さいきん良い本が無いとお悩みの貴男へ。

 本日の午後以降、神保町の書泉グランデへお運びになられますと、良いものを御覧になれるかもしれません。何が良いのかは、チト申し上げられません。
 ……ところで日本までがTHAADを買わされるという情けない話がついに出てきてしまいました。森本敏氏著『防衛装備庁』の103頁によれば、――平成二十年代の前半まではFMS〔米日政府間でドル決済で兵器を輸入すること〕による米国製武器の調達額は日本円に直して500~1000億円ほどにすぎなかった。ところが27年度の計画額は4700億円。すなわち防衛省の装備調達総額1兆4000億円のじつに「三分の一」弱を米国からの装備輸入〔それにはイージスの電子部品だとかソフトウェア改修も含まれる〕のために当てざるを得なくなっている――のだそうで、1基1000億円もしやがるというTHAADがまたまた加われば、この趨勢はかなり手酷く昂進して行くでせうね。
 要するに、国内軍需メーカーに防衛省から支払われるカネは、これから先、どんどん細って行きます。円安政策を採るならば、なおさらです。最新装備といっても全部ブラックボックスなので、日本人は整備をさせてもらったとしても「お勉強」はできない(ただ「弁当箱」ごとの交換が許されるだけ)。THAADは「日本製兵器」の先行き展望へのトドメの一撃になるのでしょう。
 これも「赤紙」なんでしょう。政府としてこの赤紙に抵抗するには、「だったらF-35の調達数を減らします」と公言する一手しかないです。(韓国は「核武装します」と騒ぐことでTHAAD代金をチャラにしてもらう気です。)
 遡ると、オスプレイを買おうという話の直前、政府が防衛予算を漸減させたことが祟っています。そこで怒り狂った部内役人が切り札を使った。「赤紙」です。赤紙を米政府から出してもらえば財務省はノーと言えない。だからCV-22などは議論も無しに簡単に決まっちまったのだけれども、財務省は防衛省予算の総枠は拡大してくれませんから、省内においてどこかの費目を削らなくちゃならない。それでアパッチとチヌークとブラックホークのラ国が消えた。最初は最弱者の富士重だけ泣かすつもりが、それでも足りなくなって川重にも泣いてもらうことになった。井の中の覇者の三菱だけが無傷です。さりとて三菱が儲かるわけでもない。無傷というだけです。
 最新鋭の米国製新装備のアイテム種類ばかりが増える。しかし国内産業は衰滅する……。
 ならば政府の兵器行政はどうしたらいいのか? わが国の関連企業はどういう道を目指したらよいのか? 政府注文で生き残れなくなったら外国へ出ればいいのか? 海外兵器企業への日本からの「投資」はアリなのか? 三菱重工による川重や富士重の吸収は不可能としても(かつて通産省はそれを望んでいたはずだが)、外国兵器企業による日本の大企業内の兵器部門や中小企業のM&Aはアリなのか? ……等々につきましては、兵頭の次著(たぶん今年の半ばに出ましょう)に、ご期待ください。
 ちょっと内容予告しておけば、インドに日本が大型兵器を売るのは絶対無理だから。新明和さんはそんな話にホイホイのったらダメ。致命傷を負いますよ。