32年前、全滅必至とされていた第2師団に望んで入営した「情弱」新兵が、いま、日露「対支」同盟に賛成するその理由とは?

 『新潮45』の6月号の拙稿は読んでくれましたか?
 五月病の人は目が醒めたのではないかな?
 日本人が使えるエネルギーが安くなるってことは、税金が安くなるのと、同じ効果があります。消費税が上がったことによるマイナス効果を、チャラにできるかもしれません。殊に、冬の灯油代がエンゲル係数と等しく節約など不可能だった北方寒冷地方では、消費拡大に直結するでしょう。
 万物流転の慨を 転た あらたにしてください。
 いまから三十二年前、わたしは「ソ連軍が北海道に攻めてくる」と思って陸上自衛隊に志願入隊し、任地・職種希望も「最前線の戦車部隊」と書いてその通りに中隊配属されたものでした。
 でも日本の防衛の最前線は天塩海岸なんかじゃなかったんですよね。日本の敵の手口は、常に「間接侵略」なのです。元KGB大佐のプーチン氏は、クリミアでその手本を示した。彼は歳をとって肉体が衰え、その焦りからあきらかに、若かった頃の時代や流儀をぜんぶ再構築しようとしてますよ。でも、それは失敗するでしょう。ドネツ地方では米国が送り込んだ「特殊部隊」(私服アドバイザー)が有効に反撃に転じています。おなつかしやの「ブラックウォーター」の名まで出てきた。これがケリーがつぶやいた「現代の道具」だ。プーチン氏は早く、「変化し続けるものだけが生き残る」と、思い出すべきです。「ユーラシア・ユニオン」を捨てて、互いに間合いの取れる日本と結託すべきなのです。
 どんどん余談になりますが、雁屋哲氏がもし中共の間接侵略工作員だったとしたら、死後に銅像が立つかもしれない。これを読んでいるあなたは、「太極拳」とか「ヌンチャク」という言葉を知っているでしょう。この二つの言葉を日本の中学生男子に初めて教えたのは、『週刊少年サンデー』に「男組」を連載していたときの原作者、雁屋氏に他ならないのです。わたしは「ヌンチャクなんぞ 使える腕じゃねえ」というあの劇画中の台詞を いまも覚えています。たしか 同時連載が「漂流教室」とかの時代でしたよ。ブルースリーが映画の中でふりまわしていた武器が「ヌンチャク」だと知っていた人は、沖縄の人を除いてはまず、いなかったと思います。
 それだけじゃありませんぜ。「双方貫耳!」だとか漢字だけの技の名前をいちいち叫びながら繰り出す、シナ系格闘技漫画の表現パターンを創始したのも、「男組」です。あの作品がひとつの「世界」「技法」を創始したおかげで、その「世界」「技法」を借りれば、たとえば『週刊少年ジャンプ』が「北斗の拳」「魁! 男塾」「ドラゴンボール」をスタートすることなど、易々たる事業となった。集英社のこれらの作品の担当編集者は、雁屋氏に足を向けては寝られないはずなんだ。それはどうでもいいが、その結果、日本人がすっかりシナ人を警戒しなくなったってことは、間接侵略工作としたらば勲一等でしょ? 天安門事件にもかかわらず、たくさんの中小企業があっちに進出して、いま、悲劇的なことになっていますよね。その空気を最初につくったのは、雁屋氏ではないですか? (でも、シナ大陸へのリスキーすぎる企業進出に資金を貸し付けた銀行の担当者は、業務上背任には問われないんでしょうかね。)
 今「男組」のストーリーを想い返すと、主人公は手錠だしラスボスはどうみても日本政府そのものだし、最後は刃物を握って機動隊に突っ込んで行くしで、反政府テロ賛美に近い、えらい内容だったんじゃないかと気になってきた。こんど古本屋に出かけたら、確認のため、探してみます。なんとならば、作家の初期作品には、その人の一生のテーマが隠されていることがありますからね。
 雁屋氏は、「男組」と類似した派生作品をじぶんでまた量産するのではなく、その次に、バブル時代の大衆にピタリと照準をあわせた「美味しんぼ」をヒットさせた手並みが、わたしにとっては真に驚異的でした。わたしのように「だったらあらゆる素材を畑で即齧れば? 水洗いも、火で加熱とかもしないで…」と反発する人はこのマンガにはついていかないでしょう。ついていく読者が厖大だったので、長期連載になった。(まだ続いていたんだとはこんどの騒ぎで知りましたが。)
 でも、今の大衆はバブル時代の大衆よりも、確実に利口になっているのではないですか? そしていつのまにか、老人原作者が大衆の到達しているレベルから後落していたのではないか、というのが、報道に接しての、わたしの感想です。