友好は金とひきかえには達成されない。「友好」を売ることに成功した側は、さらに「友好」を買わせることができるからである。

 Daniel L. Byman記者による2015-11-15記事「Five things to know about the Paris attack」。
  ISは2014に登場した。それ以前には存在しない。
 あきらかに今回は末輩のローン・ウルフが思いつき的にやらかした反抗ではない。欧州を襲った初めての組織的かつ計画的な、同時多発大量殺戮テロである。
 過去数週間で何が起きているか。まず、ISはイラクのSinjar市をクルド部隊のために追い出されてしまった。たいへんな不面目である。
 他方、ベイルートのシーア派居住区(おそらくヒズボラの司令部所在地)で自爆テロがあり、40人以上死亡。ヒズボラはISの不倶戴天の敵である。
 またシナイ半島上空ではロシア民航機が空中爆発して224人死亡。※この爆弾は貨物室内の気圧変化で安全装置が解除され、携帯無線で起爆されるものではなかったかと思う。あるいはデジタルタイマーで安全装置が解除されて、気圧がトリガーになるものか。
 フランス政府は1980年代にはテロリストに甘いところがあった。しかし1990年代にアルジェリア人がパリでしきりにテロをやらかしたので、以来すっかり対テロ闘士に変貌して今に至る。
 フランスは「世俗政治」(脱教会)を堅持する国体であるのが誇りである。たとえば女の「ヴェール」着装は許容しないし、他方で下品な宗教攻撃漫画を擁護する。
 ISは義勇兵をすこしでも欧州からイラク+シリア戦線に多く結集したいと思っているのであり、わざわざ兵隊を欧州へ送り出したりはしていない。
 せっかくできたすばらしい「カリフェイト」から異教徒圏へ逃げ出すような「難民」どもは、宗教的に大罪を犯しているのだとISは宣言している。
 ※つまり今回の犯人はシリアから派遣されてきたものではない。
 こういうテロを事前に警戒しようとしても、封殺は無理。フランスはちゃんと警戒してましたから。
 米国内にはもともと反政府的なモスレム人口はほとんどいないので、フランスのケースが米国にすぐ波及するとは思わん方がいい。
 ※日本で警戒するとしたら、アルミ蒸着の袋に水素を充填して導電性ワイヤーで相互に結束した多数の風船を、山の中の原発送電線の真下で放球する対物破壊テロ。2015-11-4に河南省鄭州市で起きた事故は、はからずも、アルミ蒸着水素風船は多数が結束されると高圧送電線を破断させられるだけの威力があることを立証してしまったから。
 次。
 Bob Owens記者による2015-11-10記事「Military Wants On-Base Concealed Carry, Will Likely Get It」。
  テネシー州のフォートフッド基地内で2009にイスラム信者兵による乱射事件があったことはいまだに米軍の心掛かりである。この種のテロの再発をふせぐために、基地内では、有資格の将兵に「拳銃」を常時携帯させてはどうかという意見がある。米陸軍内ではその意見は強く、連邦議会内でもこれを支持する人々がいる。
 ※パリ事件は、この法案の追い風になるだろう。海外の米軍基地でも、みんな拳銃を常時携帯するようになるかもよ。ダッジ・シティかよ!
 ※余談。 Bill Hayton という国際法に詳しい人が 2014年に『The South China Sea: The struggle for power in Asia』という参照価値の高い解説書を出してくれているらしい。スプラトリーの問題はそもそも台湾の国民党政府が最初に種を播いたんだという経緯も正確に詳しく紹介されているようだ。これは訳刊されないのだろうか?