MIL短報【2013-6-28作文】

一。
 Manuel Mogato 記者による2013-6-27記事「Manila plans air, naval bases at Subic with access for U.S., officials say」。
  米海軍高官によると、フィリピン政府は、かつて米海軍の軍港があったスビック湾と、その付属の海軍用飛行基地のキュービポイントを、再建して米軍に提供することを決めた。
 これは南シナ海での対支作戦基地とするためである。
 ※ヘンダーソンの再建が先かと思っていたら、スビックの話が先に公的に浮上した。これはスノーデン逃亡幇助に対するオバマ政権からの対北京報復第一弾である。米国中枢は、いままでは「対支」をあからさまに言うことは憚ってきた。もはや憚らない。
 シナ人が不法占領中のスカボロ礁までは 124 nautical miles の距離に一大米軍基地が再建される。
 コストは 10-billion-peso (=$230 million) を見込む。
 スビック湾は、水深が深い。しかもジャングル高地で囲繞されている。位置はマニラ市から80km。米西戦争いらい米海軍は94年間、ここに居座っていた(日本軍に追い出された2年間を除く)。しかし冷戦後、もう脅威はなくなったと勘違いした比島国会が増長し、腹を立てた米海軍は1992に、巨大乾ドックをも含むすべての設備投資をぶっこわし尽くして撤収した。その後、同地区は経済特区に指定されていた。
 その後も米軍艦や米機は、メンテナンス等の理由でスビック&キュービに立ち寄ることはあった。
 基地用地と区分されているのは、広さ 30-hectare (74-acre) である。
 米国がタダでくれてやったハミルトン級のコーストガード船×2隻も、スビックが母港である。(2隻目の引き渡しは数週間後。)
 木曜日、米比両軍は、スカボロ礁近くで合同演習を開始する。
 そして来週、ブルネイでは、ケリー国務長官が参席する東南アジア+中共の年次会合が開かれる。
 ことし、すでにのべ72隻の米軍艦(潜水艦含む)がスビックに寄港している。2012には88回、2011には54回、2010には51回の米軍艦寄港があった。
 Cubi Point Naval Air Station は、FedEx Corp の民間カーゴ機が、米海軍航空隊撤収後、利用していたが、その後、利用を止めた。同基地は2009に「スビック湾国際空港」と改称された。
 米海軍は、この飛行場の一部をまた軍用に戻したらどうかとアキノ政権に提案中である。
 米陸軍特殊部隊は、2002以降、比陸軍の基地内に分散同居して、南部のアブサヤフらと戦っている。
 また、米海軍の哨戒機は、旧クラーク基地の一部分である、現在の比空軍基地内に、同居常駐している。
 これは米軍が排他的に専用の基地を保持するのではなくて、比軍の基地を米軍が「間借り」したり、アクセス権だけを持たせてもらうという利用形態であるため、比島の国民感情も悪くしない。これからどんどんこのスタイルでプレゼンスが拡大するだろう。
二。
 ARAM ROSTON 記者による2013-6-24記事「Will Congress Let USAF Abandon the Global Hawk?」
  南アジアでは、6月は、雨期(約半年)の始まりである。
 台風も来る。台風はハイパワーなので、天候の変化が速まり、予測がし難くなる。これは極東での対支〔記事では対北鮮と書いてあるが、これはお約束で、対支の符牒として軍事記事では使われる〕の偵察飛行に代価を強いる。
 グァム島に3機配備されている無人高高度偵察機グローバルホークだが、同機だけの、厳しい運用規則が特別に課せられている。まず、雷雲の上は絶対に飛んではならぬ。また、基地からの上昇と、基地への降下の途中で、雲に突入してもいけない。その場合、横に避けなければならない。
 これは面倒な規則である。これがため、少しでも悪天候が予期される日は、そもそもグロホを、飛ばせないのだ。
 昨年などは、ある1ヶ月まるまる、離陸ができない時節もあったほどだ。
 この成績実態が、ワシントンで、「脱グロホ」運動をプッシュしている。
 というか、これをわざと仕組んでいるのは、有人偵察機U-2をなくしたくない空軍の一派なのだ。
 U-2ならばこれしきの雲は関係なく、毎日でも偵察しますよ、とアピールしたいのだ。じっさい、そうアピールしている。
 そして、今18機、持たされているグローバルホークを、ぜんぶ、沙漠の廃品飛行機置き場に並べてしまいたい、というのが米空軍人の国益などどうでもよい私的な願望である。彼らは無人機そのものを忌み嫌っている。飛ぶ趣味をぶちこわす存在だからだ。
 1年半前から彼らはこの姿勢を露骨に示し、グローバルホークの追加調達を拒絶している。
 空軍内にも、グロホを買えよという勢力はある。メーカーのノースロップ・グラマン社との腐れ縁を持った連中だ。
 かたや、U-2の運用継続と追加調達を叫ぶ連中は、そのメーカーたるロッキード・マーチン社との腐れ縁を有しておること、いまさら申すまでもなかろう。
 U-2で高度7万フィートを北西に向けて飛び、そこから機首を右にすると、パイロットは、空がとつぜんに真っ暗になる直前、緑色の「燐光」のフラッシュを視認する。不思議な地球の現象である。
 これは7万フィートまで行かないと体験できない。U-2の場合、パイロットは、宇宙服を着て搭乗する(1955当時のU-2と違っていまでは与圧コクピットなのだが、それが破裂した場合パイロットの命がないので、ひきつづき、宇宙服が常装)。空軍パイロットは、こういう超常体験が面白いので、U-2を捨てたくないのだ。国防とか安全保障とは何の関係もない、個人の興味の話なのである。
 U-2は、2年前、ゲイツ長官により、終了プログラムが開始された。いまや空軍人は、それに全力で抵抗する気満々だ。
 グロホは連続32時間も飛行し続けられる。U-2にはとてもそれは無理である。
 グロホの偵察センサーに対する高性能化の要求は、とどまるところがない。そのため、次々と、ペイロードが大きくされ、エンジンが強化され、発電量も増やされた。そうやって型が新しくなるにつれ、単価は雪ダルマ式に膨張してきた。
 もともと単価 $35 million でできたのが、いまじゃ $220 million である。これは諸装備の不断の開発コストが按分されて上乗せされるため。
 2012-1に空軍は、グロホ計画を終了すると決めた。
 すると全米の15州に散在するグロホの下請け企業が議員を通じて大反対を始めた。
 2013 National Defense Authorization Act は議会を通過している。これにより空軍は、RQ-4 Block 30 Global Hawk をすくなくも2014年末まで運用し続けなければならない。
 1機のグロホも、沙漠の廃物飛行機置き場へ送ることは許されない。
 さらにこの6月、下院軍事委員会は、新しい defense authorization bill を可決した。これにより、グロホを廃品にしたくてたまらない空軍は、2016まで、グロホを運用し続けなくてはならなくなった。
 以下、U-2とグロホ・ブロック30の比較(U-2派の説)。
 U-2はエンジン推力が 17,000 pounds と強力で、高度 65,000 feet へタッタの30分で上昇ができる。
 かたやグロホは、推力が 7,500 pounds と弱いので、6万フィートに昇るのに4時間がかりである。
 グロホは32時間連続滞空できるが、U-2はマックス14時間、ふつうは10時間でパイロットの疲労限界になる。
 ただし、韓国上空は無人機に開放されていない。その空域は、有人機しか飛行することは許されていない。
 U-2の上昇限度は、公称で7万フィートだが、じつは、7万5000フィート近くまで行ける。
 グロホは6万フィートである。
 領空侵犯しないで100マイルも敵地を覗き見したかったら、1万フィートの高度差は、でかい。
 グロホはセンサーを3台(SARレーダーと、光学と、シギント)積む。U-2は2台(シギントを欠く)である。
 U-2は2000年型のホンダ・アコードのようなものだ。つまり、すでに代金はぜんぶ払ってしまっており、しかも、これからも走ってくれる。グロホは新型車であり、金食い虫である。
 運用コストについての両陣営の争い。グロホ・サイドはいう。グロホはパイロットの教育に必要なコストが断然に低い。また一回の滞空時間が長いということは、各部にストレスのかかる離陸と着陸の回数・頻度が小であることを意味する。これは機体の寿命を長くする。
 U-2とちがってグロホには、急にあらわれた雲を適宜に回避するセンサー&知能が無い。
 ただしノースロップグラマンは、雲をカメラで見て避ける装置を後付けできる、と主張している。 $7 million だという。