「読書余論」 2014年8月25日配信号 の 内容予告

▼徳川夢声『夢声戦争日記(七)』中公文庫 S52
 文庫の最終巻。
 NHKラジオは、降伏すると知った8月13日夜に「元禄忠臣蔵」の内匠頭切腹の段と早飛脚駆けつけの段を放送した。※メッセージは臥薪嘗胆なのだろうが、占領軍としては「リベンジのよびかけ」と受け取るよね。
 9-27、吉原では、「夕方の五時になると、A兵の行列が物凄くエンエンと出来上る。スン(即ちチョンの間)が五十五円、泊りが二百四十円の定価。妓一人で毎夜平均八人位を引受ける。」
▼雑誌『全貌』バックナンバーより
 サイパン島の戦後掃蕩中、米兵はよく『ライフ』誌をわざと落として行った。重光外相がマッカーサーの前で署名している写真を見ては、日本が敗北したと信じざるを得なかった。
▼防研史料 『兵器弾薬表』M27-5-10
▼防研史料 『陸軍砲工学校略史 M23.12~S6』
▼防研史料 『参考ノ断片(其六)』2冊、M43。
 Part 2 の方に、台湾の 蕃人戦闘動作ノ要録(案)あり。
▼防研史料 『S15~16年度 兵器工業史資料』by相模原陸軍造兵廠
▼『労働運動研究復刊第30号』(2011-12)所収・石井和夫「捨て去られた日本陸軍最後の理性――有沢広巳の『秋丸機関報告書:英米合作経済抗戦力調査 1941』」
 大河内正敏は1917に言った。前年のソンム会戦において、英軍は1000万発の砲弾を射耗し、その1発は大小平均すれば40円であるから、4億円を投入して初めてソンムが攻略できたのだ。英仏は1日に砲弾を100万発製造しているし、ドイツは40~45万発を日産している――と。
▼牧野国昭「陸軍秋丸機関の活動とその評価」
 戦前に『独逸経済抗戦力調査』をまとめた武村忠雄いわく。ナチス政権誕生時には、多くの失業者と豊富な在庫が存在した。企業の操業率は低かった。だから「統制」によって遊休生産資源を活用するだけでうまくいった。しかし1937にドイツは完全雇用に達した。もはや生産力は増強され得なくなった。1939以降は総ストックが漸減している。消耗に生産が追いつけない。ドイツの軍需品ストックは1942から枯渇するだろう。
 そこで予言した。労働力の限界に達し、食料不足にも悩むドイツは、労力と農産物の奪取のため、かならず対ソ開戦するであろう。
 ※ということはソ連の正しい戦略は、ウラル以西の焦土化。ロシア人がそこで何百万人死んでもかまわない。ドイツはロシア人労働者を利用できなければジリ貧になって負けるのだから、死ねば死ぬほどにロシアは勝利に近づいたわけだ。ロシア人捕虜収容所をスタが爆撃させたのも合理的だったのか。
▼『史苑』第60巻第1号所収、斉藤伸義「アジア太平洋戦争開戦決定過程における『戦争終末』構想に与えた秋丸機関の影響」
▼『エコノミスト』1988-7-12号と7-19号
 井上亮による有澤廣巳へのインタビュー
 輸入石油に押されていた老朽炭鉱の合理化の指導として麻生炭鉱の麻生太賀吉さんに、スクラップが主で、ビルドはむずかしい、と告げたら、本当に涙を流した。しかし麻生や三菱は、早くセメントに転換したのでうまくいった。
▼『エコノミスト』所載・わが思い出の記・有沢広巳「軍國主義の旗の下で」(一)~(三)※この連載寄稿がそっくり『自伝』になったものと思われる。
 国民経済は、弾力性をもっている。国民生活を1割きりつめれば、15億円くらいの軍事費がすぐにひねり出せる。だから国防費には限界というものは画定ができない。国民が、ひきさげられた生活に堪えられるかだけが問題。政治の問題であって、経済学の問題ではないのだ。
 しかし国防予算が年々、大膨張した結果、ついに物の生産が追いつけなくなった。これが昭和12年。鉄、非鉄金属など軍需資材が急に騰貴しはじめた。
▼財)史料調査会海軍文庫『海軍 第12巻 艦隊編制 観艦式 陸戦隊 医務衛生 軍楽隊』S56-9 誠文図書pub.
 ※今回は前半から摘録。後半は来月号で。
 日本の陸戦隊は維新時には「海兵」と言った。佐賀の乱を素早く鎮定できたのは、大久保が海兵隊を『東』『雲揚』『大坂丸』に乗せて本営から直接に送り込み、素早く佐賀城を占領させて、拡大の気運を潰してやったから。
 M17の朝鮮事変で在留日本人を殺したのはすべて清国兵のしわざ。
 伊藤博文は陸戦隊の力をバックに交渉し、天津条約をかちとった。
 天津条約にもかかわらず清国軍はシナ兵を巡査や商人に仕立てて京城の占領を続けた。
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