ISが 志願者用のオンラインのテロリスト基礎指南講座を改訂

 ストラテジーペイジの2015-6-13 記事「Counter-Terrorism: Useful Advice For Potential Holy Warriors」によると、ISが海外の新兵志願者向けのオンラインマニュアルを改訂した。
 たとえば、新人戦士は、どうやってモスレムになったことを隠してその国を無事に出国するか?
 ヒゲをはやすな。イスラム風の格好をするな。礼拝は常に独りの時にせよ。目立たぬように軍事訓練せよ。それにはペイントボールを発射するトイガンが役に立つ〔サバゲーを独りでやれということ?〕。決して軍服風の衣類を身につけるな。
 女は、黒いヘッドスカーフはいかん。カラフルなヘッドスカーフでごまかせ。
 ISでもアルカイダでもタリバンでも、組織の上の幹部になればなるほど、公共電子通信にはいっさいノータッチである。クーリエ(伝令使)に口上を暗記させて、部下との間を行き来させるのみだ。盗聴/傍受される可能性がある有線電話や無線の使用は、最初からしないのである。
 しかし組織の下っ端にまで、それは強制できない。それが悩みなのだ。
 ※基礎解説しておこう。 タリバンは、アフガンの支配にだけ関心のあるスンニ派の鎖国主義集団である。かつてはサウジがスポンサーでパキスタン北部においてイスラム復古主義ワッハービズムを仕込まれたが、それは今はどうでもよくなっていて、芥子畑ギャングとつるみ、ヘロインの密輸権益を独占するためにアフガン人同士で殺しあっている。反ユダヤ主義とも無縁である。しかしアルカイダ幹部をかくまったために、アメリカ人は、タリバンとアルカイダを同一視するようになった。今は米国指導部が誤解に気付いて「手打ち」の交渉中。 アルカイダは、アメリカ攻撃と西欧攻撃に行動のプライオリティを置く、スンニ派復古主義指向の国際テログループである。80年代にパキ北部でCIAがムジャヒディンを後援していたときのサウジ人義勇兵が中心。今のサウド家などはアメリカやCIAの同盟者であるから滅ぼさねばならないと思っている。シーア派攻撃にはあまり興味がない。それが不満な者が、袂を分ってISを立ち上げた。 ISは、異端=シーア派=イランを絶滅することだけを唯一の行動目的として意識している、スンニ派シリア人とスンニ派イラク人中心の非国家戦闘集団である。アメリカとかはどうでもよくて、とにかくイランの影響を、中東ならびにアフリカ北部から排除したい。そのためにシーア派は必ず皆殺しにするつもりである。またシーア派以外のグループでも、「異端」「異教徒」「無神論者」のレッテルを貼ることができる近郷近在のすべての弱者に対しては、いかなる略奪・殺害・性奴隷化行為もゆるす。それが魅力となって、海外から志願兵を集めている。
 次。Przemys&&22;aw Juraszekという〔ポーランド系の?〕署名が珍しく付いている、ストラテジーペイジの2015-6-14記事「Death By Cellphone」。
 2015-6にISの馬鹿者が自撮り(セルフィー)を公開し、それをもとに米軍が22時間後に航空機からJDAMを3発投下して敵司令部建物を吹っ飛ばした。おそらく、写真データの中にGPS座標データを混ぜ込んで記録するモードをOffにしていなかったため、投稿データから、位置情報がバレたものと想像されている。
 しかしこのような「携帯規律」の問題はすでに正規軍でも起こっているのだ。
 携帯電話にカメラ機能が附属するようにったのは西暦2000年からである。
 やがてG3でそれを電送しやすくなった。
 2010年までにはSNSに写真投稿するのはごくあたりまえのことになった。
 2007年にイラクのゲリラが、迫撃砲攻撃によって4機の米軍のアパッチ攻撃ヘリを破壊することに成功した。その砲撃は、馬鹿な米兵がGPSデータ情報込みのアパッチの写真をUpしたことが手掛かりとなったのであった。
 ISの新人訓練指南書は強調する。写真を撮影するときは、現在位置データが保存されない設定とせよ。ISメンバーの顔が映っている写真を許可なく投稿してはならない。SNSに自己プロフィールを載せるときに、絶対に他教徒への殺意などほのめかすな。
 最前線の兵隊が携帯カメラで味方の支援砲爆撃の景況の写真を撮り、それを電送することで、味方航空機や砲兵に、この目標をもういちど叩いてくれ、という要求を出す。これは今や、普通になっている。たとえば東ウクライナ戦線の両陣営において。※間接FACだね。
 以下、兵頭の見立て。
 ペンタゴンが疲れた。以前はオバマが中東派兵を渋り、ペンタが尻を叩くという関係だったが、逆転した。スーザン・ライスとマクドノーが、シナと戦争するのが厭なのか、かつてのゲイツ長官のメソポタミア&アフガン向け「サージ」路線に戻ってきた。これにペンタはうんざり、というより、おそれおののいている。ペンタの代案は、もはやひとつしかないだろう。宿敵イランとの裏同盟だ。ISはシーア派皆殺し主義集団なのに、イラク人のシーア派は伝統的に無能・無気力なので、現イラク政権(シーア派)ではとても、イラク人(マジョリティはシーア派)の未来はなくなる。ISによる大虐殺とスーパーイスラミック難民時代の到来を予防するためには、軍事的に中東で最も有能なイランの「クッズ」(イラン版スペツナズ)と組むしかない。そうするとサウジはそれにブチキれて、イスラエルと組んで芝居を打ち、先にイラン空爆を始めるかもしれない。しかし米国は、「イランに関与する」政策によって、イランの核がイスラエルやサウジにとって危険でなくなるようにできるんだよ、と、イスラエルやサウジを説得できるだろう。ペンタはこの代案をこっそり共和党に説くのではないか。
 もうひとつのオプションは、国連すらも注目しはじめた、南アフリカのニュー・タイルのPMC=私営軍隊会社のSTTEP社である。ナイジェリア政府はこの会社に400万ドルを支払って3ヵ月間作戦してもらい、ボコハラムをほとんど壊滅させたそうだ。しかし契約により彼らは3ヵ月で帰ってしまったので、またいずれボコハラムも国境地帯で復活するだろうが、とにかく全くあたらしい「国連傭兵」の可能性までが、アフリカにおいては見えてきたのである。アルシャバブもこの手で膺懲できるわけだよ。それにしても「3ヵ月したら、敵を絶滅していなくとも、遠征作戦をやめて引き揚げる」とは、なんと『孫子』の「拙速」を正しく理解した会社であろうか。アメリカ人はいつまでもこれが分らないから、泥沼にハマるともいえる。しかしアフガニスタンでは、アメリカ軍特殊部隊は、一般の村人の「好意」を完全に収攬したようだ。アレキサンダー大王いらい、こんなことができた外国人は、アフガンでは初めてだろう。だからアメリカ人は馬鹿にはできないのだが、アメリカ大統領府の「選挙屋」側近たちが、大局眼や史眼をもちあわせていないのだ。