人工衛星の「多機能」時代の終わり。

 Graham Warwick氏の2010-1-7付け「Darpa Pursues On-Orbit Networking」という記事。以下、例によって抜き書きとコメント(※)。
 DARPAが、人工衛星の「スウォーム」運用を企画中。LEO軌道の複数の衛星からなる群れが、信号処理、データ蓄積、通信リレー、航法を、分担/共有/協働する。
 たとえば1基の衛星の内臓する天測(地平線および顕著な星座の見える角度から自機の姿勢を認識する)機能が故障してしまったとき、隣の機がその機能を肩代わりしてやればよい。※つまり自機を隣から客観視せしめるということか。
 インターネット式の、パケット切り替えスイッチソフトをつくれば、各衛星が、リアルタイムで互いの機能を利用できるようになる。※その代わり各機は相互に見通し通信ができる位置関係に密集している必要があるだろうな。
 スウォーム構成グループの各衛星の間隔は、数キロメートルである。この間隔は厳密に揃えたり整列させる必要はない。ゆるい集合で、LEOをテキトーに周回していればよい。
 尤も、必ず、静止軌道の衛星とも、通信リンクをとっている必要はある。ただしそっちのリンクは対地リンクとは違い、Xバンドよりも低い周波数を使ってかまわない。
 ひとつの衛星に多機能を盛り込む時代は古い。単機能衛星をどしどし打ち上げて、軌道上で協働させればよいのだ。そうすれば各機能のアップデートも簡単になる。代替機をすぐ打ち上げればよいから。
 ※単機に対して多量の軌道維持用燃料を付与してやることもできるな。そしてさらに将来は、その余った燃料の相互融通も、自動ランデブーで可能になるじゃないか!
 デブリや敵のASATを回避するために我が衛星クラスターを散開させたり再密集させたりする、しかも互いに衝突させぬ技法を、これから完成せねばならない。
 ※「1発入魂」スタイルの日本の宇宙開発では、もう永久に追いつけなくなる。北海道東部の大樹町に新射場をつくったらどうだ? そしてまた、衛星相互で使われるシステムなら、飛行機相互でも使われますよ。
 目を醒ましたい人は、『もはやSFではない無人機とロボット兵器』および『「自衛隊」無人化計画』を買って読みましょう。あと、3月に出る1冊で〈将来戦場技術“三部作”〉が完結します。
 ところで古本を読んで目から鱗が落ちるという体験は滅多に味わえないものだが、昨年末に取り寄せた渡辺銕蔵氏著『反戦反共四十年』(S31)には久々にそれを味わったぜ! 今日ほとんど「ネオ皇道派」と堕しているネット右翼や転びサヨクがよく騒ぐ「コミンテルン」云々の前に、戦前の内務省が1930’sはじめからすっかりナチの間接侵略工作にやられてナチ・エージェント化していたのだ。ゾルゲはオットーという最兇ウィルスに便乗した「小者DNA」にすぎない。だったらGHQが内務省を目の仇にしたのは当たり前だろうね。明治日本は文字通りドイツによって滅ぼされたと言えます。
 渡辺銕蔵はドイツに留学した人だがWWI前のドイツの農業統計がぜんぶデタラメで英米統計の方が信用できたということを身を以って痛感して、早々と覚醒し、諸強国の実力を日本人に知らせる運動を戦中まで続けた人です。
 1939春に、イギリス指導部は、どうしてポーランドとルーマニアを、ドイツと戦争してでも絶対にナチに渡すことはできないと内外に言明しているのか? ガリシアとルーマニアには油田があったからです。スターリンは、イギリス人のこの考え方がよくわかっていたから、大胆にヒトラーに便乗してガリシアを占領してしまった。そのソ連に、イギリスは文句をつけず、ドイツにだけ、宣戦布告をした。
 ……と、こんな構図も、本書によって初めて認識することができましたわい。
 日本本土内に有望な油田がなかったということが、じつはどれほど明治以後の日本人にとって幸運だったのか、考え直さないといけません。