いつのまにか「パキスタン戦争」が始まっていた……。

 アフガン東部のCIA基地で現地語の話せる対ゲリラのエキスパートと思われるCIA職員7人全員が「戦死」させられちまったという2009-12-30の自爆テロについては菅原出さんの日経BPのまとめがすばらしい。
 それに続いて、「やっぱりそうか」と思わされたのがCNN日本語版の2010-2-3報道:「米国の無人機攻撃、オバマ政権下で64回と激増 報告書」。
 あの基地ではUAVの管制もやっていたのだ! イラク&アフパック戦域のリーパー/プレデターを米国本土から操縦していますよ――なんてのは一種のディスインフメーションだった可能性がある。もちろんそれは可能であり実験もされているのだろうけど、パキスタン内のCIA作戦に関しては、違うのだ。
 想像するに、ビデオのストリーミングをやりとりするのに必要な衛星ブロードバンド回線が、もう足りなくなっちまってるのだと思う。これは「RMA」なる幻想について最初からオレが想像していたアキレス腱だ(沖縄の北鮮舟撃沈のとき海自のP-3Cが撮影した細密な画像データは、テープそのものを東京まで空輸した方が、数時間かけて電送するよりもけっきょく早かったことを思い出すとよい)。
 それでおそらくしょうがないのでグロホか何かを衛星代わりの空中データ中継機として飛ばしつつ、アフガン内の操縦室の隣部屋にCIAのエキスパート職員を置いて、諸々の有限の通信資源の節約を図っているのだと思う。そこでは爆殺の意思決定までもしていたのだろう。そうすれば「相談」や「指示」の無線電波を盗聴される惧れもないしね(イラクではUAV動画が敵にのぞきみされてしまっている。信号に暗号をかけているヒマがないのだ)。
 その拠点を自爆テロで狙われちまったんだろう。こんな危険があることはP.W.Singerも本の中で指摘していたっけな(ジンガーの懸念は、じっさいに操縦を担当するはずのUAVメーカーの民間契約社員の方がテロの前線に近く張り付いているので、いまやプロ将兵よりも命の危険が大じゃないかということ)。敵の勝ちだ。
 あまりにももののみごとに弱点を突かれたのでCIAも怒り狂ってリーパーによる報復猛爆撃中なんだろう。
 そしてワイヤード・コムのデンジャー・ルームに Noah Shachtman 記者が2010-2-3付けでアップデートしている「3 G.I.s Killed in Pakistan. Now Can We Start Treating This Like a Real War?」という記事の警告。
 パキスタン軍が敵ゲリラを掃討したはずの地域で米兵がIEDにかかって死んでいるという。
 CIAのUAVどころか、既に歩兵が入り込んでいたのだ。これは「軍事顧問」じゃないだろう。
 記事いわく。パキスタン国内での米兵の作戦はかつては秘密であり小規模だった。それが、米国民が知らぬ間にどんどん大きくなっている。
 兵頭いわく。これはベトナム戦争中にカンボジアやラオスへも米軍が乗り込んでいくようなものか。今後の興味は、シナがパキ(またはタリバン)を後方からどのくらい応援するか、だね。そうなれば第二のベトナム戦争だが、今回は米軍はインド軍を味方にすることができる。