どの国でも最高に合理的な判断は暗闇で決められる。

 Bruce Mulliken 氏が Green Energy News に寄稿している2010-1-10付の「CARS: A LOVE AFFAIR LOST?」という記事。
 ――米国内を走る自動車の台数が2009には2%減少した。2020までには10%減るかもしれない。
 若い人が、その両親の世代ほどには自動車所有にこだわらなくなったためだ。ケータイ通信機器の方が面白いからだ。
 このさい、地域コミュニティは、電気式の低速(時速25マイル)自動車を増やそうじゃないか――。
 次。退役少将の ROBERT H. SCALES 氏による「A vehicle for modern times  What the next combat vehicle should look like」という記事。
 ――アフガンという新戦場で8年苦闘しているのに、その間に新しい車両としてはMine Resistant Armor Protected vehicle (MRAP)のみというのは情けない。だが、いよいよGCVが出来てきた。
 こいつはとても静かなので、深夜、ゲリラのアジトの門前まで、兵隊は乗車したまんまで乗り付けられるんだ。余計な火力や重装甲を考えず、兵員輸送に特化・限定してある。
 戦場調査の結果、戦闘中、歩兵は、自己体重の1/3までしか重量負担は持続できないことがはっきりした。つまり40ポンドが限度なのだ。ボディアーマーを着たらもうそれで限界に近い。
 そこに武器・弾薬・食糧・水〔加えて暗視装置と通信装置と12ボルトの電池〕を加えると、兵隊の体重の半分にもなっちまう。
 アフガンでは死傷者はすべて道路から500m以内で発生している。だから新車両はオフロードを時速70kmで動けなくてはいけない。粗末な橋も渡れなくてはいけない。
 将軍のための贅沢な無線環境など願うな。兵隊が隣の兵隊と無線で常につながっていること、これだけを考えろ。トウィッターの兵隊版をかなえろ――。
 次。Bryant Jordan氏が、イスラエルねたがよく紹介される(つまり事実上その宣伝機関の片棒担ぎかもしれない)Military.com に寄稿している2010-1-8付の「Arab Nation May be Going Nuclear」という記事。
 ――アラブ側(イラン以外)で核獲得の動きがある。
 どことは言わないが2007に施設を爆砕してやったシリアかもしれない。
 イスラエルが持っている核弾頭数は100~400発。
 サウジがパキスタンと商議中だ。買おうとしている。中距離弾道弾ごと――。
 そしてこの記事に対する読者のコメント欄が興味深い。〈そりゃいい。中東のすべての国家に核武装させて互いに確証自滅させろや。米軍とNATOはあんなとこからはサッサと撤収汁〉といったものが目立っています。偽らざる大衆の声でしょう。
 ところで「ユダヤ人は頭が良い」といわれるが、「国家イスラエル」の現状は、一つの「失敗国家」のサンプルではないのか。彼らも、まさかこんな陰気な未来が待っていようとは、予測はできなかったのだ。欧米の大都市で暮らしているユダヤ教徒は、国境外のゲリラが発射するロケット弾がいつ降ってくるか分からない、やたら重武装だが息抜きの暇もない今のイスラエルに移住したいとは、誰も思っていないだろう。武器製造が主な輸出産業で、米国の支援がなかったらとっくに財政的にも軍事的にも破綻しているに違いない、展望の開けぬ国となってしまった。
 次。アジアン・ディフェンスに2010-1-7付で掲載されている Jung Sung-ki 氏の「South Korea to Transfer UAV, Missile Technologies to UAE」という記事。
 ――EMP爆弾を韓国企業がUAEのためにつくってやる。
 そしてまた韓国はリビアにも無人機を売るつもりだが、地上管制システムはイスラエルから貰った技術だからこれは問題になる。
 韓国の射程1000kmの巡航ミサイルは2009から実戦配備されている――。
 他のニュースで、サウジとUAEが米国にC-17を買いたいと要求中だと報道されています。シーア派イランの核武装が迫る中、スンニ派の彼らは対抗してパキから核弾頭を買うための準備をしているのでしょうね。核弾頭が入手できない場合は、韓国その他からせめてその代わりになるような弾頭や巡航ミサイルを調達したいのでしょう。場合によってはC-17を爆撃任務に使うつもりでしょう。パキスタンがC-130でインドを核爆撃するつもりであったようにね。
 さーて今度はJSEEO設立大会の宣伝だ。
 イヌの行動は面白い。
 利用方法について熟知しているものは、独占しようとする。骨を地中に埋めたりしてね。
 独占や特権への欲望は、その個体を進化させる。だが、その集団や社会をサバイバルさせるかどうかは分からない。
 イヌは何万年もサバイバルしてきた。その秘訣は、独占欲とは別なビヘイビアにあったのかもしれない。
 イヌは、利用方法が分からない新奇な情報に接したとき、それを、己れだけの経験としてそのままに抱え込んだり、放置したりしないんだ。
 かならず、己れの体表の毛皮にそのニオイを擦りつけ、すぐに仲間の元へ走って行き、そのニオイ情報を仲間全員に伝示せんとするのだ。たとい、鎖でつながれていたとしても、この「擦りつけ」の本能は停止しない。
 これが社会集団動物の態度だ。
 人間は、自然状態でイヌが昔からやっていたことを、つい最近、ようやく、インターネットへのアップロードで実現できるようになった。
 戦前の日本の痛恨事は、海外情報のストレートな事実報道が、ナチのエージェント化した内務省の検閲によって、一般有権者から遮断されていたことだ。
 いま、われわれは、インターネットのおかげで、海外情報から遮断されていない。ありがたいことだ。意志さえあれば、海外でも有閑識字層でなくば読みはしないような高等解説や専門的ニュースに、わたしたちは直接にアクセスできる。
 それだけではない。それを、一文にもならぬのに抄訳して日本語でアップロードしてくれるイヌくんたちが増えている。彼らは、その新情報を、日本の非専門人たちに、日本語で紹介せずにいられないのだ。これは、正しいことであり、良いことである。
 左翼バイアスのかかった「紹介屋」も混じる。けれども、彼らは情報ソースを独占できない。
 翻訳が皮相的だったり、日本文が要領を得ていない人もいるだろう。だがおおぜいの目がそれを規正するだろう。
 つまり、若い元気なイヌが増えれば増えるほど、日本社会にはプラスだ。
 こうした人間の本能は、放っておいても止まるまい。できれば加速してやりたい。が、その仕事はシンクタンクなどよりもしろ、携帯会社かグーグル社が向いていよう。
 わたしは日本で「シンクタンク」と聞くとどうしても冷笑を禁じ得ない。海外事情のストレートな伝達さえ不自由な日本社会にまず必要なのは、「抄訳家」「旅行家」とインターネット(というバーチャル図書館)環境なのだ。「シンクタンク」などその先に考えたら良いことじゃないか。殊に軍事系に於いて然り。
 敵側の計算や調査の裏を掻くから侵略は成功する。とすれば、裏を掻かれないために必要なのは、計算や調査ではない。視野狭窄の、情報公開や情報共有を嫌う御役所を真似したシンクタンクのような組織ではない。
 そうではなく、同胞の誰も気がつかない盲点に気づく個人、これが一人でも二人でも、増え続けることが肝腎なのだ。その個人は、随意・随時に、気づいたことをバーチャル放送局で社会に警告し、さらにバーチャル図書館に永久にテキストをストアして、後年、いつでも誰でも検索すればアクセス可能な状態としておくことである。この警戒情報共有環境さえあれば、軍事系シンクタンクなど要らない。少なくとも日本ではずっと役に立ってくれるだろう。
 それでわたしは最初から「インターネット・ラジオをやる」と『正論』に書いている。これは個人が自宅では難しいので、仲間と場所とが必要なのだ。だからJSEEOの誘いに乗った。できるだけこれに労働時間の多くを投入できれば幸いだと思っている。
 しかしJSEEOの現事務局は、ラジオ事業にはほとんど関心がないようだ。ラジオ事業の娯楽に期待して喜捨をしてくださっている支援者の皆様には、じつに申し訳ない話だ。まるで「やるやる詐欺」になってしまうではないか。しょうがないのでわたしは、まったく別に仲間を探さねばならず、実験放送を始められそうなのはこの春以降になるだろう。
 ラジオ講演が可能ならば、生講演は必要ないわけである。わたしはそれこそが理想だと思う。マイクの前でテキストを読み上げれば、ヨリ正確さを期せる情報を、あちこちでウロ覚えで間違えながら話すくらい馬鹿々々しいことがあろうか? しかし生講演をやらないとすると入場料が入らずビジネスにならないと事務局では考えているのかもしれない。
 まあ、たとい同床異夢でも、組織には個人にできないことを実現するポテンシャルがあるだろう。そこが組織の面白いところじゃないか。2月6日の「シンポジウム」(って何ですか? ソクラテス/プラトンの饗宴と同じもの?)では、ラジオでは演出できない面白さをご期待ください。
 よく「私塾をつくって教えたらどうか」と言う人がいるが、それは「読書余論」ですでに100%実現しているものだ。これ以上の軍学塾などわたしには考えられません。わたしが「軍事系シンクタンク」を冷笑する理由が分からない人は、「読書余論」のどこに価値があるのかも分からないのだろう。それで構わない。人がある価値にいつ気づくかは、「予定」されているのだ、としか思えないので……。
▼「日本安全保障倫理啓発機構 設立記念シンポジウム」
  2010年2月6日(土曜日)13時30分 開会
   (受付開始は午後1時、終了予定は午後4時半)
     場所:星陵会館 2階/大ホール 
        東京都千代田区永田町2-16-2
        地下鉄の「永田町」駅6番出口から徒歩3分
  参加費:3000円。
  17時から、懇親会(星陵会館4階シーボニア)
  参加費:7000円。
 詳しくは、日本安全保障倫理啓発機構のホームページ(URLhttp://www.jseeo.com)でご確認ください。そこに「申込フォーム」もあります。
 FAX:03-3557-1651 でも受け付けています。