防衛省発行『我が国の防衛と予算(案) 平成25年度予算の概要』を読みて

 小生、2013-1-1から「海上保安庁政策アドバイザー」の任期が切れ、律儀な御役所さんと見えて、いらい海保からはマスコミ向け資料(毎回の記者会見の概要なども分かる)を一切郵送して来なくなったので、まあ今後話柄にとりあげることもすくなくなろうけれども、防衛省さんからは引き続き資料が郵送されて来るから(ただし記者会見の概要は含まれない。防衛記者クラブにはかなりディープな情報が記者会見以外の場で渡されているはずで、それが朝日のウェブ版消去記事となったのだろう)、例によってその注目点を指摘し、コメントを残しておくのは田舎の評論家の義務でもあろうかと心得る。
 『我が国の防衛と予算(案) 平成25年度予算の概要』は、奥付によるとH25-1刊行で、防衛政策局・防衛計画課と、経理装備局・会計課の合作である。再生紙A4版・平綴じ、本文46ページ、カラー図版挿入の冊子パンフレットで、たぶん非売品だ。
 135億円が、E-767とE-2Cの「運用拡大」を支えるための燃料費、修理費、通信維持費等のために要求されている。
 憶測するに、対露だけでなく対支の常続的監視も同時に必要になったのだから、JP-8代や交換部品代や衛星回線借用料も倍増せねば追いつかなかったはずのところ、売国民主党政権は、何もしていなかったのだろう。だが、それを言い訳にして先般の領空侵犯を不可抗力と言い逃れることは許されない。シナ人が低速機や無人機で領空侵犯を狙ってくる企図はプロならば当然に予測せねばならず、その「抑止」のための措置はいくらでもあったのにもかかわらず、漫然と過去のルーチンに安住して敵に凱歌を進呈したのだから、陸軍ならば歩哨の懈怠も同罪であり、第一責任者たる空幕は全部入れ替える必要があるし、海自のピケット艦を遊弋させる等の措置を講じなかった上級責任者も、譴責無しで済まされることではない。この責任問題をうやむやにするなら、日本軍は第二次大戦中のような「不適格人材の放置」を主因とする自滅的な拙戦をシナ軍相手に再演すること必定だろう。
 89億円が、宮古島と、宮崎県高畑山の空自防空レーダーをFPS-7に換装するために要求される。
 わたしゃこの「7」というレーダーについては何ひとつ知るところが無いんだが、昨年から話題になっていた「西日本にXバンド・レーダー」っていうのは、こいつのことなんですかい?
 1億円が、「宇宙状況監視」のために要求される。
 具体的には、朝雲新聞によると既存のFPS-5(ガメラレーダー)を宇宙デブリ監視用にソフト改造してみるというんだが、デブリ(これは「シナ軍の新鋭ICBM試射の際にそのデコイ分離タイミングを精密に観測すること」を言い換える日米の符牒のようなものだろう)を仔細に検分するためにはXバンドじゃなくちゃダメなはずで、つまり「(なんちゃって)デブリ監視」の役目も主に「7」で担うことになるのじゃないの?
 3億円が、那覇基地でのE-2Cの常続的運用態勢確立のために要求される。
 この予算が通る前の「緊急措置」ということにして、下地島の滑走路をE-2Cの給油用に使いなさいよ。誰も反対しないよ。
 1000万円が、「短波レーダー等の警戒監視技術」の技術動向の調査と研究のために要求されている。
 これって「OTHレーダー」でしょ。我が目を疑いましたよ。とうとう日本も独自に建設する気になったのか。さてそうなると立地ですよ。こいつは電力を喰うから、送信局は島嶼部には置けない。しかし、「受信局」は最前線の島嶼に広く散在させる、マルチスタティック方式にするべきだよ。当然、そこまで考えてるよね?
 F-35関連では、「国内企業が製造に参画するとともに、F-35の国際的な後方支援システムに参加」と注記してある。
 国内大手企業が待ちに待っていたのはコレだったのだね。F-35のパーツを米国を経由して世界中のユーザー(といっても今の調子だとイスラエルしかいなくなるぞ絶対)に売る。F-35はコスパ上の「失敗作」確定だから、ここですぐに大儲けしようってんじゃない。この「一線」を突破することで、将来、他の分野での「兵器部品輸出」に道が開かれる。一回、輸出の枠組みがエスタブリッシュされれば、あとは決河の勢い。誰も日本製パーツの奔流は止められねえ。道理で株式指数が爆上がりするわけですよ。いままで実績ゼロの分野が10倍、100倍に伸びる。そこに機関投資家が注目するのはあたりまえすぎますわな。
 25億円が、「水陸両用車の参考品」4両購入のために要求されている。
 波が高いと使えない、断崖にも這い上がれない、敵が水際地雷や沈底式機雷を撒いたら近寄れない、敵が曲射弾道のATM持ってたら池のアヒル同然に死あるのみ、第一空挺団が半日でとっとと陣地占領・築城工事してしまえる離島に1週間かけないと接近すらできない(その間にシナ人は橋頭堡を確立して東京政府を核恫喝して、わが揚陸艦の動きは途中で止まる)、そんな売国精神フルコースのアメリカ製「AAV(Amphibious Assault Vehicles)7」を陸自用に調達する気満々だね。民主党政権時代から一貫してこれを推進している内局の工作員はいったい海兵隊からどんな接待をされたんだ? 海兵隊など滅亡確定の恐竜にほかならず、時勢は英軍の「ロイヤルマリンズ」(それを模倣したのが米海軍のシールズ)のような少人数上陸作戦に完全にシフトしているのに、時代に逆行して海兵隊の真似を陸自にさせようというのだ。これは米国海兵隊以外の誰の利益にもならない。島嶼防衛の要訣は、敵にそもそも上陸をさせないことで、そのためには水上をノロノロと接近する装備は無用の長物。チヌークか高速艇で守備隊を先に送り込んでしまうことが、安全・安価・有利な対策である。国会議員諸君は、こんな亡国の予算案を認めてはならない。
 800万円が、「諸外国におけるティルト・ローター機」の調査研究に要求されている。
 構造的危険機オスプレイを、信頼性が確立している現有チヌークの後継機として買いたくてしょうがないらしい。内局内には、海兵隊から完全に洗脳されちまった、もしくは、天下り利権に理性を失っている御仁がいると見た。
 チヌークの航続距離はどんどん伸びており、オスプレイに遜色はない。しかも3000m級の山岳地がある日本の地形ではチヌークのホバリング能力はオスプレイを断然に上回っている。遠くの島へ速くかけつけたいなら、国産飛行艇のUS-2を大量調達した方が、よっぽど日本の景気はよくなる。US-2は内陸飛行場にも降りられる。そこから沖合いの軍艦まで邦人をピストン輸送することも可能だ。もとより140万人もの在支邦人は回転翼機で救出できるような数ではあるまい。カントリーリスクを強調して平時から大陸への渡航を抑制させることこそ、まともな責任ある政府というものだろう。
 いうまでもなく、軍事作戦的には、チヌークの最新型をどんどん増やすことが、現実的・合理的であり、日本の国益である。
 この800万円は亡国の端緒であり、絶対に承認してはならない。
 比較して、民主党政権時代に鳴り物入りでブチ上げられた「グローバルホーク」に関しては、なんと海外調査費100万円が要求されているのみだ。担当係官1名が北米とグァムに出張旅行したら消えてしまう額で、「当政権として、やる気はまったくありません」と表明したに等しいだろう。
 いまや国産の高性能4発哨戒機があるというのに、シナ軍のSA-2で簡単に撃墜されてしまう、しかも運用基地はアンダーセンを間借りするしかない、そんなグロホを大枚はたいてわざわざ導入するメリットは、誰が見ても皆無だろう。
 253億円が、「在日米軍従業員の給与及び光熱水料等を負担」したり「在日米軍従業員に対する社会保険料(健康保険、厚生年金保険等)の事業主負担分等を負担」するために要求されている。
 これってもう誰かの「利権」になっちゃってるんでしょうね。誰が考えてもありえないでしょ。金額といい内容といい、非常識きわまる。これがいままで国会を通ってきたということは、議員も役人もみんな腐ってるってことだね。