海兵隊の装備のスキャンダル構造

 2015-6-15付ワシントンポストのThomas Gibbons-Neff記者による記事「Why the Marines have failed to adopt a new sniper rifle in the past 14 years」。 面白いので摘録したい。
 アフガニスタンではマリンのスナイパーチームは8人で行動していた。こっちが先にタリバンを発見することもあれば、あっちが先のこともある。しかし彼らはいつも思い知った。どっちが先に発砲しても、敵の中機関銃の方がロングレンジで、こっちは撃ちすくめられてしまうと。
 そうなると、味方のCASを呼んでかたづけてもらうまで釘付けで、あとは何もできなくなるのだ。
 この情けない無様さの原因は、海兵隊の正式狙撃銃が「M40」といい、その口径が0.308インチで、基本的にベトナム戦争時代の非力な弾薬だからだ。それをず~っと使わされているためなのだ。〔ちなみに我が六四式小銃の薬莢の中身の装薬を3割ほど増量すれば、海兵隊の0.308弾と同じである。〕
 2003年のイラク侵攻のときも、マリンはM40A1という、この古めかしい狙撃銃の改良バージョンを携えていた。弾薬は、同じである。
 いまでもマリンはM40である。バージョンはM5からM6にアップグレードされようとしているが、しかし弾薬は同じだから、射程は同じ1000ヤードにとどまる。
 マリンのスナイパースクールは、ヴァジニア州クァンティコ基地にあり。その教官に聞いた。
 オレたちも、陸軍のような0.300ウィンチェスターマグナム実包(ウィンマグ)か、NATO諸国軍が狙撃手に使わせている0.338〔ラプアマグナム〕を発射する狙撃銃が欲しい。これらは射距離が大であるだけでなく、弾道がブレないので1000m以上でも容易に当たるのだ。
 米陸軍は2011年から、0.300ウィンマグを採用している。おかげで彼らは海兵隊の狙撃兵より300ヤードも余裕を得られるのだ。
 ペンタゴン用語では、狙撃銃のことはPSRという。プレシジョンスナイパーライフル。
 じつは、海兵隊の狙撃銃は、プレシジョンウェポンズセクションという、海兵隊の中にある「専門造兵廠」において生産されているのだ。修理もここで一手に引き受けている。その「工員」はほぼ全員、海兵隊の「武器係」である。
 もし海兵隊が他の狙撃銃を選択すると、PWS部門はリストラ対象になっちまう。だから、M40がアフガンでいくら不評でも、捨てられないのだ。
 陸軍は狙撃銃を民間メーカーから直接購入している。軍の造兵廠で製作したりしない。その方が、同じものを調達するのでも、予算が半分で済むのである。そして、もっと良い別な製品に乗り換えることもできる。
 すでにNATO同盟国はぜんぶ、狙撃銃を0.338口径ライフルに切り換えた。ひとり米海兵隊だけが、0.308を使っているのだ。
 ※いいえ。米海兵隊の忠実なコンバインド片割れ部隊である、わが陸上自衛隊をお忘れなく。
 風が吹いている環境下では、0.308と0.338の違いは圧倒的である。
 M40の射手は、微風下でも、風による弾道偏差を計算(因数分解)しなければならない。弾重の大である0.338なら、そんなことは気にしなくていいのだ。
 海兵隊は、いうならば、銃撃戦にナイフを持って飛び込もうとしている阿呆と同じである。海兵隊は、早く0.338に狙撃銃を切り替えるべし。
 ※この記事が米世論を動かせば、海兵隊はM40を捨てることになる。すると米海兵隊のコンバインドの片割れである陸上自衛隊も、M40ではいけなくなる。ところで、かつて陸自がM40の採用を決めたことで、海兵隊のPWS部門はどのくらいの利潤を得たのだろうか?