■けっきょくユーチューブのノロノロ再生はさほど改善しなかった。したがって引き続き動画は見ない。【2013-6-21作文】

一。
 Matthew M. Burke 記者による2013-6-20記事「Poor leadership, planning led to USS Guardian hitting reef near Philippines, report finds」。
  木曜日に米海軍は調査報告の結論を出した。
 1月にフィリピンで座礁し、離礁できずに解体された、佐世保軍港所属の掃海艦『USS Guardian』の失敗始末。艦長がすべて悪い、と。
 『ガーディアン』は新鋭艦ではなかったが、まだまだ働ける $212 million の米軍資産だった。それがスクラップ化した。
 2種の海図があって、その記載には異同があった。艦長も航海長らもそれに注意しなかった。手続きの無視もあった。そもそもちゃんと「見張り」をしていれば浅瀬は見えるものだ。みんな怠けていた。
 160ページのリポートはトホホなものである。
 深夜のスル海でリーフに座礁したとき、艦内にドッと海水が流れ込んできた。
 乗員79名はパニックを起こし、何名かは艦長命令もないのに助かろうとして即座に海に飛び込んだ。視界内には1艘の救命艇も存在しないにもかかわらずだ。そこは Tubbataha reef という珊瑚礁であり、人体が珊瑚礁の堅いところに当たれば大怪我もしかねないものだが、さいわい、誰も怪我はしなかった。
 艦は『アヴェンジャー』級である。
 艦長は、少佐 Lt. Cmdr. の Mark Rice である。
 副長 executive officerは、大尉 Lt. の Daniel Tyler であった。
 スビック湾を出港する前の航海プランが杜撰でなかったら、この危険は最初から避けられたものだ。プランがそもそも、どうやっても座礁するにきまっているリーフの上を航海するというものだったのだ。
 彼らは、詳細度の粗い coastal digital chart(沿岸デジタル海図)に依拠した。それはもう一枚の「全般デジタル海図」と一致しないところがあった。狂っていたのは、沿岸デジタル海図の方であった。
 タイラーは訊問にこう答えた。「コース計画時に、セフティ・チェックにかけたのであります。しかしコンピューターは危険を表示しませんでした」。
 嘘である。この予定コースと決めて、デジタル海図ソフトの「セイフティ・チェック」機能を走らせてみれば、コンピュータは、このコースには危険があるというポップアップ警告を即座に画面に出してくれたはずである。タイラーは、それを無視したのだ。
 デジタル海図システムは、リアルタイム警告も出してくれるはずだ。1-17の午前2時25分に座礁は起きたわけだが、その前に、ソフトウェアが、座礁の危険があると、音声でも画面表示でも警告を発してくれていたはずである。同艦の当直たちは、それを無視したか、コンピュータの警報が見えもせず聞こえもしない場所でなにかをしていたにちがいない。
 しかも、水兵が交代でブリッヂで「見張り」に立つことになっているが、この座礁の直前には誰も見張りをしていなかった。一人の見張りが、次の見張りがまだ上番して来ないのに、下番してしまったからだ。
 当直将校(officer of the deck)は、航海計画よりも本艦がトゥッバタハ礁の南小島に接近していることに気づいたが、そのまま漫然と進行させた。服務規程(Standing Orders)では、このようなときには、自艦の正確な位置を測定し直す必要があった。
 報告書はまた附言する。もしも彼らが Tubbataha リーフを避けたとしても、すぐに同艦は、Pearl Bank 付近で座礁してしまったであろう。すなわち、当初計画がもうどうしようもないのだ。
 ※こういう阿呆な事故を南洋海域で一件も起こしていない旧海軍はさすがだよね。
 2-22から3-29にかけ、長さ 224-foot の同艦をサルベージするのに $45 million を要した。2-15、同艦は米海軍の艦籍簿から除籍された。艦の退役式は3-6に佐世保で行われた。
 『ガーディアン』のクルーは、5-2にそっくり、佐世保に来着した同型掃海艦『USS Warrior』の乗員になった。※それをペルシャ湾から操艦してきたクルーは、他の便で米本土へ戻った。
 『ガーディアン』の元クルーたちは、失格水兵の烙印を押されているので、これから、みっちりと、きびしい訓練や検閲や服務教育をうけなければならぬという運命が待っている。
 世界遺産のリーフを破壊されたフィリピン政府は、米政府に $1.4 million の罰金を払えと言っている。
 艦の幹部将校たちは、いろいろな文書とデータを保存する義務がさだめられているにもかかわらず、座礁前も後もそれをしていなかった。だから食い違う「証言」だけで真相を究明しなければならなかった。
 海軍も教訓を得た。さっそく、掃海艦の航海中の当直配置規定が変更されている。
 なお、6人の『ガーディアン』乗員が、そんな中でも英雄的に活動したという。ダメコン担当の下士官は首まで浸水につかりながら破孔を塞いだ。またレスキューダイバーたちも何名かの乗員を溺死の危険から救ったとされる。
二。
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