誰か乾パンをめぐんでくれる人はいないか? この月末を乗り切りたい。

 Tristan Plank, Scott Scheff and Angelia Sebok 記者がナショナルディフェンス2010-5月号に載っけている記事「First 100 Days of Deployment Critical to Soldier Survivability 」。
 「兵隊になってから最初の5回の火力交換戦闘を経た」よりも「ひとつの前線に配備されてから100日が過ぎた」の方が、その兵隊が「死なないやつ」と化したかどうかの見積もり基準として適当であることが、ちかごろ解析された。
 この研究のスポンサーは例によってDARPA。
 元にしたデータは、イラクとアフガンにおける過去3年間の米英軍の陸軍および海兵隊の戦死者2000名。その40%は、戦地に配備されてから3ヶ月以内にやられていた。だから100日。ただし1ヶ月目は比較的死なない。2ヶ月目から増える。
 理由の一仮説。ローテーションにより、ある部隊が、ある部隊と、持ち場を交替したとする。この変わり目では、それまで利用してきた現地人からのタレコミ情報は得られなくなる。それゆえ危険がハネ上がる。
 また、なぜか陸軍の兵隊は、外地の戦場に展開してから「6ヶ月目」に戦死が急に増える。これは海兵隊、海軍、空軍の兵隊だとみられぬ現象だ。
 そしてまた、「10ヶ月目」にも小ピークがある。
 その考えられる理由は、疲労、慢心【complacency】、無気力戦術【stale tactics】だ。
 敵ゲリラも、そのくらいすれば米軍のパターンに慣熟してしまう。
 集められた兵隊の代表的な声。訓練はもっとリアルにする必要がある。敵ゲリラがある戦術を使ってきたという情報が上がってきたら、即座に、それに対抗するためのリアルな訓練を考え、それを遅滞なく現地において味方部隊に対して施してやらねばならない。ゆっくりやっているヒマはないのだ。
 結論。部隊を交替させるタイミングや方法は工夫せねばならぬ。間歇的な現地での訓練によって兵隊たちの気分をひきしめさせよ。1部隊が得た戦訓はすぐに全部隊に伝えろ。
 次。同じくナショナルディフェンスの2010-4-22記事「Gathering Storm May Sink Navy Shipbuilding Program」。
 米海軍長官が演説した。毎年10隻のペースで、建艦するのだ。海軍は、計画艦の仕様を途中で変更することはやめる。だからキミたちは、安んじて造船所のインフラに投資し、工員を訓練し、艦船の単価を下げて欲しい。
 米海軍のゴールは2020までに「320隻艦隊」を実現すること。今は286隻だ。ちなみに1988には米海軍の艦艇は 594 隻もあった。
 軍艦は、いまや、1隻平均で a billion dollars を超えてしまっている。米海軍は、年に10隻を調達するために、毎年 $15 billion 必要だと見ている。
 ところがそいつを少なくとも6箇所以上の巨大造船所に分散して発注するものだから、各造船所では、能力をフルに発揮できない。結句、非効率となり、単価は上がるはずである。
 造船会社は、能率のために投資をしても、それを回収できないことが見込まれる。
 1造船所に対して2年で3隻なんていう少ない発注量では、水上戦闘艦の巨大造船所を2社以上維持させて競争させていくという国策は達成不可能だね――とある経営者。
 ゲイツは3月に、オハイオ級の次の新SSBNは箆棒な価格になりそうだから海軍は少し方針を改めないとそれだけで海軍予算が尽きるぞ、と警告。
  Littoral Combat Ship については当初、米海軍は、2タイプを買ってみるつもりだった。しかしその予算はなくなった。安い方を選択するしかないだろう。
 次。
 ナショナルディフェンス2010-4-22記事「 Drone Wars: U.S. Aircraft Need Smaller, More Precise Weapons」。
 アフガンとパキでは Nearly 1,000 people がUAVにより過去2年間に殺された。これはまずい。反米感情をもたらす。
 そこで、軍が今関心をもっているのは、より小型のUAVによって、特定の1人のゲリラだけを、都市の中で精密に狙い撃ちして殺せないかということ。住民へのコラテラル無しで。
 空軍の MQ-9 Reaper は、 AGM-114 Hellfire missiles, GBU-12 Paveway II bombs そして GBU-38 Joint Direct Attack Munitions をミックスして携行できる。
  MQ-1 Predator は two laser-guided Hellfire missiles である。
 陸軍のSky Warriorは Predatorをベースにしたものだが、ヘルファイア×4発だ。
 米陸軍としては、殺さずに捕虜にできる精密誘導爆弾が欲しいのである。路側に地雷を埋めている敵ゲリラ3人に対してそれを1発発射すると、3人とも捕虜にして尋問ができる、そんな弾薬が理想的だ。
 それにはまず、弾頭重量が 10 pounds 以下のものを開発して欲しい。さらには、非殺傷性の弾頭を。
 だから陸軍は今、 2.75-inch diameter laser-guided rocket を Shadow または Sky Warrior UAVから発射させることを検討中だ。
 次。ストラテジーページの2010-4-26記事「Pam And Lam Get Fired」。
 米陸軍のNetFires (or NLOS-LS) missile systemは2004から開発開始されたが、ついに計画放棄された。
 海軍は LCS (Littoral Combat Ships)がVLS (Vertical Launch System)を収めるほどには容積に余裕がないので、陸軍が開発したこいつを積むつもりでいたのだが……。陸軍がブン投げたこのミサイルの開発を引き継ぐなんてことは予算的に今の海軍には無理。
 NetFires には2種類のミサイルがあった。2つとも、寸法と重量は同じなのだが、用法を2つに分けていたのだ。
 主力と考えられていたのが、 PAM (Precision Attack Missile)。直径 178mm で、重さ 55 kgで、射程は 40 kmだった。
 ※毎度思うんだが、わが川重が開発した、直径160mm、重さ60kg、射程不明だが光ファイバ誘導の「Type 96 多目的誘導弾システム」をベースに改造したらダメなの?
  PAM は上から落下して目標を攻撃するミサイルで、弾頭重量は 13.2 kgである。戦車の上面装甲は薄いから、これですべての戦車に対応できるとされていた。
 PAM は 1.3×1.9×1.3 mのコンテナから垂直に発射される。
 このコンテナに入った状態で工場から出荷され、部隊が受領するのだ。
 15発入りのコンテナ全備重量は1トン。
 それをトラックや舟艇に搭載する。
 キモは、このPAM container をワイヤレスの戦場インターネットに接続するということ。
 LCSの射撃管制士官は、敵の情報をUAVやら衛星から画像として得る。その敵の画像をスクリーン上でクリックすれば、PAMのコーディネーターが、それを攻撃するための最適の位置にある最寄のランチャーからPAMを発射してくれる、という、お気楽コンセプトだった。
 最終誘導はミサイルの内臓センサーによる。つまり、ロックオン後はパッシヴである。※なるほどこれは要求が高すぎる。採用しても、味方撃ちや、民間人殺しがあり得るよ。96式ならばそれは回避できるが。
 もうひとつ、ジャングルや錯雑地に潜んだ、視認しにくい状態の敵車両を攻撃するため、2番目の NetFires missileとして、 LAM (Loitering Attack Missile)があった。
 これは mini-cruise missile ともいうべきもので、45分間、ターゲットが見つかるまで上空を飛び回る。
 内臓のレーザー・レーダー (LADAR) で敵車両を発見すると、落下命中する。こっちの弾頭は、戦車を吹っ飛ばすには不足なのだが、それ以外なら無力化できる。
 米海軍では、このLAMを、150km離れた敵魚雷敵を駆逐できるよう、沿岸戦闘艦に装備しようと考えていた。
 LCSは 3,000 ton だが時速 90 kmで疾走する。
 しかし固有兵装は、1門の 57mm gun と数門の機関砲だけ。
 よって、 NetFires の追加が必要だったのだ。
 ちなみに乗員はタッタの15人以下。※軽巡洋艦サイズで15人ですぜ! 拙著にも書きましたが、これはもう「ロボット兵器」に分類されるべきでしょう。
 LCS は広々とした cargo hold を1箇所備えていて、そこに後付けすることによって、掃海艦にもなるし、火力支援艦にもなるし、ASW艦その他にもなるのだ。
 また、1機の Black Hawk sizeの helicopter (MH-60)も標準搭載。その格納庫もある。
 後部の吃水ドックからは、密かに無人潜航艇を泛水させることもできる。
 次。
 ワシントンポストの2010-4-26号にJoby Warrick and Peter Finn記者が寄稿した記事をNathan Hodge記者が要約している記事「Targeted Killing Lite: Inside the CIA’s New Drone Arsenal」。
    CIAが欲しているのは、ヴァイオリンより小さく、35ポンド以下の軽いミサイルだ。そして Pakistan’s South Waziristan provinceのタリバンの親玉のアジトの家に命中させ、中の数人を殺す。他の住民には迷惑をかけない。そんなちょうどよい機能のミサイルをUAVから発射させたいのだ。※なんだそういうことだったのか。今までは、ヘルファイアはピエゾ信管で屋根の表面で爆発してしまうし、レーザー誘導250ポンド爆弾の遅働信管付は家丸ごと飛散させてしまうので、不都合だったわけだな。だったらヘルファイアの炸薬を減らして信管を遅働にして弾殻を複合素材で強化すればよいのではないか?
  AGM-114 Hellfire は、もともと重戦車破壊用なので、理想的ではない。重さも100ポンドもある。これで民間仕様の4駆車を攻撃すれば、コラテラルがものすごいことになる。
 ロックマートが開発した精密誘導爆弾 Scorpion は35ポンド。
 その弾頭は Battleaxe と名付けられており、成型炸薬と破片と強化ブラストをぜんぶ追求したもの。
 しかも、it throws out fragments of reactive material which explode on impact, making it especially effective against unarmored vehicles and other soft targets. ※「反応物質」とは何なのか具体的に書いて欲しい。これでは分からん。ひょっとして、劣化ウランの破片を飛び散らせることにより、その破片がまた別な車両の鈑金を貫通したときに、内部に焼夷効果を発揮してくれる、ということなのか? しかしそれなら explode という動詞は不適切である。
 Scorpion は GBU-44 Viper Strike のライバルと考えられていた。こっちは、滑空爆弾で、RQ-5 Hunter drone でのテストも実施済み。
  Thales Lightweight Multirole Missile は Thales’s Starstreak/Starburst anti-aircraft missiles の要素を用いたもので、重さ 28 pounds.
  Raytheon’s Griffin missile はJavelin man-portable anti-tank missile と AIM-9X Sparrow air-to-air missile の要素を組み合せ、重さは45 pounds.
 米陸軍は、 Advanced Precision Kill Weapon System (APKWS)も開発。これはいわば “smart” 2.75-inch rocketで、ありふれた Hydra 70 rockets を、ミサイル化しようというものである。こっちはもうじき量産に入る。
 次。
 『Guardian』紙の記事を2010-4-26にJeremy Hsu記者が要約。「 Get on the Beef Train: Amtrak Unveils First Biodiesel Commuter Train, Powered By Animal By-Products」。
  アムトラックが、米国初の、バイオディーゼルの汽車を公表。燃料は牛肉の副産物を利用。20 percent biofuel と 80 percent diesel を混ぜた燃料だ。
 Oklahoma City と Fort Worth の間を試験走行する。
 しかし批判者はいう。トウモロコシで牛を太らせ、そこから油を絞るよりも、トウモロコシを直接にバイオ燃料化した方がずっとエコだろ、と。
 次。
 Clay Dillow 記者の2010-4-26記事「 The Army Wants Olfactory Sensors That Can Smell Potential Perps At A Distance」。
  個人の体臭を識別し、その接近を偵知したり、その足跡を数日後からでも辿れるようにするという研究を米陸軍がやっているんだと。