廣宮さま、新刊頂戴しました。有り難う存じます。

 『さらば、デフレ不況』という新著(三橋氏とのご共著らしい)を本日拝領いたしました。御礼申し上げます。
 まだ目次だけのナナメ読みですが、廣宮さんの前著『国債を刷れ!』を既読の人には、目新しい衝撃的な内容ではなさようですね。
 この時期にせっかくこの主張をあらためて反復されるというのであれば、おふたかたには是非、池田信夫氏の主張が間違っているという反駁を当方のようなトーシローの前に明示してみせて欲しかったと思うのですけども、それがどこかにあるのかないのか即座にわかりませんのが、いささか遺憾であります。大衆は水掛け論合戦にどこまでも付き合う集中力をもっていないと思います。
 もうひとつ目に付いてしまった大不満。これは是非、一言せねばならない。「太陽光発電、風力発電、地熱発電等の普及促進」(p.179)などをやれば、それが将来の生産性や供給能力を高める投資になる――といった、なんとも中小企業的なスケールの小さい〈成長戦略〉を語るのは、もうナシにして欲しいと思いますねえ。オバマ大統領は、そんな中途半端な話をしてるんじゃありませんよ。
 では何が大国日本の根っからの成長戦略になるのか……という話は、不肖この兵頭が『「自衛隊」無人化計画』や『もはやSFではない無人機とロボット兵器』で既に述べています。また、代替エネルギーの何に目があって何に目がないかについても3月11日発売の拙著『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』でしつこく解説しますのでそれをご参照ください。いや、ご両所はご多忙なのでとてもそんなもの読んでられないというのは分かります。それこそまさに、現役の政治家が自著を読むだろうといかなる著者も期待してはならない理由なのですよ。
 これはもちろん自戒ですが、いそがしい現代人はとても万能人たり得ないので、おのれの無知な分野についてよくよく敏感でなければなりますまい。あの池田信夫氏だってときおりブログのなかで、ミリタリー研究家にはガックリくるような浅薄な戦史研究の本なんかを引いて得々としていらっしゃいますよね。それでは逆に権威が下がっちまうと指摘する経済学ファンが、まわりにはいないということでしょう。結句、じぶんで気付くしかないのです。著作はどんな人が読むかわかりません。どんなしょうもない読者も一分野に関しては著者以上の専門家のはずなのです。となると、類似のマネをじぶんで他の分野に関してやらかしていないかどうか、でき得るかぎり気を配るしかない。それがきっと、広い世間への文章の訴求力を増やすことにつながるのでしょう。そしてひとたび、著作で世論に影響を与えられるぐらいに「出世」を遂げれば、それすなわち「政治的資本」となって、一著述家の身分で政党や国会を動かしてやれるのかもしれない。精進するのみです。