ANNE MURRAYの「ア・リトル・グッド・ニューズ」を聴く。

 ストラテジーペイジの2015-11-29記事「Russia: Cold War Weirdness Returns」。
  露軍機は当初、ISを爆撃しないでいた。ISがロシア民航機に対するテロをエジプト上空で実行したのだと11月前半に判断してから一転、IS爆撃に注力しつつある。
 フランス軍機は対IS空爆に関しては露軍と同じROEを採用した。すなわち、ヒューマン・シールズは無視する。
 露軍はISのファイナンスにターゲットを絞っている。すなわち石油生産とトルコへの密輸出だ。
 露軍は米、イスラエル、フランスと戦地協定を結んでいるが、フランスとの協定は独特である。単に味方射ちを予防するという以上の協定。
 しかしフランスの方としては、あまり露骨にロシアと共闘することはできない。というのはウクライナ侵略について対露制裁中なのだし、ロシアが「ISは米国の発明品」と国内宣伝していることにも同意するわけにいかない。
 ロシアの主張。アサド政権は国連から認められたシリア唯一の政権である。そして露軍はそのアサド政権から招かれてシリアに駐留しているのだ。
 ロシアがトルコ機をSAMで撃墜できないのは、トルコと全面対決になればダーダネルス海峡を封鎖されてしまい、シリアに海からアクセスできなくなるためだ。
 そしてプーチンには分かっている。シリアで露軍はNATO軍とは勝負にもならないのだ。
 トルコ国境を支配する者は、シリア第二の都市アレッポも支配できる。
 すでに露軍機はシリアで1500人を爆殺した。うち7割は反政府ゲリラだが、3割はヒューマンシールズか、間違った時に間違った場所に居た人たちだ。
 米軍とその同盟国軍による対シリア空爆は1年強続いている。彼らがこれまで4000人爆殺したうちの間違った市民は1割未満だった。
 ISのヒューマンシールズの使い方は、たとえば市民を鉄の檻に入れてそれを写真に撮ってインターネットに公開するのである。
 ロシア国内では、失業率は5%より悪化していないと公表されているが、貧困が広まりつつある。
 ロシア政府は最近、同国のGDPは今年、すでに去年よりも3.7%縮んだと発表した。
 他方で平均家計収入は10%落ち込み、インフレが同時昂進しているので庶民の食料品購買力はそれ以上に悪化している。
 政府公式発表では今ロシアには「貧民」が15%いる。しかし実相は、その2倍だろう。
 地域によっては、住民の4割近くが貧困だと行政が認めている。
 あと2~3年は、この右肩下がりの経済力趨勢は止まらないだろう。これはロシア国内の経済学者も認めている。
 すでにロシアの経済規模は世界のトップ10ヵ国から転落しているのだ。
 住宅、交通、電気水道などインフラへの政府支出が減らされていて、メンテナンスがなされず放置されるために、年金暮らしの老人たちに生活苦が加重されている。
 ルーブルの下落は、海外の民間航空会社のロシア行きの便を減便させている。
 ロシアの対トルコ経済制裁は、効くまい。トルコはロシアとちがって他の取引相手を探せるからだ。国際制裁と単独制裁の差である。却って、トルコと取引させてもらっていたロシア企業がダメージを蒙る。
 ロシアから逃げ出した外国企業の投資を、シナ1国で埋められるか? 不可能である。中共の対露投資が増えたにもかかわらず、ロシアに対する海外からの投資は80%以上も減ってしまっている。
 露軍はさすがにシリアへは徴兵を送り込むことができず、すべて純然志願兵である。最前線の歩兵には、危険手当て加重によって、月に4000ドルが支払われている。
 ウクライナのGDPは2014からくらべて13%ダウンした。
 トルコ機は、露軍が報復を狙っていることが確実なので、11-27からしばらくそのF-16を対シリア爆撃に飛ばすことを止めている。
 西欧は現在、ロシアよりもノルウェーから、多量の天然ガスを輸入している。この逆転は2015年に起きた。
 対露経済制裁にもかかわらず西欧は今でも天然ガスの総輸入量の三分の一をロシアから買い続けている。
 タジキスタン内の3箇所の露軍駐留基地から露軍が11-15にどこかへ逃げ出した。酩酊した露兵がクリャブ市で揉め事を起こし、タジク住民と基地の間で緊張が高まったためという。
 ロシアとタジクは条約を結んでおり、6000名の露兵が2042年まで基地に駐留できる。それらの基地はアフガン国境に近い。ヘロインとテロリストの出入りを見張るのが目的だ。タジク国境警備隊も腐敗しており、アフガン人が賄賂を渡せばいくらでもヘロインの輸送を見逃してしまう。だからタジク兵の尻を叩いてアフガン人密輸ギャングと銃撃戦をさせるのも露軍将校の役目。
 ISとその係累のシリア内のゲリラがますます「反イスラエル」を叫ぶようになってきたので、イスラエル政府は、「アサド政権の方がマシだ」と考えるに至った。公式に、11-10に「中立宣言」をしている。つまりアサド政権の退陣をイスラエルとしてはプッシュはしない。
 ※ではイランが支援するヒズボラやシリアは安全かというとそんなはずもない。要するに、隣国内で永遠無限に内戦が続いてくれるのがイスラエルとしては最大の国益なのである。それだけアサドは弱り果てていていまや理想的に無害(対イスラエル用の原爆をこしらえる可能性ゼロ)だといういうこと。またイスラエルは、イランの原爆開発も当分は無い、と見ている可能性がある。