「インドネシア鉄道事件」には日本政府としてどのようなオトシマエをつけておくべきなのか?

 大規模建設プロジェクトや、高額兵器を、日本政府のプッシュのもと、技術の遅れた諸外国へ輸出することで外貨をがっぽり稼ぎ出そう――などと目論めば、それは必然的にダーティ・ビジネスへのコミットになる。(旧)通産省の阿呆どもにはどうしてもそこがわからない。というか、それはどうでもいいことだと思っている節がある。
 ところがこれはどうでもいいことではないのだ。「ダーティ・ビジネスには関係しない」というのが、日本の有権者が信じている日本の自画像なのだから。
 明治維新いらいのナショナル・アイデンティティの「真・善・美」を、(旧)通産省は汚そうとしているのである。
 ビジネスの引き合いから、その途中の努力から、さらには納品の完結のその後々までも、作って売る我も心地よく、買う彼もまた大満足するという関係を、われわれ日本人は理想視している。それは追求してみる価値のある現代人の幸福ではないのか? 日本人の「特権」はそこにあるのだ。
 インドネシアの地政学的な立ち位置を、(旧)通産省の阿呆どもは理解していないから、ここでレクチャーする。
 タイとインドネシアは、がんらい「親支」である理由はないが、すくなくとも、スプラトリーの島嶼領有の対支係争に関与しないという政策を選んでいる。
 これは、北京から見て、この2国が、南支那海の「違法領有」を狙うさいに、「トロイの馬」として利用し易いことを意味している。
 すなわちシナは、タイとインドネシアを籠絡してしまうことで、マレーシア、ベトナム、フィリピンという、スプラトリーをめぐっては明瞭に「反支」である3ヵ国に、背後からいやがらせの揺さぶりをかけることが可能になるのだ。否、長期的には、軍事作戦基地として利用しようとも考えているであろう。
 現在の日本は、反支連合を唱導しなければならぬ立場に、否応なく置かれている。日本は、セルフ・プリザヴェイションの保持のためにも、フィリピン、マレーシア、ベトナムを糾合して中共に対抗するようにしなければ、アジアの自由は甚だ危うい。
 そこで日本政府がこれから取るべき地域政策は、おのずから方向づけられるのである。
 具体策を延べよう。
 カリマンタン島(ボルネオ島)の西半分にあるマレーシア領を縦貫する「軍用鉄道」を、日本の援助で敷設することだ。
 じつはインドネシアは、カリマンタンのマレーシア領やブルネイ領にある油田を、昔から欲している。じっさい過去に侵略を試みたこともあった(兵頭の旧著『極東日本のサバイバル武略』に詳しく書いてあるはず)。
 そして中共もまた、南支那海から続いているカリマンタン西岸の地下油田が、欲しくてたまらないのだ。
 その中共はいまやインドネシア政府との結託関係に入ったのだから、ボルネオ島における軍事緊張が次第に高まることは必定である。
 中共とインドネシアによる将来の非望を抑止するためには、カリマンタン島のマレーシア領の軍事インフラの整備に日本が注力してやらなければならないだろう。もしその企図の抑止に失敗すれば、こんどは日本兵が直接にシナ兵と戦わなければならぬであろう。軍用鉄道援助は、そのような事態を避けられる上策なのだ。
 軍用鉄道であるから、むやみに高速仕様にする必要はない。ディーゼル機関車が牽引する広軌列車でいい。なまじ電化などすると、ゲリラの浸透攻撃で簡単に機能停止させられてしまうから、むしろまずいのだ。
 ただし、燃費のよさや低公害性にはこだわってみる価値はあるので、JR北海道が計画して予算不足から頓挫した、新型ディーゼル機関車を、このさい国費で完成した上で、気前よくマレーシア政府に援助してやることだ。
 この複線と並行して、石油と天然ガスのパイプラインを敷設し、軍用飛行場も併設すれば、インドネシア以外のすべての国がニコニコするだろう。これが、日本国らしい、今回の一件への「おとしまえ」のつけ方だと思うが如何。
 同様の軍用鉄道は、マレー半島のコタバルからアロースターまで、タイ国境に沿って敷設することもできる。シナに籠絡された国には、当面、明るい未来がないということを、日本の力でわかりやすく見せ付けることが、必要なのではないか?
 そのぐらいの意地すらも示さないのだとするならば、これから日本国、日本政府、そしてわれわれ日本人は、アジアのあらゆる方面において、舐められるばかりであろう。それは誰を幸せにするだろうか?