LCSが日本に寄港するってよ!

 あぁ、誰か見学に招待してくれんかな?
 浅海面用高速フリゲート艦の『フォートワース(USS Fort Worth)』が来月から半島沖でフォールイーグル演習に参加する。その前後には日本に寄港するそうだ(Rosalind Mathieson記者の2015-2-17記事「Littoral combat ship to debut at South Korea military drills」)。
 ちなみに米海軍はLCSを「フリゲート」と括ることを正式に決めた模様だ(ストラテジーペイジの2015-2-11記事)。
 『フォートワース』はその演習後はシンガポールもしくは南シナ海近辺の軍港に半年とどまるはずである。
 この軍艦のコンセプトは現在ではすでに色褪せている。LCSは失敗作だと確定している。水上軍艦はけっして「自動化・ロボット化」できないのだと実証をした実験であり実例なのだ。
 しかし、それを最初に発想してともかくも試してみたところが、アメリカさんの若々しい好ましさじゃないか? また、浅吃水の追求じたいは、テーマとして永遠であり正しい。地元の「函館どっく」のウリも、同じ重さの貨物を、低開発国のずっと浅い港へ届けられるという船型の省エネ貨物船だ。「浅吃水+低速」とすれば、違う価値が出るんだ。
 それにひきかえて日本の武器メーカーのザマはなんだ。後発後進工業国のメリットは、先頭ランナーの失敗を見て、それと同じ失敗を無償で避けられるところにこそあるはずだろう。ところが日本の兵器産業は、いやしくもアメリカで失敗しつつある最新流行にとびついて同じ失敗を追試・再現するチャンスがあれば、それを決して逃がさないと来た。税金をドブに捨てることについて、おそれ気がない。
 そして、檣のステルス化のような、もっと早く導入してもバチは当たらない優れた着眼は、いちばん遅くにしぶしぶと追随……。もうね、阿呆かと。タラズかと。
 もうひとつのわが国のどうしようもない部門、無人機。
 米政府は、プレデター級の攻撃型無人機の輸出規制を緩める方針だ(MATTHEW LEE and LOLITA C. BALDOR記者による2015-2-17 記事「US to allow export of armed military drones」)。
 飛行レンジ186マイル以上、そしてペイロード1100ポンド以上の無人機に厳しい輸出規制が課せられることは違いはないのだが、買い手が政府である場合には、違法使用しないという誓約をさせて、米国がそのコンプライアンスを売却後も監視しつづけることとして、商売そのものは緩和する。
 この不思議な記事は何故か中共には一言も触れていないのだが、兵頭の見るところ、これは中共がアフリカ諸国に「プレデターもどき+ヘルファイアもどき」を売り始めたことと関係しているんじゃないか? ボコハラムが中共版プレデターを1機撃墜したという未確認情報がある。
 ボヤボヤしていると世界市場をぜんぶ攫われちまうので、米国内のUAVメーカーが政府にロビーイングした結果だろう。
 補足情報を挿入する。なぜラッカ上空に無人偵察機を出せなかったか。どうもISILは、無人機に敏感になっており、頭上にそれを見かけたらばすぐに人質の河岸を変えてしまうという智恵をつけているらしい。だから米軍は、特殊作戦検討用の空撮写真は、空爆や陸戦の騒ぎにまぎれてそのついでに夜間に撮影するしかなかった。それで9月のシリア空襲開始前には、低空からの空撮写真は得られなかった。それと、写真と同時に、携帯電話の電波発信点と交話内容を解析して同じマップに重ねることが、事前に必要らしい。そのエリント&シギントは大型のUAVか低速有人機頼みなので、こんどは往復の途中でシリア政府軍のSAM(ロシア製)によって落とされるおそれがあったんではないか。
 さて中共のドローンは中共内でもすごいことになっている。不動産屋が土地調査のために全長2mのUAVを飛ばすことなど、ごく普通になってしまっているのだ。北京政府は、あわてて、北京市内のUAV飛行禁止ゾーンを設定しはじめた(ストラテジーペイジ2015-1-6記事)。
 また、玩具の業界人なら知っているだろうけど、いま、世界の4軸無人ヘリの市場を席捲しているのはシナのメーカーがつくった空撮オモチャだ。スマホにアプリを入れれば、スマホで簡単に操縦できて、そのスマホで空撮ビデオをモニターし録画もできる。これが先日、ホワイトハウス上空の飛行禁止区域に侵入して、大騒ぎになったものだ。
 空撮用無人ヘリは、ハリウッド映画や米国のTVロケの「絵柄」「視点」、コンティニュイティーまでをもガラリと変えつつある。数十年前の「ステディカム」やクロマキーの普及に続く、映像革命じゃないのかな?
 この分野で日本のオモチャメーカーやNHK技研が何の活躍もしていないように見えるのは情けない。じつは昨年のクリスマスに子供用に犬のロボットを買ったんだが、ホント、くだらねえ出来だ。子供も半日で飽きたみたいだぜ。
 唯一、昔から健闘しているのが、農薬散布用の1軸ローターの無人ヘリだ。この普及率は今でも日本が世界一みたいだ。個人の所有する耕地の区画が「不整」で飛び飛びに点在して、しかも山間にあったりするというのが、ぎゃくに、この無人ヘリの普及を促したんだろう。平地のダダ広い国なら、有人固定翼機(それも超STOLの特殊改造機)が出動するので、オモチャモドキは要らんわけだ。
 余談だが、ISILとボコハラムは、「戦闘ヘリ」はいまや何の役にも立たないという証明をしてくれている。にもかかわらずパキスタン軍は戦闘ヘリの新型が欲しくてたまらない。米国がAH-1W~Zを売らないので、ロシアから買うことになるそうだ。