この夏のいちばん面白い記事は『VOICE』9月号に載ってるぜ!

 8月10日は日曜日ということもあって、いくつかの月刊誌の「9月号」が、今日か明日には、書店店頭に出るものと思う。
 『ボイス』9月号にはわたしが架空軍事小説を寄稿した。まあ、そこらの錯乱保守のますます品下る聞き飽きた話より千倍おもしろくて役に立つことは請け合います。
 ところで、新聞報道によると、ことし7月に政府は、普天間の米海兵隊のオスプレイも2019年に佐賀空港に引越ししてくれんかと打診し、在日米軍から、鄭重に断られたそうだ。
 2012年の『新潮45』の10月号あたりに「オスプレイは誰にとって危ない軍用機なのか?」(タイトルはウロ覚え)というわたしの丁寧な事実解説記事が載っているので、このような軽々しい思いつきの提案を懲りずに政権に繰り返させている阿呆官僚は全文を再読してみて欲しい。
 在沖海兵隊はなぜヘリとその飛行場を沖縄本島内に必要とするかというと、平時の米海兵隊は、陸上の兵舎か、外洋を遊弋する「強襲揚陸艦/ヘリ空母」等の艦内に、多くは10ヶ月未満のローテーションで、部隊ごとにまとまって起居している。
 そして海兵隊歩兵部隊の敵地侵攻作戦は、強襲揚陸艦等から、艦上ヘリ(重輸送ヘリ、オスプレイ、汎用中型ヘリ)に分乗して実行されねばならない。
 強襲揚陸艦や揚陸艦からは、上陸用舟艇や水陸両用車も発進させ得るけれども、1950年の仁川上陸作戦以降、敵軍が守っている海岸をいきなり正面攻撃する旧いスタイルの上陸作戦は、もはや実施されなくなった。そんな必要は、ヘリのおかげでもうなくなったのだ。英軍などは早くも1950年代に、ロイヤル・マリンズをヘリで運用する方針へ転換し、1982年のフォークランド島奪回の第一波上陸も、楽々とヘリコプターで済ませている。(陸自はロイヤル・マリンズとSASにも少数の訓練生を派遣すべきである。それを総理が直接に英首相に頼むべきだろう。)
 輸送ヘリは、水平線のかなたから敵地海浜の後方まで一挙に躍進して敵守備軍の裏を掻ける奇襲性や、海岸地形や海象からの制約を受けないといった、攻防の成否にかかわる諸項目で、上陸用舟艇の類よりも作戦自由度を高めてくれる。安全で安価(大演習の手間が減る)で、有利なのである。
 訓練や休養の必要があって、陸上の兵舎に寝ている海兵隊員が、敵地侵攻作戦に起用されるときには、まず急いで(急がないと敵の先制核攻撃で全滅する)個人の荷物をまとめ、武器を担いでトラックに乗る。
 そのトラック類が近くのヘリ飛行場まで隊員たちを運ぶ。
 ヘリ飛行場にはオスプレイその他の兵員輸送ヘリと、空中給油機「KC-130」が、点検も暖機運転も済ませて待機している。
 海兵隊員がそのヘリに分乗するや、ヘリは洋上に向けて離陸。かなりの距離を飛行したあと、はるか沖を走っている強襲揚陸艦に着艦する。あとは、最初から揚陸艦内に寝泊りしている隊員たちと同じになる。
 このように、今日の海兵隊は、基地から出撃するのも、侵攻作戦を実施するのも、すべてヘリコプターをたのむ。
 どのみち敵のスパイの目が届かぬ洋上でヘリと会合する必要があるから、強襲揚陸艦の平時の所在港などは、どこであってもかまわない(沖縄海兵隊の場合、強襲揚陸艦は佐世保軍港が定宿)。
 しかし、海兵隊の陸上宿舎(沖縄ならばキャンプ・コートニーやキャンプ・シュワブなど)とヘリ飛行場とは、かならずや車両ですぐに駆けつけられるような位置関係でなければならないのだ。
 こんな常識が分からなかった鳩山政権は2010年に、普天間のヘリ飛行場機能を、沖縄本島と陸続きでない徳之島へ移設させるという思いつきを提言し、呆れ顔で一蹴されたものだ。それと同じことを安倍政権もやらかした。
 官僚(おそらく外務省)の軍事面での知的レベルが、国民の知らない間に、おそろしく低下しているのである。彼らは、みずから学習をしていない。知識は「NSC」の場で吸い上げられると思っているのだろう。そしてじぶんたちの無知の恥さらしは、「特定秘密保護法」の匿名保証によって、死後まで防がれると思っているから、ますます、勉強するモチベーションも低いのであろう。
 ニュース。海兵隊特殊作戦部門がMARSOCという名がカッコ悪いというので、「レイダーズ」にすると決めた。海兵隊もけっこう歴史を捏造するのだが、WWII中に4個つくられた Raiders大隊こそは、米軍史上最初の特殊作戦ユニット――なのだそうだ。ならば、ついでに想起してもらおう。昭和17年8月17日にマキン環礁を「レイド」したこやつらの指揮官、カールソン海兵中佐が手書きした「投降申し出書」の現物が防衛研究所図書館には保存されており、戦史叢書にその写真が掲載されている事実を。ところが米海兵隊では、そんな事実は無かったと今日までもしらじらしい嘘をつき通しているのだ。こんな連中の「足軽」にされて、嬉しいですかい? この話はPHP文庫『人物で読み解く「日本陸海軍」失敗の本質』の「阿部孝壮」のところでもしていから、書店に立ち寄ったなら、探してみてくれ。