いま、ナヴァロ教授が面白い。

 Christopher P. Cavas記者による2015-11-19記事「Two USN Carriers in Japan?」。
   CSBAのアナリストのブライアン・クラークが、日本に常時2隻の米空母を置け、と提案している
 艦上機の陸上での置き場は厚木だけでは狭いが、岩国が拡張されているので、海兵隊と同居すれば問題は解決する。
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 ?記者による2015-11-21記事「The future of sniping  Enemy at the gates  New technology is improving military sharpshooters’ range and accuracy」。
  ヴァジニアにあるシンクタンクのグローバルセキュリティによれば、世界でいちばんおそろしい狙撃銃は、ノルウェーのナモ社が作ったラウフォスMK211というモデルで、500m先で厚さ15mmのスチール鈑に30度という浅い角度でヒットしても貫通できるという。
 しかもこの弾丸には炸薬が入っていて、貫通後に爆発し、さらに焼夷剤によって内部の燃料に点火できるという。メーカーによると、1発でヘリコプターを墜とせるそうだ。 ※口径情報が皆無。何だこの記事は?
 しかるにこのたびニューメキシコ州で米軍から開発を請け負っているサンディアナショナル研究所は、狙撃銃から発射後の弾丸を空中で軌道変更させる技術を完成した。
 ライフル銃身から発射する、有翼弾。サボで包まれていて、サボは銃口を出たところで剥落する。
 射手の相棒のスポッターが赤外線レーザーで照らしつけているところを、弾丸内蔵のセンサーが検知して、フィンを操舵してコース修正する。
 操舵信号は1秒間に30回のサイクルで、発せられる。
 すべての精密メカが、発射時の12万Gの加速度に耐えねばならない。メーカーは、それをなしとげた。
 これとは別にDARPAも、EXACTOという自律誘導弾丸を開発中である。
 こちらは、フィンを使わない。12.7mm弾が旋転したまま空中で軌道修正できるという。その具体的方法は謎。
 誘導電波は銃の側から空中の弾丸(の弾尾)に対して指令される。よって、スポッターのレーザー反射には依存しない。
 サンディア社はXM25のメーカーでもある。この25mmの擲弾は無誘導だが、内部に、旋転の回数をカウントするチップが入っている。旋転数によって飛距離を知るわけだ。あらかじめインプットした飛距離に対応した旋転数を感知したところで爆発する。だから物蔭の敵兵の後頭部の上空で爆発させてやれる。
 しかしアフガンではこいつの取扱訓練中に早発/腔発事故が起き、兵隊1人が負傷している。まだまだ完成品ではなく、実戦配備は2017だろうという。
 ※爆発弾頭には常にこの「自爆事故」のリスクがつきまとう。だからWWIIの初期の英軍戦車の小口径砲には、ソリッド弾頭しか搭載させなかったのではないかと思っている。
 テキサスの会社、トラッキングポイント社は、スナイパーの仕事をおそろしく単純化した。このメーカーの新開発のシステムを狙撃銃にとりつけると、射手は、そのときの風速をインプットして、敵兵のシルエットに向けてほどほどに照準して、引き金を引くだけでいい。引き金を引いても実包プライマーはすぐには発火しない。銃身がいちばんいいところに来たときに、コンピュータが見計らって発火させる。敵兵のシルエットのどこに当てるかも、コンピュータがちゃんと最善の選択を考えてくれている。だから、いかにへたくそな射手であろうとも、もはや、外れ弾というものは、絶対に発生しないのだ。 ※アーチェリーの「クリッカー装置」からの連想だろうね。
 こうなると次に来るのは、狙撃手そのものを失業させる時代であろう。
 おそろしいのは、トラッキングポイント社の製品は、海外輸出に何の制限もない。サンディア社の弾丸とエグザントは輸出禁止品目なのだが。
 さすがにトラッキングポイント社には海外からのハッキングの試みが殺到しているそうで、同社では外部とのインターネット接続を今では完全に遮断してしまっている。
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 Peter Navarro記者による2015-11-18記事「China’s ‘Carrier Killer’ Missile Strikes the 2016 Presidential Debate」。
  ※この記者は最近『クラウチング・タイガー』という、極東での米支戦争を予言する本を米国で出した。内容をざっと読んだところ、反日的な記述がひとつもない。しかも、韓国発のでたらめな情報をひとつも引用していない。反支でしかも親日、そして韓国はスルー(最低限の事実紹介だけにとどめている)。すがすがしく、じつに「読中感」がイイ。この人はすでに類似の本を2冊出している。そのなかで一貫して「シナ製品をボイコットして米国内の製造業を守れ。海外に工場を移すような米企業には高税を課せ」という正論を説き続けている。とにかく面白い人だ。
 土曜日に迫った、ニューハンプシャー州での民主党の公開ディベートのために、CNNは質問を用意した。それは、いわゆる中共の「対艦用弾道ミサイル」(米空母キラー)についての、各大統領候補の識見を問わんとするものだ。
 そもそもそんな兵器が実在していると認めるのかどうか、認めるならその有効性をどう評価しているのか。まさに、大統領としての軍事的教養があきらかになる。※ナヴァロ氏は、否定も肯定もせず、ただ、孫子の「戦わずして人の兵を屈する」を挙げるのみ。実在しないことは当然わかってるはずだ。曲者なんだよ。
 このテーマについて一般視聴者がわかりやすいように事前に知識を与える「コンパニオン・ビデオ」が用意されている。
 その中で、米海大のヨシハラ教授〔ラヴァロ氏が最新刊でいちばんたくさん所説を引用している権威。ちなみに兵頭はこの人をあまり高く買わない。ハリウッドスターの検死をやった日系医師と同じ臭いがする〕や『フリー・ビーコン』編集者のビル・ガーツ記者らが対艦弾道弾の基本コンセプトの解説をしてくれる。
 またそうしたミサイルを30ノットで走る空母に命中させるのがいかに難事かについては、トマス・X.Hammes氏〔海兵隊を三十年努めた古手の毛沢東研究家で、2006にラムズフェルドは辞任しろという声を挙げ、やはりラヴァロ教授の最新刊中には何度も引用されており、兵頭が首肯できる所説が多い〕らが説明してくれている。
 共和党のディベート大会は次はネヴァダである。そこではこういうテーマを論じたらどうだろうか。――なぜ米国との交易で得た稼ぎを、米国をやっつける邪悪な兵器システムに投入しまくっている中共のようなトンデモ国と、われわれはつきあいをし続けなければならないんだ? われわれはシナ人が米国市場にはアクセスできないようにもっと制限するべきではないのか――。
 トランプ候補はわたしに賛成である。※トランプはシナ問題で頼りにしたい専門家20傑の中にナヴァロを挙げる。しかるにナヴァロ氏はレッキとした民主党右派(市長選や連邦下院選に出た過去がある)なので、ヒラリーが当選したとしても、存在感が増すわけ。奇貨おくべし。
 テッド・クルス候補とマルコ・ルビオ候補は全くダメである。この2人は、シナ人がいくら米国を脅威しようともシナとつきあえというスタンスなのだ。
 中共政府によるアンフェアな「元」の為替レート相場操作を、クルスとルビオは容認している。
 カーリー・フィオリナ候補は、かつて某会社のCEOとして、製造拠点を米国内からシナへ移してしまうことにより、米国内の雇用を数千人分も減らした女だぞ。
 ランド・ポール上院議員は孤立主義者だから、対艦弾道ミサイルがあるのならば米海軍はハワイまで撤退しろ、と言うわけだろうな。※ラヴァロ氏は孤立主義者ではない。ミアシャイマーに私淑しているから。
 ※ここでひとつの事実を提示しておこう。ナヴァロ氏の最新刊を読んだ人なら、この意味がわかるはずだ。テッポウの弾丸には銅が必要である。銅は、「銅精鉱」の形で輸出され、消費国で精錬される。シナは世界の銅の半分を消費している。シナはチリから銅精鉱をバルクカーゴキャリアで運んで来る。毎年数百万トンもだ。民航船は最終積港と最初の揚港を結ぶ大圏航路を通る。チリから極東まで、貨物船で三十数日である。その航路は太平洋を西回りに横断するコースとなる。マッキンダーが口を酸っぱくして言っていたように、地政学を論ずる者は、ぜったいにメルカトル図を見ていてはいけない。地球儀にゴム紐を当てながら考えること。そしてもうひとつ。(株)商船三井の広報室は、とても親切だ。
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 Alex Calvo記者による2015-11-18 記事「He Who Defends Everything Defends Nothing」。
  国際仲裁法廷でフィリピンはシナに対してどんな法廷戦術によって勝利できるか。
 勝ち目はある。
 スペインの古地図がある。そこにはスカボロ礁がバヨデマシンロクという名で載っている。スペインは米西戦争後にパリ条約によって比島をアメリカに渡したのだ。
 この暗礁の正確な経度と緯度が海図に載るまでには年月がかかった。
 そのため、1748-9-12に英国東インド会社所有の軍艦『スカボロー』が座礁事故を起こしてしまう。この事件からマシンロク島にはスカボローという別名が与えられたわけだ。
 1792-5にマラスピナ探検隊が、ようやく正確な座標を報告した。
 ついで1800年にカビテ湾を根拠地とするフリゲート『サンタルチア』号が詳細な測量。
 このフネはフィリピンに配備された最初の蒸気動力軍艦だった。スペインは、スル諸島のサルタンや、海賊と奴隷輸出に精を出しているイスラム教徒のモロ族と戦わねばならなかったのである。
 以上は、前口上。以下が本題だ。
 1913年、スウェーデンの東アジア会社所有の貨物船『ニッポン』号が、台風のためスカボロ礁で座礁してしまった。
 これをフィリピン政庁が救難しているから、島に対して統治行政権を行使していた証拠になるのである。
 しかもフィリピンの裁判所で海難審査されている。司法権が及んでいた証拠である。
 ※記者は名古屋大の客員教授。分野は、インド洋~太平洋の戦史と国際法。台湾の「南シナ海シンクタンク」にも所属し、現在、第二次大戦におけるアジア諸国の対日戦への貢献について1冊執筆中という。