日本は「無人機テスト艦」(という名の空母)をつくれ。

 アジアン・ディフェンスに転載されている、Nan Li and Christopher Weuve両氏による、『Naval War College Review』( Winter 2010, Vol. 63, No. 1)誌への寄稿論文「 CHINA’S AIRCRAFT CARRIER AMBITIONS」。
 以下、興味をもった部分のみ、摘録する。
 空母には4タイプがある。
 まず、米空母式は “catapult-assisted takeoff but arrested recovery” (CATOBAR) design である。
 次に、ロシアの Kuznetsov 級は、スキージャンプ式短距離発艦、そして拘束着艦である。
  STOBAR design のメリットは、スチーム・カタパルト用の水や燃料の貯蔵スペースを減らせること、スチーム・カタパルトのためのエネルギー分配が必要ないので、機関で発生したエネルギーを全部フネの高速航走のために注ぎ込めること、そして、カタパルト関係のシステム故障の心配をしなくて良いこと、である。
しかし、米軍のような重い飛行機は運用できない。
 このクラスの1艦である『Varyag』は、スチーム・タービンで32ノット出せるフネだったが、シナに売られたときにはその機関が外されていたという。
 次が、短距離発艦、垂直着艦。“short takeoff vertical landing” (STOVL)
 これを採用するのは、スペインの空母と、英国の new Queen Elizabeth級。発艦のためには高速で航走する必要あり。向かい風を得るため。
 最後の型が、“vertical takeoff and landing” (VTOL) である。スキージャンプ台は必要ないし、母艦が高速航走する必要もない。
 能力ある飛行機を発進させたくば、catapults と arrested recoveryも強化しなくてはならない。
 母艦が高速であるほど、また、フライトデッキが広いほど、能力を発揮できる。
 空母用カタパルト装置は巨大かつ重いので、船体建造のかなり早い段階で組みつけなければならない。
 シナはロシアから Ka-31 AEW helicopters を買うかもしれない。これは2~3時間滞空し、敵の水上艦を 150km で探知し、敵の巡航ミサイルを 100~150kmで探知してくれる。
 フランスのヘリコプターの模倣である Z-8 を改造する可能性もあろう。
 しかし米空母の固定翼機である E-2C は、水上艦なら741km 、航空機なら 556km、巡航ミサイルなら 270km で探知でき、しかも母艦から180~200km も離れたところで哨戒ができるのだ。これは対艦ミサイルの射程より遠い。
 An aircraft carrier is not a solo-deploying ship.
 特にASWをどうするつもりなのか、まったく謎である。
 単にシンボルにするもつりなのか?
 China attaches great symbolic value to a Chinese aircraft carrier as physical evidence of the nation’s coming of age as a great naval power.
 ――以上が摘録。
 以下、余談。
 この論文が触れていないことがある。シナはフランスからスチーム・カタパルトの技術を受け取ろうとしている。そのフランスのスチーム・カタパルトの技術は、アメリカのお古である。そしてアメリカがフランスにその技術を売ったときには、アメリカ空母はさらに強力なスチーム・カタパルト・システムを完成していたのだ。
 カタパルトの能力は、投射できる飛行機の重量さもさることながら、投射間隔の短さもモノを言う。カタパルトが高性能ならば、短い時間に多数の重い航空機を敵に向けて、ただちに指向させ得るのだ(しかも離陸のために燃料を浪費しないのでますます作戦オプションが広がる)。しかしカタパルトの作動間隔が長ければ、在空の機数をそろえるのに時間を消費してしまう。カタパルトを1回動かすためには、厖大な蒸気が必要である。スチーム発生能力が甚大でなければ、カタパルトの作動間隔を短くすることはできない。つまり、原子力動力としないかぎり、シナには米空母に太刀打ちのしようはないのだ。
 理論的結論は何か。シナは必ず核動力の空母を造って来るだろう。中共中央幹部は工学系、それも原発の話が得意な連中が多いのだ。どうしてそれを試みさせないことがあろうか?
 核動力のメリットは、電力発生にも余裕のあることである。スチーム・カタパルトの次に来るといわれているリニアモーター方式のカタパルトは、大電力を必要とする。空母を核動力にしないならば、将来、それを試してみることもできないのだ。
 ところで日本はシナにつきあって正規空母など造る必要はない。しかし核動力艦は必要である。なぜなら、イランが核武装すれば、中東の大動乱により、「石油1リットル1万円」時代が来る。JP-5なら、その2倍になるだろう。
 軍艦から無人機を飛ばすためには、「フライトデッキ」を最上甲板に設ける必要がない。低層甲板からいきなり、斜め上へ向けたシャフト内をリニアモーターその他のアシストで加速させて数十Gで発進させてしまえば良いからだ。
 しかも無人機には「飛行訓練」も必要ない。JP-4が1リットル1万円となろうとも、それは実戦のときだけ使うためにとっておけばいいのだ。飛行訓練時間の抑制による航空戦力の実質低下は、無人機に関しては、なくなるのだ。
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