第三次大戦を始めんとするツァーリに執拗に面会を求め、しかも「四島返還」以外のオプションは持ち合わせぬという一群の人々。頭だいじょうぶか?

 Thomas Gibbons-Neff記者による2016-2-26記事「U.S.-made missile goes up against one of Russia’s most advanced tanks」。
  ロシア最新のT-90戦車に、米軍のTOWミサイルを命中させたならどうなるのか。シリアのアレッポの北西にある町で、CIAが反アサドゲリラに供与したTOWをじっさいにT-90に命中させた映像が遂に撮影された。それは2-26にUpされた。
 T-90は、ラタキア飛行場の守備のために2015-9から持ち込まれている。残念ながら、当該戦車のクルーがロシア人なのかシリア人なのかは不明である。
 TOWは砲塔に水平に命中した。
 つまり、T-90には付いていたはずの、ショトラなんとか、という、対戦車ミサイルの照準や誘導を狂わせるデバイスは、実戦では機能しなかった。
 しかし、クルーがハッチから五体満足で逃げ出しているから、HEATは砲塔装甲を貫徹しなかったと考えられる。
 すなわちリアクティヴ・アーマーはTOWに対しては鉄壁なのだ。ちなみに、露軍用のものは、輸出用よりも高性能といわれる。
 ※ロシア製リアクティブ・アーマー(反応装甲)に対しては、もはやトップアタックか、7kg以上の炸薬(155ミリ榴弾相当)を足回りにぶつけてやるかの選択しか、ミサイルには無いということがこれではっきりしたと思う。
 ※ところでいったいロシアはシリアで何をしたいのか? まさに、こういう実験がしたかったのである。これからプーチンはバルト三国とポーランドに対して戦争を起こす。バルト三国は露軍25個旅団を集中してD-Day+3日で完全制圧できると計算されている。なにしろ現役軍隊が三国ぜんたいで6万人しかいないのだ。NATO空軍の活動を3日間だけ麻痺させればそれはうまくいく。それは物理的に可能である。しかしクラウゼヴィッツの言う「潤滑油の回っていない軍隊」は実戦では思わぬ摩擦で止まってしまうかもしれない。だから「潤滑油を熱くして機械の隅々に回しておく」準備があらかじめ必要なのだ。それをプーチンはシリアで露軍にさせているのである。では、どうしてロシアはバルト三国の支配にそんなにこだわるのか。そこが知りたい人は、兵頭の最新刊を読みましょう。地政学の問題なのです。
 次。
 Matthew Cox記者による2016-2-25記事「Army Says Weapons Treated with Permanent Lube Will Eliminate CLP」。
  米陸軍があたらしい小火器用の潤滑剤DSL(durable solid lubricant)を発明し、来年以降に導入する。グリースとは違う、乾燥状態の固体潤滑剤で、この潤滑作用は半永久に長持ちするから、整備の手間が軽減されるという。小火器の製造工程からこの潤滑剤を使う。
 とりあえず、M4カービンと、M240分隊軽機に、この新潤滑剤を採用する。
 従来は、CLP(cleaner, lubricant, and preservative)という小火器専用の液剤(洗い油と潤滑油と防錆油の機能を全備)を塗布していた。このCLPが、小火器についてはもう要らなくなる。
 小火器部品の中のボルト・キャリアーとボルトで比較してみた。CLP塗布のボルトキャリアーの表面からは75%の燐酸塩が失われた。ボルトの表面からは90%の燐酸塩が失われたた。しかしDSL塗布の場合、どちらも、燐酸塩は5%未満しか減損しなかった。
 しかし小火器専門家にいわせると、DSLは、チャージングハンドルや緩衝バネやその他のパーツについては適用性がないのではないかと。
 さらに専門家からの疑問。その銃が、まさに新品同様の状態であったならば、非液体の乾いた潤滑剤というのもアリかもしれないが、戦場で使い込む環境では、やはり液状・ゲル状の潤滑油がなくては、摺動パーツの「ひっつき」が起きてしまうのではないか?
 時が経てば、ハッキリするだろう。
 ※この記事は腹立たしいほどわかりにくい。記者は元空挺さんだが、科学記事の書き手ではないし訓練されたリポーターでもない。だから多義的であいまいな語を安易に使う。固体潤滑剤とはグラフェンを使ったものなのか? その正体についての何のヒントもない。小火器専門家とは、潤滑油やケミカルのことがよく分かっている専門家なのか? そこも甚だ疑われる。