P-1は対潜哨戒機としては大量整備されんことがほぼ決定

 ただいま『兵頭二十八の防衛白書2015』の執稿最終段階で、マンガ家さんのフラフラ状態と同じありさまで、英文ニュースの紹介なんぞやってる場合じゃないんだけど、この記事だけは取り上げないわけにいかない。
 Ian Duncan記者による2015-6-21記事「US military seeking ways to knock drones from the sky」。
 ピーター・シンガー先生が、面白い本を出すみたいだ。チャイナと米国が、ドローンで戦争するSF。彼はいま、ニュー・アメリカ・ファウンデーションに籍を置いているという。
 彼の調べによると、武装ドローンを使っている国は8ヵ国で、その中にはパキスタンもあると。
 米国のアマゾンでは410ドル出せば、ゴープロ級の動画を空撮できる4軸ヘリドローンを買える。
 ドローン〔だけでなく、ロー&スローの飛翔体すべて。たとえば動力付きパラフォイル〕を普通のレーダーだけでは警戒できない。鳥と区別がつかないからだ。そこで、レーダーと望遠カメラを精密に融合させる方法が研究されている。
 ヴァジニア州のドローンシールド社は、自宅を空から覗き見されたくない人や軍のために、「聴音機」を開発した。ドローン特有の飛行ノイズを、150ヤード先から探知できる。
 飛翔する昆虫を空中で捕える肉食昆虫がいるが、そのセンサーを研究すれば、回答が出てくる。
 加州の基地では毎年、「ブラックダート」演習あり。UAVに対するさまざまな武器を試す。直近の演習では、明瞭に、イランのUAVを想定していた。
 ミサイルよりもドローンの方が安いということが大問題。「コスト・パー・キル」という。
 レーザー砲なら「1発1ドル」なので精力的に研究中。
 「投網発射砲」は漫画ネタだが、まじめに考究されている。
 以下、他媒体の過去ネタより。『チャイナ・デイリー』が2014-11-4に載せた話では、中共は低空ドローンを撃墜できるレーザー砲を実験したと。射程1.2マイルで、5秒の照射で撃墜できると。標的機は高度500m以下、速度は180km/時。
 兵頭いわく。ドローン撃墜用に、無炸填で何度でも回収して再利用できるSAMやAAMが必要になるだろう。離島では回収困難かもしれないが……。直撃によって撃墜する。あるいは空中でネットを火工品で発散してからめとり、着水後はブイを出して揚収しやすくする。これで証拠品も確保する。
 ついでに『兵頭版白書』の内容を少し前宣伝しときましょう。
 2015-1-14のどこかの記事にこんな話が出ていました。先月、スコットランド北端沖にロシア潜が来たので、米英合同で空からハントした。米のP-3Cはシシリーから飛来した。ロシア潜が定期的にやってくる理由は、そこに英軍のSSBN基地があるから。このハントには、フランスとカナダの哨戒機も加わっていた。これは『エヴィエーションウィーク』の特報。英国は財政難から2010にASW努力を放棄してしまった。ニムロッドは、その年から更改が必要なオンボロ機である。
 ……それで、英国はP-1のメーカーの川重と共同開発したがっているという話が違うところから聞こえて来る。これは乗ったらいいでしょう。というのは、日本国内では、ASW機としてはP-1は10機かそこらで調達が打ち切られる可能性が出てきたからです。海自がテストして、ダメ出しした。P-1は、メーカーズ・トイだったのです。米国製のブラックボックスの最新対潜専用コンピュータを積み、米海軍の対潜センターと、米軍の作法に則って暗号で直結リンクが維持されないようなシステムでは、機体ばかりがいかほどに高性能だろうと、無価値なのです。それでわかりました。あれほど兵器の国内生産にこだわるインドがなぜ、P-8の完成品輸入を了承したのか。インド人には、ASWはネットワークシステムだってことが、よ~く、呑み込めるのでしょう。
 では英国人はP-8の、というか、米海軍の対潜ネットワークシステムの威力を知らないのか? 知っているにきまっていますが、彼らはもっと別な思惑があるに違いない。米海軍のASWセンターにはアクセスできない第三世界に対して、こいつは売れるぞ、と踏んでいるに違いない。それは、乗ったらいいでしょう。英国はブルネイの国防にコミットしています(グルカ兵駐留)。だから、中共のためになるようなマネはしない。任せて大丈夫です。彼らがおもしろい案を出してくれるのを期待します。対潜ヘリを全廃しちまって後悔しているスウェーデンはじめ、バルト沿岸国にも、売ってくれるかもしれん。