはなっちゃダメだよ、大志ある男ならね。
▼Stewart L. Murray少佐著『クラウゼヴヰッツ戦争要論』1937tr.
 原題は“The Reality of War”,1914ロンドン刊。
▼大久保康雄tr.『クラウゼヴィッツの戦争論』S13
 英国のT・D・ピルチャー陸軍少将が抄訳した“War according to Clausewitz”を重訳したもの。
▼林克也『日本軍事技術史』1957
▼E.F.Calthrop著『SONSHI―― THE CHINESE MILITARY CLASSIC』M38三省堂pub.、原1905
▼アレキサンダー・マッケイ著、平岡緑tr.『トーマス・グラバー伝』1997
▼高橋邦太郎『お雇い外国人――軍事』
▼小山弘健『日本軍事工業の史的分析』
▼梅渓昇『日本近代化の諸相』
 海陸軍がいつから陸海軍になったのか。
▼『漢書刑法史』
▼ケナン&ゲイツケル(Gaitskell)『ヨーロッパの苦悩』(つゞき)
▼ルイス・デイエス・デルコラール『マキアベリとローマの政治』S53
▼ノルベルト・エリアス『文明化の過程』上下、原1969
▼和辻哲郎『日本精神史研究』イワブン1992
 道元が宋にわたったとき、寺でエロ談している坊主はひとりもいなかった。
▼ジョルジュ・カステラン著、西海太郎tr.『軍隊の歴史』1955、原1948
 ポリビオスいわく、ローマ軍はその43%だけがローマ人であった。
▼江島長左衛門為信ed.『太田道灌兵法秘書 三』天和2年臘月
▼相良亨『近世日本における儒教運動の系譜』S40
▼富山県警察山岳警備隊ed.『ピッケルを持ったお巡りさん』1985
 自然界の硫化水素ガスの「効能」はこの頃からよく知られていた。
▼入江隆『アーチェリー教室』1977
▼高柳憲昭『アーチェリー』S47
 じつは象もハントできるという話。怖すぎ。
▼坂口鎮雄『スリ』大3-3
▼小野賢一郎『神像』S17-7
 埴輪の話。
▼遠藤吉三郎『西洋中毒』大5-9
▼加藤美侖『是丈は心得おくべし』大8
 南画と北画の見分け方、など。
▼農商務省商工局ed.『清国出張復命書』M29-4
▼相生政夫『都市住宅の防空防火戦術』S18-3
 中庭付き一戸建ての「防空住宅」の提案が面白い。
▼広幡忠隆『海運夜話』S7-10
 WWIまで貨物船は石炭蒸気ピストンで9ノットと相場が決まっていた。ガダルカナル輸送船団が8ノットだったというから、商船史家の自画自賛とは裏腹に、如何に日本はディーゼル化で後れを取ったかがハッキリする。
▼シャールル・カミーユ・サン・サーンス著、馬場二郎tr.『音楽の十字街に立つ』1925、原1922
 蜘蛛は音楽を理解している、…だと?
▼兼常清佐『日本の言葉と唄の構造』S13-3
▼笠森伝繁『世界に於ける日本美術の位置』S10-7
 美術品はぎゃくに明治時代にぜんぶ流出させてしまった方がよかったのではないかという卓見。
▼板垣鷹穂『古典精神と造形文化』S17-12
▼田辺尚雄『家庭に必要な蓄音機の知識』大13
 むかしのSPレコードは落とすと割れたものだ。その製法等について。
▼上司小剣『蓄音機読本』S11-6
▼田沼征『財政学講和』S16-5
▼グンテル・ブリュッショー著、若林&広政tr.『青島を飛出して』大7-1
▼賀屋興宣・述、岡村信吉ed.『銃後の財政経済』S12-10
 非常時には円高の方が強いのだという話。資源小国の日本は、いわば常に非常時なのではなかろうか?
▼小野賢一郎『戦争と梅干』S16-3
▼帝国連合教育会『義務教育年限延長問題』大9-2
▼Antonio Uuclear著、曾我英雄tr.『戦争、テロ、拷問と国際法』1992、原1986
▼東海大学平和戦略研究所『テロリズム』1998
▼アイリーン・マクドナルド著、竹林卓tr.『テロリストと呼ばれた女たち』
▼(財)公共政策調査会『米国におけるNBCテロ対策』H11
▼(財)公共政策調査会『テロ・ゲリラ事件が社会に与える経済的損害についての調査研究』H6
 信号ケーブル破壊工作について手際よくまとめてある。
▼M.Merleau-Ponty著、森本和夫tr.『ヒューマニズムとテロル』S34
▼ウォルター・N・ラング著、落合信彦tr.『特殊部隊』原1987
▼公安調査庁『国際テロリズム要覧』2000
▼クリストファー・コーカー著、轡田隆史tr.『世界をおそうテロ活動』1987
▼野島嘉【日向】『国際テロリズムの研究』H1
▼高木正章『世界のテロ・ゲリラ』1889
▼ローラン・ジャカール著、黒木壽時tr.『国際テロ――組織・人脈と金脈』原1985
 自爆テロはいつから始まったか、振り返って確かめたい人に重宝。
▼Sjowall&Wahloo著、高見浩tr.『テロリスト』原1975
▼広井雄一『刀剣のみかた――技術と流派』S46
 いつから学問化したのかが分かる。
▼得能一男『入門 日本刀図鑑』1989
▼福永酔剣『日本刀名工伝』H8、原S33
 09-11-24に犬山城に行こうかと思ったが止めて、熱田神宮を拝観したんですよ。草薙剣を御神体とするだけあり、刀剣の寄進の多いところと聞いていました。宝物館の入り口に、ものすごい長さの大太刀が展示してありました。あれは3人がかりでも、振り回せないでしょうな。館内展示で興味深かったのは、孝明天皇の1853-11-23の綸旨です。その中に「神州不損人民國體安穏天下泰平」という表現が使われていた。「不滅」でなく「不損」ですわ。それから「宝祚悠久武運延長之御祈」という表現も。「武運長久」じゃないんですよね。それと室町時代の「軍扇」はオール鉄製ではなくてやっぱり鉄骨に紙を張ってあってちゃんと煽げるものであり、その代わりにものすごくでかいのだと知りました。かんぜん、余談です。
 しかし民活のセントレア空港は電車は遠いけど面白いとこだねぇ。飛行時間的には函館~羽田と大差ないんで気に入りました。比べて、関空はやっぱり「官製」ですわ……。だいたい函館から飛ぶのにいちいち岡山県まで迂回してアプローチしてるんじゃ、優に30分は燃料が無駄だっつの。若狭湾の原発を避けてるのかと思ったら、ありゃ騒音苦情対策なんだってね。だったら海兵隊の招致も無理無理。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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