「読書余論」 2015年12月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 軍令部臨時欧州戦争軍事調査部『第二次欧戦調査資料 戦訓及所見竝ニ参考資料 第六輯』S20-4-9
▼防研史料 柴田文三中佐『基地航空作戦ニ関スル戦訓』
▼防研史料 海軍航空本部『戦訓資料(航空)』S20-9-25
 日本の戦闘機第一主義は、「空中戦第一主義」。米のは、「戦闘機万能主義」。すなわち、戦爆であり、戦偵であり、局戦であり、夜戦もこなしたのだ。
▼防研史料 『一八九二来欧州諸国現用野山砲兵』
 原題“L’ARTILLERIE DE CAMPAGNE ET MONTAGNE DANS LES ETATS DE L’EUROPE” これをM26-9-25に訳出。
▼R・M・コナフトン『ロシアはなぜ敗れたか』邦訳1989
▼大江志乃夫『日露戦争と日本軍隊』
▼堀元美『帆船時代のアメリカ』朝日ソノラマ
 ※上巻の途中まで。
▼『海軍 第四巻 太平洋戦争への道』S56
 ※後半。
 第四艦隊が襲われたS10-9-26の三陸沖台風に匹敵するものは、S19-12-18のルソン島東沖で米第三艦隊を翻弄した台風だけだろう。
 台風の目が通過した直後に逆風によって異常な三角波が立つ。このくらいの極限状況になると、もはや乗員には1人の船酔いも発生しない。
 海軍直轄の傍受基地、東京電信所大和田受信所。S12-7-10に北京在勤の米国海軍武官からOPNAV(米海軍作戦部長)宛てのP電=緊急信を傍受した。解読してみると、当夜19時を期して宋哲元の二十九軍の青年士官が現地協定を無視して日本軍を攻撃するという。陸軍省へ伝えてやったが、陸軍省の「副官」が信じずに、握り潰された。
 S15年・海戦要務令・続編・航空機の部・草案。「開戦劈頭における第一撃は奇襲成功の算大なるのみならず、その成果は爾後の作戦の成否に影響する所大なり。先制の利を獲得し敵の不備不意に乗じ速かに敵航空部隊主力を撃破するを要す。」※国際法を破れと規定しているに等しい。作戦あって戦争なし。
▼山内進『北の十字軍』1997-9
 ※マッキンダーのドイツ脅威論を理解するのにこんなに役に立った資料は無いです。そして今日では地球気候変動原因説で十字軍運動の多くが説明できるように思います。
▼三浦權利[しげとし]『図説 西洋甲冑武器事典』2000-2
 ローマの騎兵は、馬鎧を、Cathaphractes(ラテン語で、カタフラクテース)と呼んでいた(p.199)。※これが日本語の「かたびら」の語源ではないのか? 裏をつけない布製衣類の総称として、早いのは『枕草子』33、説教の講師の服装として「かたびらいとあざやかにて」と出る。
▼藤井嘉雄『松本藩の刑罰手続』H5
 江戸時代の武家では、10歳までを「幼少」、11~17歳を「若年」という。
 庶民は、15歳未満を幼年、20歳までを少年、30歳までを若年とした。
 幕府の文書で「以下」とあるときは、現今の「未満」の意味であった。
 量刑が「遠島以下」ならば、遠島は含まれないわけである。
 伊豆七島は、近いところから開発が進んだ。そのため寛政年間には、三宅、御蔵、八丈しか流刑適地はなくなった。幕末にはその三島も取締りが不安になって、文久3年からは蝦夷地と隠岐のみに。
 遠島は絶対的不定期刑であって、受刑者をして社会復帰の期待性をもたせるというような刑罰ではなかった。ただひたすらに「赦」を待つだけ。ただし原則として20年未満では「赦」はありえない。
▼経済雑誌社pub.『国史大系第十六巻 今昔物語』M34
 ※巻第26の続き。
 利仁将軍若時従京敦賀将行五位語。※有名な「芋がゆ」のエピソード。学校の古文の教科書ではわからないが、長芋1本持参を命じられた住民たちは厭々やってるのではなくて、京都の貧乏貴族の客人の様子を見てみんなで面白がっているのである。けっきょく芋粥は彼らが平らげることになるのだから誰も骨折り損とはなっていない。おそらくこの話が古文でよくとりあげられる真の理由は、貴族の時代が終って地方を自力で開発している武士が駘頭してくる、国家社会の変わり目を、マルキスト史観によって示したいのである。前後をカットすると利仁はただの暴君で、住民もただ搾取されている存在のように見える。新興階級が新しく駘頭するのは、それが上下から歓迎されたからこそなのだ。貴族は何の能もないのに収賄によって潤い、農民も生産力余剰の恩恵を蒙っている。そこを読み取らないといけない。
▼大原 雅ed.『花の自然史――美しさの進化学』1999-3
 コウモリと蛾は、鳥よりも遅れて森にデビューした。だから鳥から食われるおそれがあり、それを避けるために夜行性化した。
 植物は、日照の長日化や短日化を15分単位で感知できる。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
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 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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