杉浦久也さんの過去記事を精読している暇がないのが残念である!

 上院軍事委員会委員長の John McCain 氏本人による2015-9-6 記事「The real Arctic threat」。
 上院議員団だってとっくに北極圏は視察済みだよ。
 プーチンは新帝国主義を推進中だ。
 やつは北極圏と欧州の北端に次のターゲットを絞っている。
 危機意識を共有するのは、ノルウェー、スウェーデン、ラトヴィア、エストニアなどだ。このうちエストニアのサイバー戦能力には私は瞠目した。
 北極海は、次の数十年のゲオポリティカルな草刈場になるであろう。
 ロシアは北極圏の古い基地を再建し、かつ、新設も続けている。
 中共が南シナ海でやっていることと、ロシアが北極圏でやっていることは、同じである。
 プーチンは、北極海でグレートゲームをやる気だ。
 オバマ氏に言われるまでもなく、米国のプレゼンスの確保のため、砕氷船は必要である。
 ロシアは27隻を運用中〔うち数隻は核動力エンジン〕。米国はコーストガードが2隻しか保有しておらず、しかも1隻は修理中で動けない。「参戦」もできない状態なのである。
 米国と西欧は、またしても、ロシアの野望を抑止するために団結する必要が生じている。
 紛争を防ぐために、われわれが有力な砕氷船団を伴う水上艦隊を北極海に展開させなくてはならない。
 次。
 米海大教官の James Holmes 氏による2015-9-5記事「Sunk: America’s 5 Worst Naval Defeats」。
 敗北からより多くが学べる。敗北はわれわれを進歩させる。
 南北戦争で北軍海軍は南部沿岸をブロケイドし、河川も支配しようとした。
 大先輩マハンいわく。南部はミシシッピをあけわたすことで、北軍が彼の心臓部に進入することをゆるしてしまった。シーパワーがフルに発揮された例である、と。
 しかし南軍も数隻の軍艦を「レイダーズ」とよばれる海賊船に仕立てて、英国沖や、アゾレス諸島で、北部の商船や捕鯨船を襲撃した。
 この海上ゲリラは、北軍のブロケイド戦力を分散させ、北部商船の保険料を値上げせしめ、外国商品が米国船ではなく他国船に積まれるように仕向けた。
 「フェア」な海戦で米艦隊が最大の敗北を喫したのはサヴォ島沖夜戦だ。
 しかし弱者の立場で戦争して水上でもボロ負けしたのは、独立戦争のときだった。
 独立戦争でつくづく知ったのは、海軍を育成するのは、陸軍を育成するよりもはるかに手間ひまがかかるってことだ。
 日本の戦艦『三笠』の内部には、東郷、ネルソンと並んで、なんとジョン・ポール・ジョーンズが顕彰されている。
 しかし事実は、米国の独立は、フランス艦隊がヨークタウン沖を封鎖してくれたおかげ、だったのである。
 ワシントンの次の大統領だったジョン・アダムズは、連邦にとって海軍力が大事だってことはよくわかっていた。しかし充分な海軍の建設には失敗している。
 このため、英国は米国をあなどるようになってしまった。
 このあなどりが、1812の米英戦争の原因である。米国はボロ負けした。
 では、どうすればこの悲惨な事態は回避できたのか?
 カリブと英本国の間の海上交通を妨害してやることは、米国の力量でもできたはずだ。その力を米国が備えることで、対英戦争そのものを抑止できたはずだ。
 全地球的な軍事資産をくらべたら、もちろん初期の米海軍は、世界一巨大な英海軍には、勝てたはずなどなかった。しかし米大陸の近海において、局地優勢をつくることはできたはずである。
 1812戦争は、「政府が軍事国策としてやってはいけないこと」の教材である。米国は、その海軍を、自国の近海ですら海上を支配できないような弱体な組織にまで落ちぶれさせてはならなかったのである。
 ※中共を「コンテイン(封じ込め)」しろ、という主張は、これまで米国の公人が遠慮して使わなかった政治用語である。しかし、そろそろそのタブーはなくなりつつある。たとえば Noah Feldman 氏はブルームズバーグの2015-9-6記事の中で、〈中共はコンテインしろ。そうすることで、将来の紛争が起きなくてすむようになる〉と訴えている。つまり米海軍を増強して南シナ海へのコミットを深めることが、逆に戦争リスクを減らすという正論だ。