「スウォーム母船」は、なぜ合理的か

 フィリピンEEZ内にある第二トーマス礁(廃艦を着底固定して警備隊を常駐させている)の上空にシナ製UAVが先月、すくなくも3回以上、飛来して旋回して去ったという。
 このUAVは艦載機である。とうとうシナ海軍/海警は、UAV運用で海自に追いついてしまった可能性がある(海自はかつて無人ヘリ「ダッシュ」を無事故運用していた)。
 まもなく、敵は尖閣上空にUAVを飛ばしてくるだろう。まず比島軍相手に予行演習をして、次は本番だ。
 ところで、国家公務員組織として無闇に人員(定員)を増やせない海保は、財務省の手前、これから、トン当たりの人数が少なくて済む「大型巡視船」でシナ海警に対抗すべきか、それとも、大きさは劣ってもいいので、あくまで「隻数」で対抗する路線を選ぶべきなのか?
 ここでいちばんいけない選択は、「敵と同じようなモノを揃える」という、思考放棄の「無戦略」路線である。
 いまや、シナ海警は、単艦のトン数でも隻数でも、尖閣に出動できる海保を凌駕しようとしている。その同じ土俵に乗って、どうするのだ?
 分野的に、まるで毛色の違った、異次元の艦種で対抗するしか、イニシアチブを奪回して敵を翻弄してやる道は無いはずだろう。
 具体的には「スウォーム母船」である。
 1万トン以上の巨大巡視船の後部泛水デッキから、数十トン・サイズ、もしくはモーターボート・サイズの高速小型巡視艇を多数隻、吐き出す。そして本船の前に「スウォーム・スクリーン」を構成する。それはわが「領海」線に一致する。
 敵は、ベトナム漁船に対してしたように、海警の公船を使ってその小型艇にラミングをしかけてくるであろう。わが母船からそれをビデオ撮影すれば、大型の敵船がわが小型艇を殺しにかかっている様子がまざまざと証拠確保できるであろう。その小型艇の乗員の命を救うために、本船から35ミリ機関砲を発射するのは「自衛」(警察機関用語だと「正当防衛」。ただし英語ではどちらも同じ)である。
 ビデオ撮影は多角的に証拠確保したいから、本船からの望遠撮影だけでなく、「ダッシュ」類似の回転翼UAVも母船上から複数飛ばして、敵こそが「アグレッション(侵略)」を仕掛けてきている模様を全周から近接撮影するのが特にのぞましいであろう。
 モーターボート・サイズになると、シナ本土から自走してくることは無理である。「母船式」としない限り、敵には同じ対抗はできない。それは今からの設計になるから、日本側が機先を制せられる心配はない。数年も後になって、敵が同質対抗をしてきたら、そのときはまた別策がある。
 ところで『ワシントン・ポスト』によると、DARPAが「装甲ハンヴィー」とMRAPの中間的な人員輸送高機動軽装甲車を公募しているじゃないか。締め切りは2015-4より数ヶ月前、という感じか。
 今のMRAPより重さ半分でなくてはならないという。つまり5トン以下だ。そして速力は倍でなくてはならないという。
 これは日本のメーカーの出番じゃないですか? すでに武器輸出は解禁されている。日本の企業がこの公募に試作車を提出したらどうなんだい。その意向を会社重役が公言するだけで、株は爆上りしますよ。