次の海兵隊の制服親玉は、ネラー。

 『こんなに弱い中国人民解放軍』が小生の単著としてはかつてない刷り部数になっておりまして、つくづく、日本の大衆は「シナ軍は強い。おそろしい」という嘘話にはもう厭き飽きしているのだなぁと感じています。ところでこうした啓蒙図書が売れるということはとてもいいことなのですが、日頃貧乏な著者の場合、出版社に対する立場は却って弱くなっちまいまして、いくつかの「要修正事項」を、気安く「直してくれ」とも言えなくなるのであります。そこでこのさいこの場を借りて修正しておこうと思います。
 13頁1行目。連隊とあるのは大隊です。これは原稿には大隊と書いておいたのに、活字になったのを見たら連隊に変わっているわけです。校正さんが「上富良野にあるのは連隊ですよ」と余計な入れ知恵をしたのを担当編集者さんが真に受けたんでしょうね。で、わたしに相談なく変えてしまった。これでもう著者としては察するわけです。ああこの編集者さんには直しの要求を出すとかはまるで無駄であると。ならばもうすべておまかせしてとにかく売ってもらえばいいじゃないと。
 これは『孫子』にいう「勢」であります。すっかりいいようにおまかせをすることによって「勢」をつくってもらえば、結果オーライになるだろうとわたしも判断しました。編集者さんも複数の企画を同時に進行させているので、超ご多忙でしょうからね。
 まあわたしの履歴とかはどうでもいいんですが、だんだんどうでもよくなくなってくるのが103ページ1行目。「迎撃用のICBM」って何ですか? これは「反撃用のICBM」と書いたのを、やはり勝手に直されちゃって、わけがわからなくなっているわけです。部数三千部くらいで終わるならこんなものしょうがないか、すきにしてくれ、で忘れるつもりでしたけれども、1万部を超えて部数が伸びるにつれ、さすがにここはひとこと指摘をしておかないわけにもいかなくなりました。
 この本はわたしとしては『大統領戦記』の合間にかなり急いで書き上げた、あまり練ってもいない本でして、他のメチャクチャ力を入れたタイトルとくらべまして、内容を誇ろうという気には著者としてはちっともならないのですが、それがいちばん売れてしまっているというのは、じつに考えさせられるものがあります。『極東日本の~』とか『北京が太平洋の~』とか『日本人が知らない~』の方がずっと力を入れたものでしたのに……。手抜きをした方が売文商売としては成功するのか? 悩んでおります。
 以下、おもしろニュースのご紹介。
 星条旗新聞のTravis J. Tritten記者による2015-7-1記事「Blog: F-16 beat F-35 Lightning II in air combat test」。
 「戦争は退屈だ」というブログ(medium.com/war-is-boring)によると、F-35はF-16に空戦テストで勝てなかった。これは1月に加州エドワーズ空軍基地で実施されたテストに参加したF-35乗りの直接の証言である。
 しかしこれには開発担当部局からの反論あり。いわく。このときのF-35には最新センサーがとりつけられておらず、またステルスコーティングもしてなかったのである。また、ヘルメット内のセンサーがパイロットの視線を検知して、視野内の特定の敵機に、彼我の位置関係や自機の姿勢と無関係にAAMを指向せしめ得るソフトウェアも搭載していなかった――と。
 ※この論争には興味が無いが、思いつきしことあり。これからは空戦中に、敵機の光学センサーを眩惑してやれる、自動追尾性の防禦レーザーが開発され、装備されるであろう。垂直尾翼の端、主翼の端から、それは四周の随意方向に対して1点指向的に照射される。ドッグファイトの対手たるF-35式のパイロットのヘルメット・バイザー内には、もはやレーザーの点滅しか画像が映らなくなるのだ。これなら視線によるロックオンどころではないはず。同じ「光指向兵器」は、原発や飛行場を防空するための「フラックタワー」にも装備されるべきだろう。有事にはGPS類はECMにより全部狂わされるので、敵の発射する長射程巡航ミサイルは、最終ガイダンスを光学センサーに頼るしかない。その光学センサーを、フラックタワーからの自動追尾レーザー+マルチスペクトラムの指向性ECMで眩惑させれば、強力な煙幕と同じで、INS頼みの長射程ミサイルは、大きく外れるしかないだろう。指向性エネルギー兵器は、何も対象物を燃やしたり破壊するだけが能ではない。センサーを眩惑させるだけでも、価値があるのだ。
 次。ストラテジーページの2015-7-1記事「The Hidden Flaw Of The Su-30」。
 スホイ27系を使っている大きな軍隊は、ロシア、シナ、インドだが、そのうちインドだけがスホイ30のトラブルにみまわれ続けてい理由は何か。
 たしかにインドの気候は蒸し暑く、また、国営企業の品質管理の悪さはある。だがそれだけではない。
 じつは、インド空軍は、「実戦のように訓練せよ」という西側軍のモットーに忠実なのだ。そのため、そのモットーを有しないロシア空軍や中共空軍よりも、平時に多数の墜落機が出てしまっているのである。
 裏を返すとと、ロシアとシナのパイロットは、実戦的な訓練をほとんどしていない。空中での移動距離も、スピードも、機動の激しさも、実戦とはほど遠いレベルで済ませているのだ。それではいけないということは理解しているのだが、改革せずに今日まで来ている。
 平時の訓練をいいかげんなものにして自己満足するのは東洋の特徴的な流儀なのか? 違う。日本軍は対米戦の前から西側基準で鍛えていたので、開戦1年目は米英軍機をパイロットのスキルで凌いでいた。
 西側戦闘機の稼働率は70%だがインドのスホイ30MKIは55%である。
 喪失機はほとんどがエンジンが原因である。ロシア人は、それはエンジンに使われているボールベアリングのせいだと主張している。
 インド空軍は、訓練がまじめなので事故率が高いのである。
 ※これは何を意味するか。いざ実戦になったとき、インドの平時の事故率よりも中共軍機の事故率はもっと高くなり、中共軍機の稼働率はこっちが何もしなくとも急速に0割に近付くということなのだ。それともうひとつ。実戦的な発射訓練をロクにやらせていない中共の長射程巡航ミサイルは、有事には、不発射、途中墜落、逸走、不発が続出するであろう。
 さらに余談。
 国会の「違憲」vs.「合憲」論争に興味のある人は、拙著の『「日本国憲法」廃棄論』の文庫版の巻末附録を読むと、いちばん わかり易いよ。
 違憲なのは、九条二項の後半部分の方なのである。憲法条文が違憲なのである。こういう直感が働かない老人や青年は、さいしょから憲法学には向いてないのである。江藤淳は「法律と格闘する人はカンがよくないとだめだ」と言っていた。
 内閣法制局は、吉田茂から密命を受けていた。「爾後アメリカの命令で、李承晩や蒋介石ごときのために日本兵を半島や大陸へ出すことが二度とありえなくなるように、憲法解釈で今から縛っておけ」と。だから古手の法制局の役人が「派兵=違憲」論の立場に立つのは、「裏吉田ドクトリン」の当然なのである。
 古い法制局 vs. 外務省北米局・条約局 のバトルが展開しているのが、今の国会である。
 安倍内閣がこれをブレークスルーしようと思ったら、「政体として民主的な正当性を有する韓国政府から、日本政府に公式文書をもってする公開的な事前の嘆願がなされた後、さらに国会でそれを審議し懸念の無いことを確認できた後でない限り、わが自衛隊部隊を朝鮮半島内陸部において韓国軍と協同作戦させることは絶対に控えなければならない」と閣議決定することだ。これで「裏吉田ドクトリン」の遺命は保たれるから、古い法制局も黙るであろう。