韓国軍艦『Kim Ki-jong』号は何時進水するのか?

 今年はきょくたんに雪が少ないとよろこんでいたら、約定をたがえず、また3月10日のドカ雪が1日遅れで来た。
 ところでみなさんは「すがもり」という言葉を耳にしたことはおありだろうか。
 「すが」は青森県で「氷」を意味する方言らしい。そして北海道の建築業界で「すが漏り」といえば、軒庇下や屋根裏が、融雪水の浸透→氷結→融雪→……の反復によって長期的に木質部や不燃ボードの破壊が進行してしまうことを言う。(屋根の張り出した部分の下面に張る板は火災の延焼防止を考えて木材の使用が禁じられている。昔は石膏板だったが今はシリカ系とかの新素材。いずれにしても強度はほとんど無い。)
 滋賀県の「しが」がもともとの語源だろうと私は勝手に思っている。
 比良山地は京都にあれほど近いのにあれほど積雪が多い。だから氷の国といった意味で「しが」と称されたのではないか。
 長野五輪の会場のひとつでもあった「志賀高原」。語源は同じだろう。
 ただし「しが」が氷を意味するという人々の認識は、近畿でも信濃でも、とっくになくなった。それほど古いということだ。
 それが東北地方北部では発音が「スガ」に転じた。しかしそこでは、もともとの意味がちゃんと残っているのだ。
 以上は余談だが、しからば「スガ漏り」という建築業界用語は全国区で通ずるか? たぶん東北地方の南部以南では聞かれないのではあるまいか。私は長野市育ちだが、函館に転居するまで聞いた覚えがない。
 ここに、北海道の住宅の難しさがある。内地の気候しか知らぬ者がデザインしても、すがもり対策や落雪対策がよく考えられておらず、屋根の辺縁部や落雪・落氷を受け止める箇所の傷みが早くて、オーナーにはメンテナンス費用(修理費用)がコンスタントにかかり続けることとなり、はなはだしくは隣の家や通行人にも毎年のように危険を及ぼしてしまう。
 さりとて北海道は市場としては弱いから、そこを基盤に、メンテナンスコストの低い、完成度の高い耐寒住宅の設計技法が急速に進歩して行くだろうとは、あまり期待はし得ないのだ。
 老後にまでもかかってしまう住宅メンテコストをいかに軽減できるか、真剣に考えたこともない人間が、最近流行の、サイコロ形の、ほとんどデコラティヴな装飾がない戸建住宅を見れば、「つまらない」という感想を抱くかもしれない。しかしあのキューブ形状は、許容可能な新築予算の木造構造として、屋根の辺縁部を最小にし、落下物の破壊範囲を最小にするという点で、現時点での最善に近い解答なのだろう。
 ……と、築・数十年の借家に住みながら思ったのであった。
 この前、大家さん経由で風呂場の屋根の庇下の、剥落しかかっていた不燃板(もちろん原因はスガ漏りと「つらら」の引っ張り力)を交換してもらったときに、工事の親方に話を聞いた。この板を、たとえば「有孔セラミック板」にしたらどうなるか。たしかにメンテフリーにはなろうが、初期コストが数百万円は増えるということがわかった(1平方センチで数千円というフザけたオーダー)。
 これも、北国の住宅市場の規模が小さいせいで、セラミックメーカーが、建築に使える燃えない丈夫な薄板を、開発してくれてないんだろうね。残念です。
 しかし間違いなく広域火災予防には貢献するんだから、政府も補助金くらいつけたれよ。毎年台風の強風で剥がれる西日本の屋根だって同じですよ。チタン合金の屋根材を普及させたれよ。補助金で。そうすりゃ北朝鮮のミサイルなんて怖くなくなりますよ。
 すが漏りの予防のひとつの方法としては、屋根裏のいちばん高いところの横の壁に通風孔をもっと開けて、庇下の有孔不燃ボードから入った空気が、屋根裏のスペース内を、もっとよく通り抜けるようにしておくのがよい、という話であった。それだと冬季の「断熱」性はじゃっかん悪くなるのかもしれないが、屋根裏が破壊されてしまうリスクよりは、マシなのだろう。