「軽量鉄骨×コンパネ」の住宅に補助金を出すことは、災害が起きた後で地域を復興させるよりもはるかに国庫の節約になろう。「各戸完結型のソーラー蓄電システム」は、「低品質売電ヤクザへの全国民みかじめシステム」よりも安心で健全だとわかったろう。

 William McCants 記者による2015-9-11記事「Ten silly ideas for fighting ISIS」。
  次期大統領は、その就任の第一日目から、IS対策に腐心しなければならぬはずよな。ならば、共和党の各候補たちは、いったいどんな腹案を用意しているのだろうか?
 実業家のドナルド・トランプ候補は、ISの資金源になっている油田を米軍に占領させてしまえばいい、と言っている。
 ベン・カーソン先生は、ISが強いのは信念が強いからだという。それに比べてアメリカが弱いのは、アメリカの古い価値観が「ポリティカル・コレクトネス」のために弱められてしまっているからだという。だから、アメリカ人もまた古い価値観を強く信じさえすれば、ISは撃砕できるという。
 前フロリダ州知事ジェブ・ブッシュ候補の戦略。イラクについては政府軍に対する米軍人の顧問の数を増やす。シリアについては、比較的まともな反政府ゲリラたちを後援するとともに米軍も投入してアサドを倒す。また、シリアについてはノーフライゾーンを強制して無辜住民を守る。
 上院議員であるテッド・クルズ候補。ISが米本土を攻撃しない限り、そんな連中は放っておけ。もし奴らが米本土を攻撃しようとしたら、米空軍がその能力を破壊してくれるわ。そしてその後の中東国家の再建などわれわれの知ったことか。海外の内戦にアメリカは関与するな。
 上院議員マルコ・ルビオ候補。シリアのISを米軍は空から直接攻撃するべきだ。しかし、米軍はあくまで航空機によるCAS〔この意味がわからん人は『兵頭二十八の防衛白書2015』を嫁〕だけをすべし。現地の地上に派遣して可いのは、特殊部隊、後方兵站、情報支援だけだ。
 ウィスコンシン州知事スコット・ウォーカー候補の提案は、ジェブ・ブッシュの提案をすべてにおいて抑制したもの。たとえば、顧問は地上に派遣してもいいが、米軍を送り込んではいかんという。
 カーリー・フィオリナ候補。ひとつの解決案をこっちから出すのは拙ない。中東におけるアメリカの同盟者たち。彼らの提案をまずぜんぶ聞け。話はそれからだ。そのためにキャンプ・デイヴィッドでサミットを開こう。
 オハイオ州知事ジョン・カシク候補。フィオリナと同意見だが、けっきょくのところは国内の有権者にはいくら不人気でも米地上軍を出すしかないと思っている。
 前アラスカ州知事マイク・ハッカビー候補。クルドに武器を渡せや。米軍はもっと空爆しろ。米地上軍を出す場合は、それは絶対にサウジ軍やヨルダン軍や他のアラブ諸国軍よりも少人数にとどめる。まず周辺アラブ軍が矢面に立つべきだからだ。
 ニュージャージー州知事クリス・クリスティ候補。おれたちは中東の占領者にはならない。反ISの立場の周辺アラブ政府軍をいろいろと支援しよう。しかし米兵は送らない。
 記者、評していわく。トランプ案はうまくいくまい。今のISの主たる資金源は油田ではないので。
 カーソンらは、かつてのオバマの当選戦略を真似ている。具体的な軍事戦略をできるだけ選挙期間中には語らない。当選するまではイメージだけを先行させて、有権者の夢を勝手に膨らませてやればいいという計算。
 ブッシュとウォーカーは、シリア問題の根源がアサドだとわかっている。だが2人は、アサドが倒されたあと、どうするのかを語っていない。数派の勢力が入り乱れての内戦がさらにシリアで続くはずである。そこに米軍はひきつづき現地において関与するのか? だとしたらどのように? 知りたいところである。
 クルズは、ISの第一目的が中東にスンニ帝国を築いてシーアを根絶することであり、米国攻撃なんかどうでもいいという事実がわかってない。
 ※来月の「読書余論」では、1974年刊のBryan Cooper氏著『The Story Of The Bomber 1914-1945』を含めたい予定である。著者はたぶん英国人なので、英国の航空爆弾について最も詳細に記しているが、ドイツの爆弾についてもかなり詳しく分かって貴重なものだ。なかでも驚いたのは、米海軍艦上機がレイテ海戦以降に日本の『大和』『武蔵』に対して投下し、バイタルパーツ以外の箇所に関しては有効であったと認められているAP/SAP弾の1000ポンド型についてのスペックが載っていることだ。1000ポンドAP弾は、炸薬が全重の14.5%で、径73インチ、翼径16.6インチ。尾部信管のみ。ただし正確な全重が不明である。セミ・アーマー・ピアシングの1000ポンド爆弾の方は、炸薬31%とあるが、やはり正確な全重が分からない。米海軍と陸軍航空隊は、対軍艦攻撃を最初から予測した場合でも、マリアナ海戦以前は、瞬発信管付きのGP爆弾しか吊るして行かなかった。それが1944のある時点で、方針が切り替わった。戦時中にSAP/AP弾の開発をした理由とともに、そのへんが解説されている本を見た覚えがない。あきらかに米軍は、この爆弾の詳細を現在までも秘密に保とうとしているのである。その理由は、過去に何度か推定して書いたところだ。
 ※「読書余論」は、「アジ歴」や国立公文書館のようにデジタル化が進んではいない、たとえば防研図書館の所蔵史料等まで広く渉猟して摘録してありますので、オンラインで「アジ歴」などをいくらサーチしても出てこない情報に関心がおありの向きは、購読をして損はありません。1回分を500円で試し買いしてみれば、その価値をご納得いただけるはずです。