くるど、くるど、くるど、くるど。てーごわーいーぞー。

 VIVIAN SALAMA記者による2015-7-27 記事「How the Kurds play into the fight in Iraq and Syria」。
 米国とトルコは、トルコ国境の外縁部に、ISを排除したゾーンをつくろうとしている。場所はシリア北部。
 これにクルド人が反発しており、シリアやイラク内で騒動が拡張するかもしれない。
 ※トルコの本音願望は国外クルドの消滅である。だから排除ゾーンにはクルドもいれたくないのだろう。
 米軍のCAS(空対地直協)とうまく連携できているクルド地上軍が、ISを駆除しつつ、シリア北東部に進出してきた。これがトルコには気に食わない。そこに「クルドの国」が設定されてしまうのではないかというのがトルコの心配。
 シリア内のクルド戦闘集団は、トルコ内の反政府民族組織PKKと連携している。これをトルコ政府は無視できない。PKKはイラク北部にも拠点を持つようになった。
 だから7-24いらい、トルコ空軍は、シリアのIS拠点に対してだけでなく、イラク北部のPKK拠点も空爆した。
 ※ISがトルコ内にテロを仕掛けたことがトルコ人には許せない。トルコ人はアラブ人に対する数百年間の「主人」であった。アラブ人には時々そのことを思い出してもらわねば、示しがつかなくなるとトルコ人は思っている。だから、やるときは徹底的に叩きのめす。おかげでWWIから百年たっても、アラブはトルコに謝罪も賠償も求めない。
 7-27には、シリア内のクルド武装集団YPGが、トルコ軍から砲撃を受けたと声明した。トルコ政府は、先に向こうから越境射撃してきたので反撃しただけだと言っている。
 ※小銃に対して大砲で応ずる。これがトルコ流だ。
 クルド族は、トルコ、イラク、シリア、イラン、そして米国に拡散しており、独自言語を持つ。宗教はイスラム教のスンニ派が大宗だが、イラン内のクルドを中心にシーア派もすくなくない。
 ※米国内のクルドが密かにリクルートされてJTAC(爆撃誘導員)に仕立てられていたのか。これで察した。
 WWIの結果、オスマントルコ領からイラクが分割されるときにあたり、トルコもイランもイラク政府も、「クルド国家」の新設だけはすまじ、と合意した。
 ※クルドは、人種的にはアーリア人、すなわちイラン人と同じであり、アラブ人=セム族とは異質だ。しかし欧米の新聞記事では「白人に近い」という強調はしないのがならわしである。
 トルコ内には1500万人のクルド人が住む。これは7600万トルコ国民の五分の一を意味する。ほぼ全員、表向きはスンニ派回教徒。
 ※多すぎ、かつ、居住が全国土に分散しすぎているがゆえに、独立させようがない。旧帝国支配層としては、むしろ同宗派の国民として包摂して行きたい(異教徒だったらアルメニア人のように追放してしまうまで)。それが矜恃である。
 トルコ内のクルド民族運動PKKは、1984以来武闘を続けており、その抗争の過程で死者数万人がこれまで出ている。彼らの要求は初期には分離独立であったが、今は自治権拡大である。
 PKKについて、トルコ政府と欧米政府は、「テロリスト認定」を下している。PKKの本質は、マルクシストである。
 ※解説しよう。強力なトルコ帝国内にあってクルド人が独立を目指そうとすれば、イスラム教の包括支配力に対抗する包括的で有力な理論大系を身につける必要があった。いちばんてっとりばやかったのが、1920年以降隆盛したソ連流マルクシズムだった。隣国ロシアは伝統的にトルコの宿敵である。マルクシズムを採用すれば、彼らは無神論のロシア政府からの秘密支援を受けることもできたのである。もちろんソ連=ロシアはPKKを、「ソ連軍の第五列」として利用せんとする。じっさい、グルジア侵攻のさいにPKKはロシアの「スペツナズ」を案内して暗躍している(トルコ内のパイプラインを爆破)。表向きはスンニ派教徒のようだが、指向性としては「近代」(マルクシズムは近代の一バージョン)なので、一部のクルド部隊に平然と「女兵士」も登場する次第だ。スンニ復古主義のISがクルドを「異端」どころか「無神論者集団」とレッテル張りして一切その人権は認めない(殺すも犯すも自由とする)ゆえんがそこにある。ただし、今なお少なからぬクルド人は、上述の政治的なマヌーバーとほぼ無関係に、おそろしく反近代的な家父長制の下で暮らしているので、アウトサイダーであるわれわれは、決して幻想は抱いてはならない。
 トルコ政府は2012にPKKと手打ちをしたが、2013に隣のシリアでISがクルドを大虐殺していることについてトルコ政府が何もしないので、PKKは活動を再開した。
 トルコ政府は、イラク内のクルド部隊は「友軍」と看做せても、シリア内のクルドはPKKとツーカーだと見ている。
 ※これはシリア北部では貿易ルートが事実上トルコ国境しかないので、シリアとトルコのクルドが親戚関係なのが自然なのである。イラクのクルドには交易ルートがトルコ以外にもあるため、トルコ領内のクルドとの紐帯は細いのだ。
 イラクでもクルド族は国民総人口の2割を占めている。
 シリアには内戦前に2300万の人口があったが、うち1割がクルドであったという。
 居住域の中心は、トルコやイラクの国境に挟まれた北東部だ。
 次。
 Christian Davenport記者による2015-7-25 記事「Sometimes revered, sometimes reviled Humvee may be ending its military career」。
 長年米軍の標準四駆車であったハムヴィー(高機動車)が、あと数年で姿を消しそうである。DoDは民間競売会社にオンラインで廃用車の委託販売をさせている。最低入札価格は、7500ドル。
 いまや米軍は、ハムヴィーの次の標準四駆車を選ぶ過程にある。それはヘリで運べるギリギリの重さで、IEDにできるだけ耐えてくれて、しかも敏捷に荷物を運べることが要件。
 次世代のその新車両をJLTV(Joint Light Tactical Vehicle)という。三大巨大軍需メーカーが試作品を米軍に提出して、55000台のその受注を競っている。この夏に、そのメーカーは決まるだろう。
 回顧すれば、ハムヴィーの民間版があり、それはシュワルツェネッガーのおかげで、よく売れた。
 だがあまりに燃費が悪い(1ガロンで10マイル)というので環境団体が加州のディーラーを焼き討ちしたこともある。
 いま、生産ラインは閉鎖されており、最後の生産車は2010年型である。
 ハムヴィーは米軍での採用は80年代だったが、実戦投入は1991湾岸戦争からであった。
 いらいAMジェネラル社は30万台を生産し、60ヵ国に納車した。
 後継車には、MRAP並の耐IED力、ハムヴィー並の走破力と、旧来以上の荷物搭載余裕が求められている。
 名乗りをあげているメーカーは、AMジェネラルと、オシュコシュと、ロッキードマーティン。
 オシュコシュは正規版MRAPのメーカーだった。
 もちんハムヴィーが一夜にして米軍から消えるわけではなく、これから数年は残る。しかし大事に残してもどんどん修理コストがかさむので、納税者の利益にはならない。よって急速に消えるはず。
 「アイアンプラネット」という、米軍が正式に委托しているオンライン中古車オークションでは、毎週50台のサープラス・ハムヴィーが競売に出されている。
 農園主らがよく買っているという。
 あるメリーランドの大学生は、1台をわずか1万ドルで手に入れることができたという。
 ※『朝雲』によると技本が7月から「安保技術研究推進制度」――要するにDARPAの日本版――を始めたようだ。以下のコア技術を抱えている研究者は、ダメもとで応募してみるべきだと思う。
・対人地雷の毀害力を局限してしまえる靴底素材。
・核爆発や高性能炸薬が発する熱を効率的に遮蔽できる服地素材。
・決して燃えないタイヤ素材。
・土工重機の操縦席に縛り付けて人間オペレーターの代わりをさせる、手足と目はあっても自律歩行などしない、遠隔あやつり用ロボット。
・自動二輪車の左右にスタンド代わりの「ロボット側脚」を生やした、無人の輸送バイク。
・分隊軽機のMINIMIに取り付ければ、旧軍の92式重機関銃並の遠距離狙撃能力が実現する、有害反動ベクトルを完全にキャンセルできる「ロボット三脚」。
・普通科の小銃を架設すれば、高度300m以内の小型UAVに対する精密でムダ弾の無いAAMGとなる、ロボット対空架台ならびに軽量照準システム。
・中型UAV射出用の電磁カタパルトとその電力発生システム。
・不発弾内の炸薬が発射後/投下後数年にして自然に化学的に非活性化するメカニズム。もしくは数年にして弾殻の一部が腐朽して内部炸薬に環境中の水分が浸潤する構造新案。