「かけ声」に実質が伴う米国の「脱石油」疾走っぷり。凄す。

 Christopher P. Cavas 記者が米海軍長官(文民)の Ray Mabus 氏にインタビューした2010-1-11付記事。
 メイバス氏は元海軍将校で、ミシシッピ州知事となり、サウジアラビア大使も勤めた。
 氏いわく。社会的に不安定な海外から化石燃料を輸入するのでは、アメリカの戦争遂行能力は阻害される。だから海軍は、「脱〈化石燃料〉」する。
 戦略的には、燃料の海外依存を減らすほど軍事行動は邪魔されない。
 戦術的には、その遠征軍部隊の所在において調達できる燃料で動けるようにするのがいちばん安上がりになる。特に海兵隊。
 2020までに、海軍の艦艇と飛行機は、化石燃料への依存度を半分にする。
 その途中の道程として、2016には、化石燃料を一滴も使わない空母部隊をつくりあげる。艦上機も、化石燃料を使わない。
 ※これは大胆だ。以前のハナシでは、バイオ燃料と化石燃料(フネ用にはF-76軽油、飛行機用にはJP-5灯油)を、「ブレンドする」のだということだったのに……。また「原油」といわずに「化石燃料」と言う以上、天然ガスの石油化や、オイルシェールにももう頼らないということだな。すごい宣言だが、じつは長官は本当はまじめにこの計画を考えておらず、それゆえに、うっかり失言したのかもしれない。本当は全艦の核動力化を狙っている可能性があります。記者もそこをしつこくつっこんでいる。
 米海軍と海兵隊の陸上業務用に全世界で5万両の非戦闘用車両が走り回っており、これは5年ごとに新車と更新しなければならない。その買い替え時に、エンジンの多燃料化、ハイブリッド化、電気化を推進して行き、いまから5年で、これら車両の化石燃料依存も半分に減らす。
 ※こういう話に興味のある人は『もはやSFではない無人機とロボット兵器』をお読みください。
 バイオ燃料には2つの壁がある。コストとインフラだ。しかし歴史は教えている。デマンドがあるなら、コストは結局下がるし、インフラも整うものなのだ。
 バイオ燃料には、セルロース原料のエタノール〔すなわちトウモロコシを無駄にしていませんよと強調したいのだろうが、スイッチグラスや廃材木だけで採算に乗るわけはない〕、および、海藻原料のものがある〔こちらはおそらくソラザイム社のプラント・プロジェクトのことを指しており、軽油にも灯油にも加工できるらしい。よって長官は「バイオディーゼル」という言葉は使わないのだろう〕。
 ※ここで言及されています「海藻」は、海草のホンダワラとは違います。海水中の微生物です。ホンダワラは、セルロース原料としてエタノールをつくろうとしたものです。エタノール路線は、ブッシュ(子)大統領時代の2008に挫折が確定しました。オバマ政権は、「バイオ軽油/バイオ灯油」路線にチェンジしたのです。それは、ガソリンエンジンしか製作のできない「ビッグ3」は、もう置き去りにして、米軍とともに未来へ進もうという意味でもあります。
 化石燃料にしても代替燃料にしても、1ガロン150ドルにもなっちまえば、原子力艦が欲しくなるだろう。現在の油価なら、『マキンアイランド』のようなハイブリッド省エネ艦で対応できる。
 対テロ戦争や小さな戦争のために、巨大空母が必要なのかという納税者の問いに対しては、グローバル・プレゼンスのために必要だと答える。海兵隊もだ。そして空母はフレキシブルなプラットフォームだから、非対称戦争にも使えるし、災害救助や人道支援にも役立つのだ。
 アフガンの上空には、空母から降りた海軍機もたくさん飛んでるんだ。
 ※こういう話に興味のある人は、次回作の『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』を是非お読みください。メトロポリタン・プレスから3月発売だそうです。わたしは、米海軍の本当の狙いは、全艦の核動力化だと思っています。
 それとカリフォルニアの地震で、停電が1日以上続いたという怖いニュースがありましたけど、「クライメイト・チェンジ」がホンモノなら、これは対岸の火事じゃありませんよ。もし、厳冬期の北海道で、地震や、かつてない豪雪や猛吹雪のために、停電が1日以上続くようなことになったら、どうなるでしょうか? 今じゃ、家庭のボイラーや石油ヒーターの99%は、電灯線に接続しないとまったく機能しないタイプになってしまっているでしょう。ガスレンジの無い世帯では、あるいは、凍死者が出かねません。
 熱電対によって起電してファンを回す、自家熱発電式回路を、メーカーは来シーズンまでに造るべきです。また、各家庭は、バックアップ用に、ファン式ではない石油ストーブを1個、備えるべきです。(ほんとうは火鉢と煉炭でも良いのだが、最近は、店頭じゃとても買い難いからな……。)
 次。barbara opall-rome記者による2010-1-11付記事「A Cannon ‘Stun Gun’  Israeli Device Harnesses Shock Waves for Homeland Defense」。
 農業機器メーカーが、畑の鳥脅し用の道具を考えていたら、連続衝撃派で人も殺せる兵器ができちまったぜ。
 LPガスや調理用ガスを空気と混ぜて、毎分60発~100発、爆発させる。そこで発生した衝撃波を指向する。1回の衝撃波の持続は300ミリセコンド。1秒で2000m先に届く。ただしその距離では人畜無害。
 25ドルで市販されている12kg入りのLPガス・ボンベによって、5000発の衝撃波を連続発生可能。
 5インチ口径の砲身だと、対人鎮圧用の有効射程は30~50m。
 口径を大きくすれば、射程は 70 ~ 100mに伸びる。
 問題は、10m以内では致命的な威力があること。
 30m以遠なら、人に後遺症は残らないという。
 この衝撃波は壁を廻りこむことができる。
 ※多言を費やしイスラエル商品を宣伝している記事ですが、けっきょく、対ライオットの実用には道が遠いということですね。「スタンガン」というタイトル中の文句は、真実を誤解させます。